~嫁vs小姑対決!~
第2章ー7
・・・思った通りだ。
嫌な予感ほどよく当たる。
店に着き、私達は個室に案内された。
私は部屋に入るなり索敵スキルを発動させた。
ほらぁ~、ヤッパそうやんかぁ~。(泣)
Ryoからあからさまに敵意が向けられてるし。
一人だけオーラが戦闘態勢やん。
私ら初対面やんなぁ?
なんで?何か悪いことしたか私?
などと思いながら、
「失礼します。」
と言って座敷にあがった。
私と光君が隣同士で対面に龍斗とRyo。
緊張して食事が喉を通るか不安・・・
「とりあえずお疲れさま。」
全員を知っている光君が乾杯の音頭を取った。
私はもちろんウーロン茶だが。
「飲まないんすか?」
龍斗が私にドリンクメニューを差し出した。
「典子さん、酒飲まないんだよ。」
光君が私に代わってそう答えた。
「へぇ~、意外。」
龍斗が目を見開いて驚いたように言う。
「酒癖悪いとか?」
さっきまで完全に私の存在を無視していたRyoが初めて発した言葉がこれだった。
それも私じゃなく光君の方を向いて。
私はすかさず、
「いえ、体質的に…炭酸も飲めません。」
「ふ~ん…。」
私の返事に『お前に聞いたんじゃねぇよ』って態度のRyo。
落ち着け私。我慢だ私。
いくら敵意を向けられようと相手は光君の甥っ子で、まだまだ子供なんだから。
それにあのRyoなんだ。
まずはなぜこんなに私を敵視するのか探ってから判断すべきだ。
前世の私がやっていたように斥候役ならお手のモンのはずだ。
そう気持ちを抑えながら仕事で培った営業スマイルで場の雰囲気を壊さないよう努力した。
そう、努力したのだ。
よく我慢したと自分で自分を褒めてあげたいほど、
かなり我慢したのだ私は!
だが、Ryoの敵意ある発言はそれからも続いた。
それも一切私を見ずに光君に向かって、
「いくつ年上だっけ?」
「何で離婚されたの?」←されたこと前提。
「いつもあんな感じなの?」
「子供残して上京って有りなの?」
「今って働いてんの?まさかニート?」
などなどetc…。
私はひたすら苦笑いを浮かべながら我慢した。
いくら好きな芸能人とはいえ私にも我慢の限界があるんやけど。
さすがに光君と龍斗は場の空気がどんどん悪くなっていることに気づいたようで、
「おいっ!」とか「まぁまぁ…」とか遠回しに注意してくるがRyo本人は一向に収まる気配がなく、
とうとう私の我慢の限界をぶち破った。
「あのサプライズの支払いって誰がしたの?」
バンッ!!!
テーブルを叩きながら、
「いい加減にしてくれる!?」
私は声を押し殺しながらRyoを真っ直ぐ見た。
「さっきから小姑の嫁イビリみたいに嫌味ばっか言ってっけど、私何かした?初対面でこんな態度取られる覚えないんやけど?」
堪忍袋がパンクした私はRyoに噛みついた。
かたやRyo本人は素知らぬ顔してグラスを口元に持っていき喉を潤している。
「ごめん、典子さん。」
代わりに私の隣にいる光君が謝る。
「何で光さんが謝るんだよッ!?」
揉め事の原因を作った張本人のRyoが不満そうに口を出し、私に向かって一言、
「全部ホントのことなんだからコイツに謝る必要なんてないだろ!」
プッチ━━━━━ンッ!!!
コイツ?コイツだと??
もう我慢なんて言葉は私の辞書から消えた。
削除だ、削除!
もう遠慮も手加減もなしだッ!
「分かった。アンタ私に喧嘩売ってんだよね?
買ってやるから言いたいことあるんなら直接言えば?」
「ちょっと、二人とも…」
「まぁ、ひとまず落ち着こうか?」
龍斗と光君が慌てて仲裁に入るが、
すでに着火した私の怒りは燃え盛っている。
「二人は黙っといて!私はこの子に言うとんやッ!
