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~サプライズ①~

第2章ー4



東京観光2日目・・・

私は(ワタル)と亜紀に色んなところへ連れ回されて

少々疲れが見えてきていた。

「これ食べたら次はどこ行くん?」

ランチ後のデザートを食べながら尋ねた。

「次が今日のメインやから♪」

「いったいどこよ?」

店を出ると私は子供達に言われるがまま

"メインの場所"とやらに連れてこられた。



「ここ!」

「なんでッ!?」

着いた場所は衣装レンタルショップだった。

「東京旅行の記念に家族写真を撮りたくて。」

亜紀が答えた。続けて亘も、

「俺も大人になってから撮ってないし。」

有無を言わさず決定事項のようだ。

「写真撮るならもっとちゃんと化粧したのに…」

「大丈夫や、お母さん。」

「プロがしてくれるけん♪」

「でも費用どんだけかかるん?」

「俺らの宝くじ当選記念でもあるんやで。」

「それ当てにしてたな?」

「バレた?(笑)」

「しゃあないな、任せとけっ!」

「さ、お母さん入ろう♪」

3人で笑いながら店内に入って行った。



「こちらもお似合いですよ?」

「いや、それは若過ぎやろ…」

「では、こちらは?」

「うちのお母さん、ピンク嫌いやから。」

亜紀が私の代わりに答える。

「えっ、そうなんですか?」

「私に似合わんし、一番嫌いな色やゎ。」

私は眉間にシワを寄せ答えた。

めげない店員は続けざまに、

「じゃあ、何色がお好きですか?」

「ちょっと待って。落ち着いて見させて!」

私は情けない声で叫んだ。



店員のプレッシャーがキツイ。

記念写真って言うからせいぜい綺麗な衣装で写真撮るか、思いきってコスプレ写真を撮るぐらいに考えていたのに、まさか40過ぎてドレス着るなんて思ってもなかった。


「なんでドレスまで着るん?」

「こんなこと二度とないんやから記念に何パターンか撮るつもりなんやって。」

娘は張り切って衣装を選んでいる。

「まだぁ~?」

とっくに衣装を決め手持ち無沙汰な息子は、暇潰しとばかりの携帯ゲームを片手に声をかけた。

「女は時間がかかるんやって、兄ちゃん。」

「時間ないで?」

「あっ!」

子供らが何かワチャワチャしている…。

「お母さん決まった?」

自分の衣装が決まった亜紀が呼びに来た。

「うん、これにしようかなって。」

「もっと可愛いのあったやん!」

「お母さんの年考えてのセリフか?」

「じゃあ、もっと女らしいのは?」

「お母さんに似合うと思う?」

「写真に性格は写らんけん、大丈夫。」

「あんたケンカ売っとん?」

「あはははっ、はよ着替えよう。」

亜紀と一緒に着替えた私はメイクに髪型etc…、これでもかとプロの技で仕上げてもらった。



「じゃ、まずはお母さんコチラへ。」

カメラマンの指示に従って次々と撮り、

3人で写った色んな写真が出来上がっていった。

七五三のような典型的なスーツや着物、コスプレもどきの衣装も撮り終え次がラストだ。

「じゃあ最後のドレスお願いします。」

「はいはーい。」

何度目かの着替えをしに私は控え室へ向かった。

「では、お二人はこちらへ…」

「えっ?亜紀はお母さんと一緒やろ?」

「お母さんは私より時間かかるから先に支度してきてよ。」

「アンタ言うたらいかんこと言うたなっ!」

「ほら、はよ行きなよ。」

笑いながら母親をシッシッと追いやる娘に

私はほっこりした気分で最後のドレスに着替えた。



「じゃーんっ!どや?」

「おぉっ!似合っとるやん。」

「お母さんキレイやで♪」

「黙って大人しくしてたらな。(笑)」

「亘、一言多いで!」

ワイワイ言いながら写真を撮った。

年も年なので無難に白いドレスを選んだが、さすがに40女のこれは痛い。

芸能人ならいざ知らず、客観的に見て素人のアラフォー子持ちのドレス姿を長時間直視させるのはカメラマンに申し訳ない。

だが私は違うことも考えていた。

(リコ)がいた異世界で王家の子女や裕福な商人の娘はドレスを身にまとっていた。

年頃だった(リコ)も密かに憧れていた。

が、ドレスを買う余裕や着ていく機会もない冒険者の(リコ)は結局1度も着ることなく19歳で亡くなった。

それを考えると生まれ変わった私が代わりに着てやろうって気分にもなるよね。



「じゃあ、最後はお母さんお願いします。」

記念写真の最後はワンショットの写真を撮ってもらうようで、子供達はすでに撮り終えていた。

自分達が済んだ余裕からか、

"笑って~"や、"すまし顔で~"とか、

カメラマンばりに指示を出している。

それもニヤニヤしながら…。

母親を笑いモンにしやがって。

『アイツら後で覚えとけよ…』

と毒づいていた私の背後に誰かの気配が・・・



「キレイだ。」

ッッッ!!!コウ君ッ!?

