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通じ合うために必要なもの

「ババビバ(ただいま)」


「おっかえりぃ~!!ってあれ?チョーカーどうしたの?」



 翻訳機がないので博士が何を言っているのかは理解不能だったが、なんとなく状況は察することができたマックスはポケットの中にしまい込んでいた壊れたチョーカーとイヤリングを取り出した。



「えっ!?ちょっぅええええええええええええぇぇい!?!?」


「ボババベバ(壊された)」



 博士はショックのあまり膝からガクンと落ちて両手を汚らしい床にピッタリとつけた。

 その落ち込む姿にマックスは少なからず申し訳なさを感じる。


 こんないい加減な博士でも研究に人生を捧げてきた人間なのだ。

 自身の研究の成果が使い物にならない状態にされたら、そりゃあショックを受けて当然であろう。



「ボベンババビ・・・(ごめんなさい・・・)」



 自分のしたことではないとはいえ、マックスは博士に対して謝罪するほかなかった。

 こうならないようにもう少し注意することも出来たはずだと自分を責め、拳を強く握り締める。


 すると、ポンと博士の手がマックスの頭に触れた。

 博士が先ほどまで埃や機械油で汚れた床に手をついていたことなどすっかり忘れて、マックスは下を向いていた顔を博士の目と合わせるように自然と上へ向ける。



「まあ、しっかたないよぉ!こんなこともあるさ!!はっはー!

 それより新しいの丁度出来たところだからコレ付けてみてよぉ!!!」


「べ・・・?(え・・・?)」


「ちゃらりらったりぃー!!

 いやぁ~よくよく考えてみたらさ、中学校って化粧とかアクセサリーとかダメじゃん?

 僕も自分の中学校時代を思い出してハッとしちゃってさぁー。

 ってことで新しいやつを開発してみたよ!」



 マックスが呆けている間に博士はサササっと彼の体に新しいアイテムを取り付け始める。

 一つの耳の中に、そしてもう一つは首にテープで貼り付けられた。



「コレ何デスカ?」


「おおおおおおおお!!!少し流暢に喋れるようになったんじゃないかい?さすが私!!

 だが、まだまだ完璧な日本語を喋らせるために改良頑張るんだぜぃ!」


「コレ何ッテ言ッテンダロ!!」


「ん~?これかい?これは翻訳してくれる耳栓と日本語を喋れるようになる機械さ!

 今回は肌色のテープで留めてるから遠めでは絶対にバレないよ!」


「耳栓ハトモカクトシテ・・・喉ノヤツ、ナンカ厚クナイカ?」


「いくら私と言えども充実した機能をそれ以上コンパクトにまとめることは現時点では不可能だったんだよ?

 だから新作が出来上がるまでもう少し辛抱してくれたまぇ~!!」


「イヤ、イクラナンデモ正方形ハナイダロ!!!!」



 喉に取り付けられた日本語を話せるようになる機械は厚さ1cmほどの正方形をしている。

 テープで貼り付けられたそれは遠めで見れば確かに肌色のテープでカモフラージュされており、一見何事もないかのように見えた。


 だが、横から見たらどうだろう。

 喉から飛び出た四角いそれは明らかに怪しい以外の何ものでもなかった。



「コレドウ見テモ怪シイダロウガッ!!!!」


「えぇ~そんなことないよ!遠めで見ても真正面から見ても違和感ない!問題ナッシングだよ!!」


「横カラモ見ロヨ!!!!」


「えー・・・あ、本当だ。喉からなんか出てるね・・・まあ、喉仏ってことにしたら大丈夫っしょ!」


「異常ダヨ!!僕ノ喉仏ドウナッチャッタンダヨッ!?」


「こうなっちゃったんだよ♡」



 バシッ!!!!



「オ前ェ・・・他人事ダト思ッテ楽シンデルダケダロ!!」


「そんなことはない!!!」


「ッ・・・!?」


「そんなことはない。僕はいつだって真剣だ!!

 この機械を作ったのだって異世界人と通じ合いたいと思ったから作った。

 より良くなるようにって何回も何回も失敗して、途中挫けそうになりながらも諦めずに頑張って作ったんだ。

 これは僕の努力の結晶!!それを単に楽しむためだけの道具だと思われていたなんて心外だよ・・・」


「ゴ、ゴメンヨ・・・」


「わかってくれたならそれでいいよ。」


「ハ、博士ェ・・・・・・!!!」


「ところで、やっぱ正方形だと喉仏っぽくないよね?次はひし形にしようか!!」


「ヤッパリ楽シンデルダロォ!!!!!」



 翌日、喉に正方形の異物を貼り付けて登校してきたマックスにクラスメイトが思わず二度見したのは言うまでもなく、担任の佐藤に病院へ連行されそうになったのを止めるためにマックスは仕方なくアステラ人は皆喉仏が正方形であるという嘘を付くほかなかった。


(アステラ人ノ皆、ゴメン・・・)

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