ほら、言いなよ!言えよ!」
Ryoを睨みつけながら反論を待っていると、
「失礼な女だな、まったく。
光さん、いったいコイツのどこが良かったの!?」
「涼ッ!いい加減にしろよ!」
さすがの光君も苛立ったようだ。
だがこれは私に売られた喧嘩。
助太刀無用!自分で落とし前つけるし。
私は今までのお返しとばかりに嫌味タップリと小馬鹿にするように、
「あらあら、会話も一人でできんお子ちゃまみたいやなぁ。喧嘩売ってんのかと思ったら言いたいことも直接言えず、叔父さんの陰に隠れて悪口言ってただけ?大きい子供やなぁ?光君、小さい頃から世話してたみたいやけど手ぇ掛かったやろ~?(笑)」
「なんだとッ!?」
馬鹿にされたのが余程頭にきたのかRyoがやっとコッチを向いた。
「だってそうやん?文句言うにしたって目の前にいる私に直接言うならともかく、叔父さんに言うしかできんのやろ?悪口言って相手が怒ったら助けを求めてんのと一緒やん?情けな!」
「なッ!お前、」
もう私は止まらない。Ryoの言葉を遮り、
「だいたいさっき私に"失礼な女"って言ったけど、どっちが失礼?初対面の相手に対してろくに挨拶もせず、いきなり喧嘩腰で突っ掛かってきて。無礼はそっちやろ?」
「お前、誰に向かって…」
「おめぇだよッ!この若造がッ!どんだけ有名人だろうが礼儀知らずのボンクラに礼尽くすつもりなんて毛頭ないから!礼尽くしたって"礼儀知らず"やから意味なんか分からんやろ?だからアンタのレベルに合わせてるんやッ!」
Ryoの喋る間もなく怒濤のように責め立てる私。
それを何故かワクワクした様子で見ている龍斗。
もう半ば諦めた様子の光君。
ごめん、光君。
ホント申し訳ない、後で謝るから今は許して。
「こっちはアンタの倍近く生きてきとんや、最初から敵意丸出しなんは気付いてたわ。でも大人やし、アンタが光君の甥っ子やから我慢してたんや。それをえぇことに好き勝手言いやがってッ!」
「そういうとこだよッ!ホント口の悪い…」
「アンタに対して使ったか?」
私はまたもや遮った。
「確かに私は口悪いし性格もキツイ。ガラ悪いって自覚しとる。あのV見たら誰だってそう思うわ。でも最低限の礼儀は知っとるつもりやで?初対面の相手にアンタみたいな失礼な態度取ったりせんし!それに普段は何の非もない他人様をこんな風に怒鳴りつけたりせんわッ!」
反論を待つが帰ってこない。
「あのさぁ、こっからお互い腹割って話そうで。私の何が気に入らんのか本音ブチ撒けたら?」
静まり返った個室で全員がRyoを見た。
静寂の中、光君が口を開いた。
「涼…俺も知りたい。」
光君が目の前のRyoに向かって諭すように言う。
「俺の好きな人なんだよ、典子さんは。」
そう言われてRyoはやっと私に向き合った。
「光さんはもっと幸せになってもおかしくない人なのに何でだよ?」
えっ?どゆこと?
私は改めてRyoを見た。
『美しい!』相手は男なのにこの言葉がすんなり出てくるくらい綺麗な顔立ち。
さすが国民栄誉賞を与えたいイケメンNo.1!
その端正な顔が今にも泣き出しそうな悔しげな表情へみるみるうちに変わっていく。
「光さんは俺の尊敬する人で、昔から何でもできてカッコ良くて皆の人気者だったじゃないかっ!それなのにあの女と結婚してから不幸にばっか見舞われて、俺めちゃくちゃ心配してたんだ。別れてからもずーっと独りだったし。で、やっと彼女が出来たと思ったらこんなガラの悪い女なんて…。なのに光さんは幸せいっぱいみたいな顔してその女の話ばっかするし、俺は納得いかないよっ!」
おーっ、やっと本音を口にしたな?
は、はぁ~ん、なるほど。
嫉妬か?焼きもちか?
