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なんでもない  作者: 転々
3/3

迷子

「あっれー、おかしいなぁ」

平凡な住宅街。そこで少し困っている少年がいた。

文月 凛(16)である。

「いや、流石に二ヶ月学校行ってなかったくらいで帰り道忘れるなんてことはないだろ、朝は登校できたのに」

ははっ、笑えないんだけど。

「そこの角を右に曲がってまっすぐ行けば赤い橋がぁ……」

無いんですけど。むしろ歩道橋立ってるんですけど。

なにこれ、新手のいじめ? 勘弁してくれよ。

二ヶ月間ちゃんとした運動してなかったから、ベッドインしてたから、貧血っぽいんですけど。

とりあえず、近くにあった公園のベンチに座る。

はぁ、思わずため息が出る。

久しぶりの授業、久しぶりの迷子、久しぶりに泣きそうです、おじいちゃん。

周りに誰もいないので寝転がってみた。

「ゲーセンに2時間以上いたから7時は過ぎただろうなぁ」

空を見ると真っ暗だ。

星でも見えたらなぁ、と思ってもいたが……。

「ちっ、曇ってやがる」


もう諦めて目を閉じた。

ん?てか、おかしくないか?

ちょっとした不自然さに気づき目をパッと開ける。

その直後だった。

俺は硬直した。

なんでってそりゃぁ……目を開けたら誰かに覗きこまれていたからだ。

次第に夜目になれて、いや硬直がとけ「うわっ」とかいう微妙な驚き方をしてしまった。

ちょっとした静寂、そのあとに覗き込んでいた男が「プッ」と吹き出した。

「え?」

「ふふふ、あははははははぁ、ははっははっ、ぷっ」

いや、爆笑だった。

「ははははははははははははははぁぁぁぁぁ、はーー、ふーーー」

なぜか最後に俺の真似をするように「「うわっ」だってーー」とか言い出した。

なんとなく、初対面の俺に対して失礼では? と思ったが。

「ごめんごめん。初めて会う人に対しては失礼だよね、ごめんごめん」

すぐ謝ったので許してやろう。

よく見ると結構顔の整った顔だなぁ。歳は20代前半で、目は糸目であり、そして長髪。いるだけで目立ちそうな容姿の持ち主だった。

だが、なんか旅人が着ていそうなマントを着ているのが難点だが……。


「そういえばなんで俺のこと覗き込んでいたんですか?」

当たり前の疑問を投げて見ると、

「公園で寝込んでいる人がいたら、何かあったんじゃないかと思ってね、もう夜だし」

と、座りながら当たり前の答えが帰って来た。

「で、君はこんなところでどうしたんだい?」

「いえ、そのですね、恥ずかしいんですが帰宅中に道に迷ってしまって、はい」

すると、また「プッ」と彼が吹き出す。

「ははっ、君は本当に面白いなぁ」

あ、そうだ。

「あのー、すいません。もし、この辺に住んでいるならこの辺で何かあったか知ってますか?」

「どうしてそんなことを?」

「いや、この辺りで人を見かけないのですが、もしかしたら知ってるかなーって……」

「あぁ、そういう事かぁ……」

突然彼が立ち上がった。

「ごめんねー。僕はこの辺に住んでるわけではないんだ。でも、そうだね、この辺りで人を見かけない理由なら知ってるよ」

思わず立ち上がってしまった。

「え?ほんとですか!?」

「はい、それはですねぇ……」

なぜか、嫌な感じがした。

「それはですねぇ……私が結界を張っているからですよおおお!!」

突然振り返り、どこから出したのかわからないが死神が持っているような、刃だけでも2、3mはある鎌を振り下ろしてきたのだった。

「っぶね!」

間一髪でそれを避ける。

「なんすかいきなり!」

「君は殺さなくちゃいけないんだ、いや、むしろ殺したくなっちゃった」

そういって茶目っ気出してベロを出してきた。

「ふざけんな!」

そう吐き捨てるように言った。

どうやら、勢いよく振り下ろしすぎたせいで地面にめり込んでなかなか抜けないようだったので、前のめりになりつつも走って逃げた。

「くそっ、くそっ」


だが、もし、奴の言うことが正しければこの結界とやらには助けを呼べる人がいないと言うことだ。

そしてこの結界からは出ることは出来ない言うことだ。

つまり、奴に見つからないようにずっと隠れ続けるしかないと言うことだ。

