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九話:【魔王の集い】オークション


「レキ、ゴブ助、集合!」


 僕は眷属である二体を呼び寄せる。


「なんすか〜主殿ぉ〜?」


 舐め腐った態度のレキがくるが、ゴブ助が来ない。


「ゴブ助はどうした?」


「さぁ? 迷子じゃないんですかい?」


 たしかに森型フィールドを限界まで拡張したら結構な広さだ。

 しかし自分のダンジョンで迷子って……。 それでも僕の眷属かー!?


「主殿も一度迷子になってやしたしねぇ?」


「……」


 レキは馬鹿にしくさった仕草で笑う。

 だってしょうがないじゃないか。 道以外はどうなっているのか? その確認をしていたら帰り道が分からなくなったのだ。


「それより、どうだ?」


「ま、それなりにはってとこですかねぇ?」


 僕は遠くで死体のように横たわるゴブリンたちを見て、レキに尋ねた。 口角を上げ笑うレキに、特訓は順調なのだと悟る。

 まぁ元がゴブリンだからそれほど期待はできないが。


 それでも僕たちは、魔物は成長する。

 棒きれを持ち打ち合えば徐々に相手の動きを読み、相手の裏をかいたり鋭い一撃を放ったり、成長するのだ。

 

(進化とかもするんじゃないか?)


 僕はちっぽけなゴブリンたちの可能性に、胸が躍った。

 最弱であるはずのゴブリンたちが、最強へと至る。

 まぁ最強は無理があるかな?


「主、遅れた」


「遅いぞ、ゴブ助!」


 麦わら帽子に長靴、手には短剣の代わりに鍬をもったゴブリンが申し訳なさそうにやってきた。

 

「道、迷った」


 どこか喋りの鈍いゴブ助。

 魔物召喚のゴブリンが喋れないことを考えれば、ゴブリンとしては十分賢いのだけど。

 

「順調か?」


 装備から見てわかる通り、ゴブ助には農業を担ってもらう。

 通常のゴブリンの50倍のDPを使ったんだ。 その分働いてもらうぞ!!

 

「ん。 成功、した」


「おおおお!?」


 ゴブ助の手には土の塊にしかみえない物が。

 しかしそれはけっして土ではない。 芋だ。


「グッジョブ、ゴブ助!」


「ギヒヒ」


 喜ぶゴブ助は気持ち悪い笑顔を見せる。 森から採取した芋の量産に成功したのだろう。 まさかこんな早くに成果をだすとは……さすがユニークスキル持ちだ。 僕のゴブリン縛りとは比べ物にならないくらい優秀なんじゃないか?


 俺はメニューからゴブ助のステータスを確認した。 


【眷属ステータス】

名前:ゴブ助

種族:ゴブリン

職業:ファーマー

レベル:1

SP:0


力:G

耐久:I-

器用:G+

敏捷:H

魔力:I


スキル:【採取Lv.1】【農業Lv.1】【短剣Lv.1】【異種族繁殖Lv.1】

ユニーク:【魔王の眷属】【緑の手】



 相変わらずのステータスだが、スキルは多い。

 通常のゴブリンは【異種族繁殖】ぐらいしか持っていない。 たまに【短剣】持ちもいるけど、それだってレアだ。 特にユニーク【緑の手】は素晴らしい。


「コレも」


「おほぉ!? って松茸ぇえええええ!?」


 ゴブ助から手渡された立派なキノコたち。

 どうみても松茸様だ。 

 他にも彩り鮮やかなキノコもあるけど、どうみても毒キノコです。


「さすがユニークか……」


 緑の手の効果は触れた植物の成長促進・品種改良・祝福。

 祝福についてはまだ良くわからないが、きっといいことに違いない。


「ふんふん、今夜はキノコパーティーだぞ!」


「肉がいいぞぉ〜主殿ぉ〜」


「いいぞお〜」


 肉食系ゴブリンどもめぇ!


 野生動物の自然発生をしたいところだけど、DPを常時発動させるパッシブタイプのダンジョンオプションなのだ。 

 しかも階層に設定したら解除不可。 階層の範囲に比例して消費量が増えるらしいので、DPに余裕ができてからじゃないと無理だ。


「それにぃ雌がいないぞ〜主殿ぉ〜」


 宴には必須だと、レキがその邪悪な瞳で睨みつけてくる。

 魔物召喚したゴブリンは全て雄だ。

 ゴブリンには雌が存在しないのだろうか?

 レキの発言にゴブ助もまた鍬を上げ抗議しはじめた。 


「メス、メス」


 肉食系男子ゴブリンどもめぇ!