私の背後からサプライズ登場したコウ君は肩に手を添えながらニッコリと微笑んだ。

私とお揃いの白い衣装のタキシードを着て、

『お前誰やっ?』

ってくらい別人のように仕上がったコウ君。

普段のボサボサ髪や不精ヒゲはどうした?

つうか、なぜここにいるッ!?

「な、なんでッ?なんでおるん!?」

「驚いた?(笑)」

そりゃ驚くだろ?急に後ろから登場したら…

つうか、何笑っとんじゃいっ!

「今日、仕事だったんちゃうん?」

まるでヤンキーがカツアゲするかのようにタキシードの襟を掴んで問いただす私と慌てるコウ君に、

「ヨッシー、笑顔で~♪」

「お母さんっ、撮影中!注意①やでッ!」

娘から注意①を受けた。

注意③になると技ありでも取られるんか?クソッ!

仕方なく笑顔を作りボソボソと小声で喋る…

「いったいどういうこと?」

「子供達からのサプライズだよ。」

「えっ?」

「急に来るって決めたんじゃなくて前から計画してたんだ。」

「コウ君最初っから知ってたん?」

「相談されてね。」

飄々と説明しているが元々イケメンのコウ君。

ガッツリとオシャレに決め芸能人ばりにカッコ良くなっている。そんなコウ君が物凄く幸せそうに子供達に手を振っている。

「結婚したくない典ちゃんの意思は尊重する…

だけど、籍も入れず式もあげずじゃ味気ないやんって亜紀ちゃん達が…ね?」



ヤバイ・・・

かなりヤバイ・・・

ダメだ、もうダメだ・・・

目元の化粧は崩れ、鼻の頭は赤くなり涙が溢れて止まらない私。

まさか子供達からのサプライズプレゼントとは!

それに付き合ってくれた優しいコウ君。

離婚してから今まで家族3人で頑張ってきた。

子供達も大きくなって生意気なこと言うようになったけど、こんな形で泣かされるとは…

号泣ッ!母、号泣やゎッ!!!



「はぁ~い、どうも~♪」

涙が止まらずコウ君に抱き抱えられている私の後ろから、カメラを抱えた一団が出現。

「○○TVの"サプライズモニタリング"で~す。」

「???」

嬉しくて止まらない涙、コウ君への感謝の気持ち、そして突然のカメラ登場に動揺が隠せない私。

いろんな感情がグチャグチャになって何が何だか頭の整理が追い付かない、理解不能。

「まだ涙が止まらないようですが、サプライズはいかがでした?」

マイクを向けられた私は、少しずつ今の現状を把握し始めた。

ようするに、うちの子達がサプライズ番組に応募して私以外は全員グルで仕掛人だったんやな!

「わ~た~る~!あ~き~!」

コウ君から渡されたハンカチで涙を拭きながらドスの効いた声で子供達の名前を呼んだ。

「良かったやろ?」

「感動したやろ?」

サプライズが成功してはしゃぐ我が子に、

「これ全国放送やろッ?勘弁してよぉ~。」

ぐしゃぐしゃの顔が後日お茶の間に流れると想像しただけで恥ずかしくなる。

周りのみんなはただただ笑っている。

「!!!」

私は気づいた。

「ちょ、ちょっと待って!」

慌てて確認する私。

「これ、どこから撮ってたん?」

「マンション出たとこから。」

亜紀があっけらかんと答える。

「マジかッ!?」



放送日を確認して今日一日、私が喋った内容や振る舞いを思い返すと果たして放送していいのか不安になった。

方言丸出しのガラの悪い40女がドレス姿で号泣って…放送事故にならんか心配やん?

だけど最高に幸せな想い出になったのは確かだ。



ありがとう、亘。

ありがとう、亜紀。

ありがとう、コウ君。

そして、ありがとう幸運(ラッキー)スキル。

生き返ってなければ今日のこんなにも幸せな出来事は迎えられなかった。

私は神様に感謝した。



吉岡典子、42歳。一度死んで異世界で転生し、その異世界で亡くなった魂が元の体に戻るという、とてつもないイレギュラーな体験をした主人公。スキル持ち。二人の子供を持つバツイチのシングルマザー。現在、吉川光輝と"結婚しない"ことを条件にパートナー関係にある。


吉川光輝、37歳。あだ名はヨッシー&(コウ)君。バツイチのゲームクリエイター。身なりに無頓着でちゃんとしたらモテるのに敢えてオタクを装おっていたイケメン。物好きにも典子に惚れた奇特な男。


吉岡亘(ワタル)、22歳。

ゲーム好きの典子の息子。普通の会社員。


吉岡亜紀(アキ)、17歳。

しっかり者の典子の娘。アイドル好き。



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