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40 また最後はパーティーって、お決まりかよ

 両王家の話し合いの結果、できるだけ早く披露宴ひろうえんを開き、むしろ両星の国民にもハッキリ知らせた方が良い、ということになった。

 ただし、姫の体調を考え、会場はどちらの星でもなく、このドラードで探すことにした。

 もっとも、王家同士の婚礼ともなると、参加する人数も半端はんぱないし、そもそもドラードにそんな建物はないから、新しくつくるしかない。

 土地は、穴が開いてしまったドームを撤去てっきょした跡地あとちを、森の精霊せいれいが提供してくれた。そこへ、モフモフの旦那だんなのイサクを中心とした建築チームが、ガーデンウエディングの設備をわずか三日間で建てた。木造だからこそできたことだろうが、格式かくしきという点ではどうだろう。

「ぼくらは格式にはこだわっていませんよ、中野さま」

 会場の下見に来ていたケント王子がそう言うと、早くも元気に歩き回っているキャットリーヌ姫も笑顔でうなずいた。

 赤ん坊はというと、男の子をネコジャラス王が、女の子をイヌザベス女王が、それぞれっこしていた。どちらも顔がとろけそうになっている。

 それをうれしそうに見ていたケント王子が、少し表情を引きめ、「格式よりも大事なのは、これをきっかけに和平交渉を前進させることです」と宣言した。

「そうだね。でも、あの子たちを見れば、案外早く話がまとまるんじゃないかな」

 おれの希望的観測に、意外な相手が「そうですね」と同意した。キャットリーヌ姫の執事のサバスチャンだ。

「あれ、あんたは二人のなかに反対じゃなかったっけ?」

 下膨しもぶくれの顔に似合にあわず、いつもクールなサバスチャンが、めずらしくれたように笑った。

「わたくしの考えが間違っておりました。姫とケント王子の恋が和平の障害しょうがいになるなどと、きわめて近視眼的に見ておりました。国同士の和平は、政治や法律だけでは成立いたしません。人と人のつながりが基本です。これからは、大いに星際せいさい結婚を推奨すいしょうするつもりです。ああ、そうそう」

 サバスチャンはニヤリと笑った。

「この披露宴が終わったら、すぐに陛下の再婚の準備に取り掛からねばなりません」

「えっ、まさか」

 おれはギョッとして、孫を抱いている王と女王を見た。

 サバスチャンはプッと吹き出した。随分キャラへんしたものだ。

「残念ながら、わがきみは若い女性をこのまれます。お相手は、ライッターのトークで王と知り合いになり、スパイとして協力してくれたアヌビス警察の女刑事ですよ」

「ええーっ、マリリンかよーっ!」

 おれの叫びが聞こえたのか、ネコジャラス王の顔が赤くなった。

「あらあら、失恋しちゃったの?」

 意地悪いじわるく声を掛けてきたのは、もちろん、シャロンである。

ちがわい! もっと純粋な気持ちだよ!」

「だったら、祝福してあげるべきじゃないの?」

「そうじゃな」

 そう言って荒川氏が割り込んで来た。

「元々同じ種族であったアヌビス星人とバステト星人の間で混血が進み、敵対感情を持つのがバカらしくなってくれば、おのずと平和がおとずれるじゃろう」

 その言葉を聞いていたケント王子が、「本当に、一日も早くそうなって欲しいものです」とうなずくと、キャットリーヌ姫のプルシアンブルーの瞳にっすら涙がにじんだ。


 そうして、婚礼の当日をむかえた。

 お花畑のような台地に、木造りのガーデンウエディングのセットが見事にマッチしている。

 来賓らいひんは思ったより少なかったが、両星の歴史を考えれば、やむをないだろう。王子も、ここからスタートなのだと言っていた。

 その分、おれのよく知っている顔が並んでいる。

 黒田夫妻、シャロンのご両親、シャロン、そして荒川氏が一つのテーブルに。

 モフモフとイサク、メイメイとヤコブ、そしてカインとアベルが一つのテーブルに。ヤコブは現役の大統領でもある。

 モップ頭のジョン、ドーベルマン刑事デカのジョージ、可愛かわいいマリリン、下膨れのサバスチャン、シャムネコ顔のミシェル刑事、そしてマンチカンむすめのアメリちゃんが一つのテーブルに。

 そして、おれのテーブルは。

「なんでこの組み合わせなんだよ!」

「それはこっちが言いたいことよ、坊や」

 そうなのだ。

 おれのテーブルは、チャッピー、プライデーZ、ブラザー、ムッシュ医師、そしておれの隣は元子なのだ。

「キャプテン、じゃなかった、ボス、いいじゃないですか。聞いたところ、ボスがこの披露宴の主賓しゅひんらしいですよ」

 なぐさめるようにプライデーZが言うと、ブラザーが、「ヘイ! グッジョブ!」と体をクネらせて親指を突き上げた。

 ムッシュ医師は「すみませんね。わたしは、あなたが飲み過ぎた時の用心らしいです」と頭を下げた。

「いや、先生はいいんです。でも、元子はどっちかと言うと、あっちのテーブルだろう」

 おれはミシェル刑事たちのテーブルを指差ゆびさした。

 元子は肩をすくめ、「だってしょうがないじゃない、テーブルは六名掛けだから。でも、ホントに変な組み合わせね」と苦笑した。

「ああ、そうだわ。せっかく同じテーブルになったから、坊やに、次の行き先を伝えて置くわね」

「えええーっ、また、行かせるつもりかよーっ!」

 元子は満面の笑みで頷いた。

「もちろんよ。次のミッションもうまく行ったら、スターポールに正式に採用してあげるわ」

「おれの意思は確認しないのかよ! これから、おれはどうなるんだよー!」

 おれの不安を吹き飛ばすように、会場は盛大せいだい花吹雪はなふぶきに包まれた。

 最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

 さて、みなさまに可愛がっていただいたこの宇宙旅行シリーズは、ここで一旦お休みさせていただこうと思っています。中野くんともども、パワーアップした仲間と戻って来れるよう、少し充電させてください。

 それでは、いずれまた。

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