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4話 ギルド

「うーん…ふぁあああ…。」


朝になった。

窓から外を見ると既に賑わっている様で、そこから差し込む日の光で俺の目はバッチリ覚めた。


「スピー…。スピー…。」


隣ではまだネアが寝ていたが、服を着ながら、


「ほら起きろ。朝だぞ。」


と体を揺すって起こした。


「んー…?」


と眠そうに目をこすりながらネアが起きた。






食事は部屋の前に置いてあったので食べ終え、その他諸々を済ませ部屋を出ると、


「あ、おはようございます!」


と宿屋の女の子が元気よく迎えてくれた。


「ああ、おはよう。」


と返すと、


「旅人さん、今日はどこか行くの?」


と聞いてきたので、


「うーん、そうだなあ。鞄と炎結晶、あー後ギルド作成所で依頼ってのを見てこようと思ってる。」


今まで金袋は腰にぶら下げていたが、邪魔なので鞄に入れてしまおうということで鞄を買いに行く。というか普通に鞄が有った方が良い。

炎結晶は名前からおおよその判断はつくだろうが、割ると火種が出る結晶で、炎魔法を扱えない者がよく使う。

他にも種類はあるが、不必要な物は買わないでおく。


すると俺の行き先を聞いた宿屋の女の子が少し眉をひそめたので、


「どうした?」


と聞くと、


「え?ああ、その…ギルド作成所に…行くんだよね?」


と少し心配そうに言うので、


「ああ。」


と答えた。

すると小声で、


「あんまり大きな声で言えないんだけど、ギルド作成所には行かない方がいいよ。」


と言った。


「どうして?」

「この町のギルド作成所には自由の光(フブラ)っていうギルドの人たちが居座ってて、旅人さんたちから物やお金を巻き上げてるってお母さんが言ってたの…。特に亜人の人たちを毛嫌いしてて…。その…妹さんのことが…。」