 

 しかし戦力強化を考えれば、番でどんどん繁殖してもらってというのが一番だよなぁ。

 

 僕は【魔王の集い】のオークション機能を使うか考える。

 ゴブリンは【異種族繁殖】とかいう鬼畜スキルを持っているので、相手がどんな種族であろうと孕ますことができる。 しかも生まれ来るのはゴブリンと決まっているのでたちが悪い。


「行ってみるか?」


 今日でちょうど15日目。 つまり世界が繋がるまで後、15日間。 

 ダンジョン作成もほぼ完了。 一階層森型フィールドを限界まで拡張、通常の道とは別にゴブリンたちに作らせた獣道。 豊富な資源を使って作ったトラップ。 DP節約は大切です。 召喚したゴブリンも食料の関係で200体ほどだ。 

 世界が繋がってから増やそうと思ってたけど、ゴブ助のおかげでもう少し召喚しても大丈夫かな。


「DPも多少あるし」


 オークションで雌の魔物を購入して、ゴブリンに孕ませさせる。 ゴブリンの苗床になってもらうわけだね。 うん、僕鬼畜。

 でもまぁ魔物同士だし、戦力強化は最重要事項だ! 


「うーん……」


 だがしかし。

 オークションは少し困ったことがある。

  

「ゴブリンだけど大丈夫かなぁ?」


 オークション会場には直接行かなければいけない。 転移みたいなアレでヒュンといくらしい。 

 どうせならもうヤ〇オクみたいにしてくれればよかったのに。 今どき直接買い物に行くとかめんどうだよ。

 まぁ一番は僕がコミュ症でいきたくないだけなんだけど。

 おおむね他の魔王からは好評のようだし。


「いいよね。 みんな魔王なわけだし」


 きっと魑魅魍魎の醜い化物だらけさ。


 などと僕にもそう思っていた時期がありました。

 


◇◆◇



 こなきゃよかった。


「Hey,isn't that Goblin cool?  I just found True of Satan」


「Holy shit!」 


 オークション会場に入った瞬間、その場にいた多くの視線に晒され、会場が湧いた。

 英語、中国語、韓国語、謎の言語……。 あらゆる言葉で会場が埋め尽くされる。

 僕にはわかった。

 コノ騒めきが、侮辱の類だと。


「わぉ。 ゴブリンの魔王っているんだ」


「ぷ。 しかも白くてキモイし、超〜〜弱そう、うひひひ」


 例外なく日本人までも。

 もっとも日本語を喋っているだけで外見は全然違うが。


「……」


 魔王。

 たしかに彼らは魔王である。 その存在感は魔物とは違う、僕のことを連れてきたゴブ助とは区別して魔王だと認識したことと同じく、彼らにもオーラといえばいいのか不思議な圧力を感じる。


 しかし()が多いな。


 ほとんどの魔王が人間だ。 連れている魔物がいるからオークション会場は混沌としているけど、種族が人間じゃない魔王って少数派なのか?


「ん?」 

 

 ヴォン……と目の前にウィンドウが現れた。 どうやらオークションが始まるらしい。 会場中央特設ステージ。 運ばれてきた品の詳細が表示された。 


「いきなりか」


 ステージに立つのは雌の魔物。

 緑色の小さな体、邪悪を体現したような醜悪な顔に小さな角が一つ。

 ≪ゴブリン(♀)≫である。

 ゴブリンってちゃんと雌がいるんだ。


「メスメス!」


 ゴブ助が興奮状態だ。

 

 オークション開始価格は100DP。 安いけど、これからどんどん上がってくんだろうなぁ。 ゴブ助の為にも手にいれたいが、とりあえず様子見だ。


「……?」


 と思ったのだけど、まったく値段が上がっていかない。

 周りを見るとみんな苦笑で、なんだかへんな雰囲気。

 僕はゴブリン(♀)の能力を確認する。



【ステータス】

名前:未設定

種族:ゴブリン

職業:ダンサー

レベル:1


力:I-

耐久:I-

器用:I

敏捷:I+

魔力:I-


スキル:【異種族繁殖Lv.1】【魅了ゴブリンLv.1】

ユニーク:【死種】




 圧倒的低スペック。

 魔物召喚のゴブリンより酷いぞ、コレ。


「またかよ〜〜」


「いいかげん、諦めたらいいのにね」


 特設ステージでクネクネと変な踊りをするゴブリン(♀)に白けたヤジが飛ぶ。 どうもこの雌が出てきたのは初めてではないらしい。 カウントダウン。 入札締め切りが迫る。 僕は急いで落札した。


「OH! Goblin Fucker!!」


「What the fuck!? Oh……He is Goblin. HAHAHAHAHA」


 会場が嗤いに包まれる。

 歓声に答えるようにゴブ助が天高くガッツポーズした。

 ゴブ助の栽培した芋と松茸様をオークションに出そうとかおもってたけど、更に笑われそうだから、僕はすぐに会場を後にした。 


「ちっ……」


 ダンジョンに戻っても、僕の耳にゲラゲラとした笑い声が張り付いてとれない。

 しばらくオークションはやめておこう。


「キノコパーティだ!」


 気分転換。

 新たな眷属、ゴブリン(♀)――ゴブ美の歓迎会が開かれた。

 その際、最初は主様の子種をくださいとシラフのゴブ美に言い寄られたが、全力で拒否した。 他のゴブリンたちはゴブ美を女王様のように扱っているのだけど、僕の魔力が低かったら【魅了ゴブリンLv.1】に掛かっていたのだろうか?


「メス! メス!」


 ダンジョンが繋がるまで残り15日間。

 僕は引き籠る。








ブクマ……寄こせ……('ω')

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