なんだかんだで友達は大事
マックスの転校から早くも一週間が経った。
多少問題はあったものの、博士が作ってくれた新しいアイテムのおかげでなんとか中学生活を送れているマックス。
未だにクラスメイトとの距離は微妙なもので、友達らしい友達はつくれていないが、学級委員の三島は親切だったし、わからないことは周りが教えてくれるので友達がいなくても苦労はなかった。
授業中は友達と喋るようなことはまずないし、10分やそこらの休み時間は別に誰かと喋らなくてもやっていける。
部活にも入っていないので、放課後は帰るだけ。
特に楽しいというほどでもないが、行きたくないほどでもない生活を日々送っていた。
だが、マックス最大の試練の時は刻々と近づいていることに本人は気づいていない。
「はーい。今日は間もなく行われる野外活動についての説明をします。」
その日の総合学習、通称”総合”の時間に担任の佐藤の口から飛び出したのは2年生の一大イベントとなる野外活動、通称”野活”についての説明だった。
「野外活動ッテ何?」
「野外活動っていうのは自然の中でみんなで色んな活動を行うことだよ。
登山とか自分たちでご飯を作ったり、肝試ししたり、出し物とか色々。」
「ヘェ~」
席の近かった三島に説明を乞えば親切に教えてくれた。
三島の説明の通り、活動内容は主に集団で自然と接しながら活動することなのだが、そこから生徒たち一人一人が何を学び取ったのかが重要であり、野活の後には決まって個人や班ごとで活動内容をまとめる等の作業があるため、決してただ楽しいだけのイベントとは異なるものになっている。
授業の一環として行くため、3年生の修学旅行とは訳が違った。
しかし、マックスにとって重要なのは野活が何かということでもない。
大事なのはここから決めなければならない”とある”ことである。
「というわけで、今日は班分けを決めるのでそれぞれ5人から6人くらいの班を作ってください。」
「ナッ、ナンダッテー!!!」
「マックスくん静かに!!」
そう、マックスにとって最大の試練となったのは野活の班決めである。
クラス替えの後である5月に行われるイベントということもあって、まだクラスに馴染んでいない生徒たちの仲を深めるために出席番号順で区切る、現在の席の班、給食・掃除の班等で決められる場合もあるが、彼の通う中学校では生徒たちそれぞれに班を組んでもらうというのが毎年のやり方であり、修学旅行の班決めも同じ形で行われる。
つまり友達なんていなくても平気という気持ちで余裕ぶっていたマックスはここにきて友達をつくっておけば良かったと後悔する破目になったのだ。
周囲で次々と班が決まっていく中、最後まで残り、最終的に人数が揃わなかったところに抛り込まれるのはクラス中に友達がいないことを言っているようなもの。
そればかりは何としても避けたいとマックスは焦りを感じる。
(ひとまずどこかの班に声をかけて入れてもらうしかない・・・!!)
「ア、アノ・・・一緒ノ班ニナッテモイイデスカ?」
「は?」
「ア?」
「何?お前組んでくれる友達いないの?」
「アアアアアアアアアアアアア!!!!蜂ノ巣頭ァアアアアアアアア!!!!」
「お前喧嘩売ってんのかっ!?!?」
(やっちまったよー!!よりにもよってコイツに頼むとかやっちまったー!)
「ベ、別ニ友達トカイナイワケジャナイシ・・・」
「ふーん。じゃあ、頑張って組んでもらえる相手探しな?
まあ、どうしてもって言うなら組んでやってもいいぜ?そのために一人分空きつくって待っててやるからよぉ!!!」
(んにゃろー!!!見てろよ!!すぐに他の班に入れてもらうからな!!!)
それからマックスは手当たり次第にクラスメイトたちのところを回った。
転校してからこれまでで初めてこんなにクラスの人間と絡んだかもしれないと思うほどに。
だが・・・
「アノー、野活ノ班ー」
「ごめん!もう組み終わっちゃった!」
「アノー」
「ごめん、今メンバー揃っちまった・・・」
「ア」
「マックス今更来ても遅いってー!!」
もうほとんどの班が出来上がっていた後だった。
「アノ、先ホドは大変失礼イタシマシタ・・・私メヲ仲間ニ入レテモラエマセンデショウカ・・・」
「えっ?なんだって?あっごっめーん!もう人数集まっちゃった!」
「フザケンナヨッ!!!!蜂ノ巣!!!!!」
「あ゛ぁ゛!?」
人数を一人分空けておくと言っていた”蜂の巣”こと後藤の班も当てにはならず、結局マックスは教卓前で先生の隣に立ち、入れてもらえる班を探すことになった。
「あの・・・マックスくんうちの班入る?」
「三島ハ神デスカ!!!!」