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すべての始まり

 その日は数えるほどしかない雲がなく、真っ青な空が広がり、照り注ぐ太陽の暖かな光とそよそよと心地よく吹く風が気持ち良い畑仕事にはもってこいの一日だった。



(今日も一日頑張るぞ!)



 大きく伸びを一つして鍬を片手に畑へと続く道のりを歩く彼はマックス。

 父と母と共にこのアステラという国の端っこにある小さな村で畑を耕して生活している。


 しかし、彼は気付いてはいなかった。

 この平和な日常がまもなく終わりを迎えようとしていることを。



「なっ!?なんだこれぇ!?!?」



 それはあまりにも一瞬の出来事で、マックスの体をまばゆいばかりの光が包み込んだかと思いきや彼の体は周りの景色が見えるかのようにどんどん透けて薄くなっていく。



「マ、マミィ!パピィ!助けてえええええええ!!!」


「「マ、マックスゥウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!」」



 叫び声も空しく目が開けていられないほどの光を放ち、マックスはその場から姿を消した。

 先に畑に来ていた彼の両親がまばゆい光の中、突然消えてしまった自分たちの息子の姿に手に握っていた鍬を落としたのは言うまでもなく、彼らはその場に膝をついて呆けている。


 一体マックスはどこへ行ってしまったのか。



 *


「僕は一体どうなってしまったんだろう・・・。」



 光に飲まれたマックスは真っ白な空間で目を覚ます。

 辺り一帯には何もなく、ここがどこなのか目印になるようなものも何も無い。

 キョロキョロと見渡すも同じ景色がただ続いているだけだった。



「だ、誰かぁー!!誰かいませんか!?」



 出来る限り大声を出してみるも、返事が返ってくる様子は見られない。



(もしかしてここは死後の世界とかなのか!?

 実はあの場に爆薬でも仕込まれていて、僕はそれで踏んでしまったとか・・・?

 そんなまさか・・・一体どうして?なんでこんなことに・・・・・・)



 自分の状況もわからず、ただただ泣きたくなるマックス。

 そんな彼に救いの手を差し伸べるかのごとく、目の前に真っ白な空間の中でもわかるほどの淡い黄色の光が照らし出される。

 マックスは僅かな希望を胸に、その光へと必死に手を伸ばし続けた。



 *


(ん・・・ここは・・・?どこだ?)


「おっとようやく目が覚めたようだね!!」



 目を覚ましたマックスはあの白い空間の中で見たのと同じ淡い黄色の、天井からぶら下がっている電気の光が眩しくて目を細める。

 しばらくすると、マックスが目覚めたことに気付いた見知らぬ男性がその光を遮るかのように彼の顔を覗き込んだ。


 男性は少々薄汚れた白衣を着込み、その下はアイロンがかかっていないだらしないシャツに緩く結ばれた緑のネクタイ、茶色のスラックスを穿いている。

 手入れも何もしていないモジャモジャの頭はまるで老人のように真っ白だったが、驚くことに顔には一切シワやシミがなく、肌は頭の老人感とはまるで違って若々しい。


 だが、マックス本人は男を観察している暇などなく、突然のことにただただ驚いて未だに覗き込んでいる男にぶつかるかという勢いで飛び起きた。

 寸でのところで男性がひょいっと避けたので、互いに痛い思いをするということにはならなかったが、もしもこれが悪い夢なのであれば、頭をぶつけてもう一度眠りについた方が良かったかもしれないと彼は後に後悔することになる。



「バンババビッバビバビボボバ!?(あんたは一体何者だ!?)」


「ありゃ?もしかして日本語喋れない?」


「バッ?バビビッベブバベンベンババババビ・・・(はっ?何言ってるか全然わからない・・・)」


「ありゃりゃりゃりゃ~・・・まあ仕方ないね。では、私とっておきのコレをあげよう!」



 まるでゴミのように積まれたガラクタの山の中からひょいひょいと物を探す男。

 彼はお目当てのものを見つけるとマックスの耳にイヤリングを、首にチョーカーを無理やりつけさせる。



「ジャジャジャジャーン!!!

 これぞ私の開発した日本語を君の国の言葉に翻訳してくれるイヤリングと喋ると日本語になるチョーカーだよ!」


「ナッナンダコレハ!?」


「おおぉ~!!まだまだ改良は必要だが、ちゃんと日本語になってるよ君ぃ!!!」


「オオ、ナニハナシテンノカワカルゾ!ッテ、ソウイウコトジャナイ!!!

 ココハイッタイドコナンダ!?アンタハイッタイダレナンダ!!」



 レンズの分厚い黒縁の丸メガネで目は見えないが、ニヤリと上がった口元で男が笑っているのがわかる。

 男はマックスの肩にポンを手を置くと、メガネを光らせて自身の計画について語り始めた。



「くっくっく・・・君のおかげで私の実験は成功したのだよぉ!!!」


「ジ、ジッケンダト!?」


「そうさ・・・これは異世界人をこちら側に連れてくることは果たして可能なのかという実験だったのだよ!

 そして、君がこの世界に来たことで実験は成功したと言える。

 君からしたら、こちら側の方が異世界ということになるのだろうけれども。」


「イセカイジン?コチラガワ?ナ、ナニヲイッテ・・・」


「私の名は近藤。博士とでも呼んでくれたまえ。そしてここは地球にある日本という国さぁ!

 君は私によってここ日本に召喚されたのだよぉ~!!!」


「ナ、ナンダッテェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!」

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