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~散々な1日の終わり~

第2章ー8




店を出てタクシーに乗り込んだが、深夜なのでマンションで家飲みすることとなった。

「ただいま~。」

「誰かいるの?」

私の"ただいま"に早速突っ込んでくるRyo。

「家に帰ったら口から出る癖なんや。」

私は一番に家に入り、リビングが片付いていたか急いで確認した。

『よし、大丈夫だった。』

いくら(コウ)君の家でも今は同居しているんだから私の家でもある。

みっともないところは見せられない。

「適当に座ってくれ。」

(コウ)君は嬉しそうに冷蔵庫から缶ビールを取り出しながら二人にそう言った。

「もうくつろいでるよ。(笑)」

Ryoが笑いながらソファーに座った。

「俺、(コウ)さんチに来るの初めてだ。」

龍斗がリビングを見回しながら受け取ったビールを開け一口飲んだ。

男三人が和やかに飲んでいる。

平和だ、、、さっきと大違いやな。

「典子さんもこっちにおいでよ。」

(コウ)君が声をかけてくれたが、

「今ツマミ作ってるから。」

私はキッチンで簡単な物を作り始めた。

「料理できんだ?」

龍斗が覗きに来た。

「あのさぁ、これでも子供二人育てて長年主婦やってたんやで?当たり前やん。」

冷蔵庫の余りモンで適当にツマミを作りながら龍斗に尋ねた。

「好き嫌い何かある?」

「ないよ。食べれるなら何でも大丈夫。」

「OK!分かったから龍斗君もあっちで飲んで。」

「龍斗でいいよ。」

「ん?」

「呼び方。敬語じゃないのに名前だけ君付けは気持ち悪いから。(笑)」

「なるほど、ありがと。(笑)」

そう言って私は出来上がった簡単なツマミを皿に盛って(コウ)君へと持っていった。

「典子さんも座って何か飲みなよ?」

と、ご機嫌な(コウ)君からのお誘い。

だが私は知っていた。

さっき(コウ)君が冷蔵庫を開けた時、

アルコールの在庫が残り少なかったことを!

「どうせ飲み明かすんやろ?足りる訳ないし買い出ししてくるから何がいるか言うて。」

素面(シラフ)の私は居酒屋店員ばりにサービスする側へまわることにした。

「えぇ~、まだ大丈夫だよ。」と、(コウ)君。

「いいの?俺が行くよ。」と、龍斗。

「マジ?ラッキー!」と、Ryo。(←泣かす)

すでに酔っ払いのRyoを除き、みんなの希望する商品を書き出した私は財布片手に、

「大丈夫。すぐ買って来るから。」

と言って買い出しに出た。



涼しい…つうか、もう寒い季節が来る。

来週末にはハロウィンだし。

なんか街並みもカボチャや魔女の飾り付けで浮かれて見えるゎ。

っていうか、缶ビールや缶酎ハイに芋焼酎の他にも乾き物まで頼まれたぞ。

どんだけ飲む気なんやっちゅう話や。

ま、私は来たついでに自分のアイスを買って帰るつもりでいたけど。

夏のアイスもえぇけど、暖かい部屋で食べる冷たいアイスもえぇよねぇ~。

男三人が酔っ払ったら馬鹿三人になるのは目に見えてるし、アイツらは放っといて私は片付けしたら先に寝とくべきだな。みんな明日仕事あるだろうし私が起こさねば!

まるで母親かマネージャーにでもなった気分の私だったが、やっとコンビニに着いたので意識は買い物へと移行した。



深夜のコンビニの割にはレジ前が混んでるな、

と思いつつ私はカゴにビールや酎ハイを次々と放り込んでいった。ツマミの乾き物も買い込み、最後は私のアイスだ。せっかくだからハーゲンダッツを買おう。

自分のだけ買って帰ったら酔っ払いがぶつくさ文句言うかもしれんから三人のも買って帰ろう。で、私は2個買っちゃえ♪

そう考えた私はバニラ、抹茶、マカダミアナッツ、ストロベリー、チョコをカゴに入れてレジへ向かった…が、何か揉めてる。

「さっさとやれよっ!」

「申し訳ございません…。」

「こっちが先だろっ!?」

「少々お待ち下さい。」

見るとレジ前は深夜なのに5~6人待ちの列ができていた。なのに対応しているのは若葉(ショシンシャ)マークをつけたバイト1人で、レジも1つしか開けていない。

『おいおい、深夜とはいえさすがに店員1人ってことはないやろ?普通もう1人くらいおるはずやん、どこにおるん?』

そう思って周りを見渡すが店員はいないし、裏から出て来る気配もない。

『こんなに待ってたらアイスが溶けるやん。』

少しイラッとしながらそう思っていると、かすかに誰かが喋っている声がした。

トイレだ。私がここへ来て店から出て行った客はいたがトイレへ入った客はいない。私が最後に来た客だからそれは確かだ。コンビニのトイレで深夜にお喋りする客?まさか…と思いつつ、

「すみません、まだですか?」

私はトイレのドアをノックした。

ガタガタと音がしたと思ったら中から派手目のギャル風ファッションをした店員が出て来た。そして私を見て"チッ"と舌打ちしやがった、それも片手にコードレスの受話器を持って。

イッラ━━━━━━ッ!(怒)

「ここの店員よね?」

私は雑誌コーナーへ行こうとしているギャル店員の後ろから声をかけた。

「・・・」

無視かいッ!返事くらいせぇッ!

「レジ混んでるけど?」

ムカつく気持ちを抑えながらもう一度私はサボっていた店員にそう声をかけた。

「ちょっと待ってて。」

ギャル店員が言った。だがそれは私にではなく受話器の先の相手にだった。

ブチッ!