大好きな叔父さんが取られたみたいで気に食わなかったということだな。
「涼・・・」
光君がRyoの頭をそっと撫でた。
「じゃ、どんなんだったら納得したん?」
しんみりした空気を遠慮なく私は切り裂いた。
「結局どんな女でもアンタは気に食わんかったんちゃうの?叔父さんを立ち直らせて昔のような自慢のイケメン光さんに戻すのは自分だ、と思ってたのに私みたいな女が急に現れて簡単にそれをやっちゃったのが気に入らんって話やろ?」
収まりかけた火に油を注ぐ女、それが私だ。
「アンタの言いたいことは分かった。
こうした気持ちも分かる。けど、それって結局アンタの勝手であって本当に光君のこと考えての行動?本気で光君の幸せを考えてたら、まずは一緒に喜んでやるべきだったんちゃう?」
私は誰もが言いづらくてスルーしていたことをあえてRyoにぶつけた。
「それに大好きな自慢の叔父さんが選んだ相手をアンタは大して知りもせんのに失礼な態度で見下した発言を繰り返したんやで?それって光君の人を見る目が信じられんってことやろ?それってどうなん?」
Ryoはもう何も言わない。
龍斗もさっきまでとは違い、真剣な顔でこの場の状況を見守っている。
そして場の中心人物であり、甥っ子の本音を知った光君が優しくRyoに語り始めた。
「涼、ありがとな。そこまで俺のこと心配してくれて。そしてゴメンな。俺のせいでずーっとそんな風に思っていたなんて。」
「光さん・・・」
「でもホントに今、幸せなんだよ俺。」
私を見ながら光君がそっと手を握った。
「だから涼もまずは色眼鏡無しで典子さんのこと見て欲しいんだ。」
諭すよう、頼むよう、願うよう話す光君。
しゃあないなぁ…ここらで引かんと私が悪モンになってしまうやん。
「Ryo君…私もいきなり言い過ぎた。
けど、自分で見て聞いて私を判断するんじゃなく先入観で決めつけるのはマズイやろ?」
「涼、俺も悪い人じゃないと思うぞ。
助けてもらったから俺はプラスイメージしかないし、こんだけハッキリお前に言うってことは裏表のない性格だと思うしな。」
ここで初めて龍斗からフォローが入った。
ありがとう龍斗!さすがイケメンッ!
「私が男受け悪いのは自覚しとるし、女子力ないのも事実や。だけどRyo君と同じで光君のことを大切に思ってるのは本当やで。そこは否定せんといてよ。」
たぶん私に言われ複雑な心境なんだろう…。
だけど嫁vs小姑の戦いは終盤に入り、
見るからに3:1で分が悪いのはRyoだ。
これ以上は大好きな叔父さんに嫌われる確率が大幅にアップすることは明らかだ。
大きく溜め息をついたRyoは、
「ごめん、光さん。それと典子さんも…」
おぉ━━━っ!あのRyoが謝った!?
TV画面で見てきた私の知ってるRyoは、
"天上天下唯我独尊"アーティスト。
そのRyoが一般ピーポーの私にっ!
これは休戦の提案と取ってえぇはず。
「ううん、私もゴメン。そりゃ、こんな女やし心配するんは仕方ないって。」
そう言って矛を納めたが、正直まだRyoは完全に私を認めてはないだろう。多少しこりは残っているはず。
「ただRyo君がどんだけ光君のことを大事に思っているか分かって良かったゎ。そんだけ好きだから、こんだけ私に敵意むき出しできたんやろ?ならこれから好きになってもらえるよう私も頑張るわ。光君を好きな仲間として。(笑)」
「俺の方が大先輩だけどね。」
ちょっとスネた仕草で生意気な言い方だけど、一応仲直りはできたみたいだ。索敵スキルでRyoを見たらオーラの色も変化していたし。
向こうもホッとしたのだろう、私もだけど。
「じゃ店変えて、今からもっとお互いを理解するよう今夜は飲み明かそうぜ!」
場の空気を一変させる龍斗の鶴の一声で私達は店を後にした。
疲れた…。
私は精神的にかなり削られていた。
今日一日で一気に老けた気がする…。
バッグから取り出したスマホを見ると、
着信やLINEがめっちゃ入っていた。
生放送を見て連絡してきたんだろうな。
私は娘の亜紀だけに、
『今日は疲れたからまた今度な…。』
と返信してタクシーに乗り込んだ。
吉岡典子、42歳。一度死んで異世界で転生し、その異世界で亡くなった魂が元の体に戻るという、とてつもないイレギュラーな体験をした主人公。スキル持ち。二人の子供を持つバツイチのシングルマザー。現在、吉川光輝と"結婚しない"ことを条件にパートナー関係にある。
吉川光輝、37歳。あだ名はヨッシー&光君。バツイチのゲームクリエイター。身なりに無頓着でちゃんとしたらモテるのに敢えてオタクを装おっていたイケメン。物好きにも典子に惚れた奇特な男。
吉川涼也、24歳。Ryoと言う名前で活躍する超人気アーティスト。国民栄誉賞を与えたいイケメンNo.1。忙しかった両親の代わりに幼少の頃から親代わりに育ててくれた叔父の光輝を光さんと慕っている。吉川光輝の甥で横山龍斗の親友。
横山龍斗、21歳。若手No.1のイケメン俳優。テレビ、CM、映画と人気抜群の国民的スター。ただし15歳より前の過去は謎に包まれている。スキャンダルも人気のうちと流した浮き名は数知れず。それすら人気に繋がる、吉川涼也とは親友。