走っているうちに路地裏を見つけたが、ここしか隠れられるところがないため、むしろここに隠れていると一目瞭然なので、また走り出そうとしたその時だった。

その暗い路地裏から伸びて来た手に引き摺り込まれたのだ。

終わった……なんて思って目をつぶって、あの恐ろしい大きな鎌に真っ二つにされるのを待った。


しかし、いくら経っても痛みを感じないので、おかしいなと思いつつ目を開いた。

「だ、誰だあんた?」

「声を出すな」

暗くてよく見えない。

「こっちに来い」

「え?」

「早く!」

声からして男だ。

言われる通りに着いて行く。

しばらくすると見覚えのある場所まで歩いて来た。

今気づいたが電灯がついていない。これも結界とやらの力なのだろうか。

そして、そこを右に曲がってまっすぐ行こうとしたので、

「あのー」

「なんだ、用があるなら挙手してからにしろ。それともあれか?尿を漏らして、パンツが濡れたからパンツを脱ぎたいと?それなら時間がないから却下だ」

「いや、そうじゃなくて、ここまっすぐ進むと赤い橋に出る道ですよね?」

「あぁ、そうだが、それがどうしたのかね」

「俺もここから橋の方に行ったんですが、なんか歩道橋のある道に出て来ちゃって」

「うむ、なるほど、そういうことか」

「何かわかったんですか?」

「次からは、挙手してから発言しろ。で、その質問の答えは仕組みがわかった、だ」

先生みたいな人だなぁ。まぁ、こんなめんどくさい先生会ったことないけどね。


「少し時間を取るから、あたりを警戒してくれ」

「警戒?」

「奴がもう少しで来てしまう、頼んだぞ」

まじか、もう少しって。あと何分で、いやあと何秒で来てしまうんだ。

「おいおーい、なーに術式解体してやがんだよ、てめぇら?」

0秒でした。

「もう来ちゃいましたよ! どうすんすか? せんせ!」

咄嗟だったのでさっき考えていた『先生』って呼び方が出てしまった。

「挙手しろと言っただろう、全く。後2分くらい足止めしてろ」

無理やねん。何を言ってんだこの人は。

というか、来た来た来た来たーーーーー!!

もうだめだもう10m位前方くらいにはもう来てる!!

鎌を振り上げて……あ、死んだ、これ、と思ったその時だった。

「全く、2分も待てんのか、急かすんじゃない」

ゾワっとした。悪寒ってのかな、身体中の細胞が震えた気がした。

そして、その悪寒を感じ取ったのは奴も同じだったようで、20m位後方に飛び退いた。

「ここは私の顔に免じて見逃してはもらえないだろうか?」

暗くてよく見えなかったが、先生はフードで顔を隠していたようだったが、フードを脱ぎ顔を奴に見せた。

すると奴は納得したように「なるほど、わかりましたよ」と言いバックステップで夜闇に消えて行った。


「えーと、ありがとうございます」

「別に感謝せんでもいい。殴られるのが嫌なだけだ」

「?」

「まぁ、後もう少しだ、待ってろ、警戒してな」

挙手した。

「あんた、ナニモンなんですか?」

「あぁ、それでいい。で、ワシはジジィだ、それ以上でもそれ以下でもない」

「お名前聞いてもいいですか?」

「ダメだ、どうせ学校で表彰するためだろ?やめてくれ、名誉はいらんし、有名になっても損しかない」

「いやぁ、恩人の名前くらい知っておきたいなぁと……それに今日起きたこと誰にも言いませんし」

「やはり似てるなぁ、お前は」

「?なんのことですか?」

「あ、忘れてくれ、なんでもない。よしっ、結界は解けたぞ。もう出られる」

「ほんとっすか!? うお、ほんとだ! 本当にありがとうございます」


結界とやらが消えたせいか体が軽くなり、周りの電灯の明かりもついていった。

「っと、私はもう帰らなくては。君はどっち方向だい?」

電灯の光でやっと先生の容姿が見えた。

服装的には先ほどのやつと似たものであるが、ヒゲの生えた少し筋肉質な5、60代の貫禄のあるおじいさんであった。

「俺の家はこの橋を渡ってすぐのところにある家です」

「そうかすぐだな、送って行ってやろう」

「いえ、俺はもう大丈夫なんで」

「そうかい?では私はここでお暇させてもらうが、気をつけたまえね」

「はいっ、ありがとうございました!」

いつかこの恩は返したいなぁと思いながら帰宅した凛であった。

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