「店混んどん見りゃ分かるやろッ!?」

店内に私の怒鳴り声が響き渡った。

後ろの方に並んで待っていた客何人かがこっちを覗きに来た。だが私は気にせず、

「仕事中に店の電話でお喋りって何なん?」

ギャル店員に詰め寄った。

事情を察した他の客達も"マジか"とか"もう1人店員いるじゃん"などと文句を言い出した。

「若葉マークのバイトだけじゃ客さばけんからレジ混んどんやろ?もう一機開けたら?」

今日一日色々あってイライラが止まらない私を相手にギャルはバカだった。

「ヤッバ━い。何か怒ってるんですけど。」

ブッチ━━━━━━━━ンッ!!

「えぇ加減にせぇッ!電話切れやッ!」

一応、言葉使いには気をつけて喋っていた。クレーマーじゃなく正論を言ってるのだから注意の仕方にも気をつけたつもりだった…一応ね。でも我慢できなかった。もともと私の怒りスイッチは人より簡単に入るのだから。

「こんだけ言われても私用電話は切らんしレジも手伝わんって、えぇ度胸しとるのッ!?」

「も、もう切るな。」

やっと電話を切ったバカ店員。

「お喋りして給料出るってえぇ御身分やな?はよ仕事せぇやッ!」

慌ててカウンター内に入ったギャルはバツが悪そうにもう一機レジを開放した。

「何やってたんだよ!」

「サボってたのかよ!」

などと他の客からも文句を言われ、ひたすら頭を下げているバカ店員。

さっきから1人でパニくっていたバイト君はホッとした表情になっていたが、精算してもらいながら私は少し忠告した。

「アンタ1人で頑張ってたのは分かるけど、こんだけ混んで待たされる客のこと考えたらサッサと相方呼ぶべきだったんちゃう?」

「申し訳ございませんでした…。」

うん、初心者だけあって受け答えはマニュアル通りできるみたいやな、と思いながら今度はバカ店員に聞こえるように、

「きっちり苦情センターにクレームの報告あげとくから。このレシートで時間も確定できるしカメラに証拠も残ってるやろうしな。」

そう捨てゼリフを残し店を出た私は、酔っ払いの待つマンションに帰って行った。



「ただいま~。」

笑い声は聞こえるが、返事はない。ん?

「お待たせ~。」

リビングのドアを開けて私が見たものは、

上半身裸になった人気俳優龍斗の姿と、酔っ払い上機嫌で笑っている(コウ)君、その(コウ)君に甘えながら愚痴をこぼしている人気アーティストのRyo。

「もう無茶苦茶やん…」

買ってきたものを冷蔵庫に入れ、呆れた私はキッチンで自分のアイスを食べようとした。

「あっ、典ちゃんお帰り~。」

(コウ)君が私に気づいたようだ。

「お帰り~、買い出しThank You!」

シックスパックに割れた腹筋を見せつけながら龍斗がこっちへやって来る。

若い()なら失神もんやで、と思いながら

「何か上に着なよ。」

アイスを一口食べてから龍斗にそう言った。

「何で?もしかしてドキドキする?(笑)」

誰もが夢見るようなセリフを言い、冷蔵庫から買ってきた缶ビールを取り出す龍斗はやはり芸能人だ。

カッコいい!それは事実だ。

だがドキドキするかと言われたら"?"だ。

「色っぽくて素敵やけど、風邪引かれたら困るから服着ときなさい。」

思っていた反応と違ったからか、龍斗はジーッと私を覗き込み、

「ホントに着ていいの?」

笑いながら蓋を開けゴクリと喉を鳴らしてビールを飲む龍斗は確かに色っぽいが、私からすれば息子と変わらない年の子供だ。カッコいいのは認めるけど、あくまで鑑賞用イケメンで恋愛対象ではない。でも、日頃から周りの女性にキャーキャー言われている本人からすれば、私の対応が新鮮だったのだろう。

「アンタのマネージャーから文句言われたくないからサッサと着なさい。」

そう言いながら背中をバチンッと叩いた。

「イテッ!もう分かったよ。」

そう言って龍斗はソファーに掛けてあった服を着始めた。私はアイスを食べ終わったのでおおまかに片付けながら、

「マカダミアナッツは私のやから食べたらいかんよ。分かった?聞いとる?」

「はぁ~い!」

今日は本当に疲れた。生放送の観覧に小姑(リョウ)との対決、そしてバカ店員の対応…なのに家に戻ると酔っ払いが3人。

その酔っ払いの空返事に一抹の不安を感じながら先に寝ることにした私は、

「じゃ、おやすみ。」

と言って寝室へ向かった。



吉岡典子、42歳。一度死んで異世界で転生し、その異世界で亡くなった魂が元の体に戻るという、とてつもないイレギュラーな体験をした主人公。スキル持ち。二人の子供を持つバツイチのシングルマザー。現在、吉川光輝と"結婚しない"ことを条件にパートナー関係にある。


吉川光輝、37歳。あだ名はヨッシー&(コウ)君。バツイチのゲームクリエイター。身なりに無頓着でちゃんとしたらモテるのに敢えてオタクを装おっていたイケメン。物好きにも典子に惚れた奇特な男。


吉川涼也、24歳。Ryoと言う名前で活躍する超人気アーティスト。国民栄誉賞を与えたいイケメンNo.1。忙しかった両親の代わりに幼少の頃から親代わりに育ててくれた叔父の光輝を(コウ)さんと慕っている。吉川光輝の甥で横山龍斗の親友。


横山龍斗、21歳。若手No.1のイケメン俳優。テレビ、CM、映画と人気抜群の国民的スター。ただし15歳より前の過去は謎に包まれている。スキャンダルも人気のうちと流した浮き名は数知れず。それすら人気に繋がる、吉川涼也とは親友。



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