と不安そうな声で言った。俺は、


「…ああ、分かった。気をつけておくよ。ありがとう。」


と女の子に礼を言った。

とは言えギルド作成所には行くが。

最後に、


「じゃ、また日暮れ頃に来ます。」


と宿屋の女主人に言って俺とネアは宿屋を出た。






「お、あったあった。」


昨日と同じようにネアには魔法の手(ルーア)を巻き付け、宿屋で貰った地図を見ながら町を見て回っていると、鞄を売っている店を見つけた。


「ようし、最初に鞄から買うか。」


と言い店の中に入った。

大きい物から小さい物、背負うタイプの物から手で持つタイプの物など様々な種類が有った。


「俺のは…これでいいか。」


と大きくもなく小さくもない、背負うタイプの物を買うことにした。


「…んでお前のは…。」


とネアの翼を見ながら考える。


「昨日の服もそうだが、やっぱり亜人用の鞄とかはねえんだな…。まあ、とりあえずコレにするか。」


と小さめの背負うタイプの物を買った。

そして外に出て建物の間に入ると、


「さてと、この鞄をこうして…。」


魔法の手(ルーア)で、鞄の腕を通すところの右は下の付け根を切り、左は上の付け根を切る。

そして、最後にそれが一本になるように真ん中で結べば、


「よし、出来た。これで翼も通るだろ。ほれ、背負ってみろ。」


そう言ってネアに渡し背負わせると、


「よし。…ちょっと長かったか?まあいいか。」


少し長すぎたのか、鞄の位置はかなり下になったが、背負えたのでよしとしよう。

ネアも、


「おおー…!」


と小声で感動してる。


「いいか。金目の物や危ない物は俺が持つ。だが、水や食料はお前が持てよ。」


と言うとネアはニコニコしながら、ブンブンと首を縦に振った。


「(こんなことでヘラヘラ笑いやがって…。物持たされんのに何が嬉しいのやら…。)よし、次だ。行くぞ。」







そうして炎結晶と水、食料も買って昼飯を済ませ、今日泊まる分の金しかなくなったのでギルド作成所へ行き、依頼を見に行くことにした。


「はああ…でっけえなあ…。」

「おぉー…。」


俺たちの目の前には、それはまあ立派な建物があった。


「(この大陸に着いた時の崖を思い出すな…。)」


と見惚れていると突然、近くに居た赤髪の女性が、ドカッ!とネアを蹴り飛ばした。


「んっ!?」


とネアが声を上げるのをよそに女性の方を見ると、


「おやおやゴメンねえ嬢ちゃん。ゴミと間違って蹴っちまったよお。」


とニタニタ笑いながら言ってきた。


「(こいつ…もしかして自由の光(フブラ)か…?)」


宿屋の女の子が注意してくれていたため、魔法の手(ルーア)で掴むついでに全身を覆って盾にしておいたので、ネアは少し飛んだだけで怪我はなかった。

再び女性に目を戻すと女性が、


「あんた?コイツはあんたのゴミかい?」


と聞いてきたので少しイラッとして、


「ああ、それがどうした?」


と反抗的な目で見ながら聞くと、


「…金払いな。」


と言うのでポカンとしていると、女性はいつのまにか短剣を取り出し俺の首元に当てていた。


「(ん?加速系の能力か?)」


と考察していると、


「…さっさと出しな。命までは取らないよ。」


と耳元で囁いてきた。

周囲を見ると女性の仲間なのか、他にも十数人が俺たちに剣を向けていた。

周囲の人たちはこちらを見ながらも


「またか…。」

「あの旅人も運が悪かったな…。」


と言うだけで助けに来るわけではない。

まあ別に、魔法の手(ルーア)でネアも俺も覆っているため怪我の心配も無いので、


「スミマセーン。ワタシオカネアリマセーン。」


と煽ると女性が血相を変え、


「…っ!?じゃあ死にな!」


と言うと宙に短剣が五本現れた。


「(今の短時間で五本出したのか?おおー、速い速い。)」


なんて思っていると、ビュン!っと俺目掛けて飛ばしてきた。

が、キンキンキンキンキン!とまあ俺の魔法の手(ルーア)の盾を突破出来る訳も無く跳ね返した。


「なっ!?」


と女性が驚いている間に魔法の手(ルーア)でネアを引き寄せ、一応手を握ると、


「行くぞ。」


と言ってギルド作成所の中に入っていった。

女性は追いかけてはこなかった。





中に入ると外から見た通り広く人も多い。

そして建物の真ん中に依頼を貼ってある掲示板があった。


「これが依頼か…。ん…?」


ふと上の方を見ると、ボロボロの依頼書が一つあった。


「よいしょっと。」


魔法の手(ルーア)でそれを手に取るとそこには、


自由の光(フブラ)のギルド長ギネル・レーズの確保。報酬は金貨百枚。依頼主ギルド作成所。』


と書かれており、特徴に赤色の髪と書かれていた。

俺は、


「へえー…金貨百枚か…。いいねえ。」


と言いギルド作成所の依頼係に、


「これ受けます。」


と言って依頼を受けることにした。

ギルド作成所の人は、


「そ、それは…。」


と言い、少しこちらを睨みつけた。

しばらくするとギルド作成所のマークを形どった判子を押した。

俺はその紙をそのままにし、ネアと共に外へ出た。

ドアがバタン!と閉まると、


「よお、ギネル・レーズさん。」


そこには先程の女性が、魔法の手(ルーア)レーダーで確認済みだったが、仲間と思われる数十人を連れて待ってくれていた。

すると彼女は、


「へえ、あたしのこと調べたのかい。…っく!!あんたは絶対殺し…。」


と言うがその途中で、笑顔の俺の


「バーイ。」


と言う声とともに、ブシュ!という音が鳴り響いた。

一瞬にして、女性含む数十人の両腕が吹き飛んだのだ。


「う、うわああああああ!!」

「ああ!ああああああ!!」

「う、腕があああああああ!!」


あちこちから聞こえる叫び声。まさに阿鼻叫喚。


「(うっわ気持ちわりい。でも仕方ねえよなあ…。)」


と、そんなことは気にせず、俺は泣き叫ぶ赤髪の女性の前でニヤリと笑い、


「ギネル・レーズさん、ゲットー。」


と言うと、魔法の手(ルーア)で女性を持ち上げドアを開け、ギルド作成所内に投げ込んだ。


ヒューン、ドシャ!


「…ひぃ!あ…ああ…。」


女性はまるで悪魔でも見るかの様に俺を見て来るが無視し、俺は依頼係に、


「ほらよ。さっさと百金貨寄越せ。」


と言って百金貨を貰い、すぐにそこを出た。




「(これでアイツも俺のこと怖がって近づいてこないだろう。鞄と服は…まあそれくらいはくれてやっても…。)」


と後ろを見ると、ネアが居た。

それも目を輝かせて。


「…。」

「(キラキラした目で見ながら)ふおー…!」

「なあ…。」

「…んぅ?」

「俺のこと…怖くねえのか…?」

「ブンブンブンブン(首を縦に振る音)!」

「(何でだよ…。)…宿屋に戻るぞ。」


そう言って俺たちは背後から聞こえる叫び声を退場曲に、宿屋に帰ることにした。




宿屋に戻る途中、せっかく金が手に入ったので少し店を回り、薬草と食器類、それから替えの服を買った。また、


「(俺があの依頼書を持って言った時のギルド係の顔…。ありゃあ裏で繋がってたのかもなあ…。)」


と考えていた。


そして丁度日暮れ時に宿屋に着いた。


「あ、おかえりなさい!旅人さん!」


と、これまた宿屋の女の子が元気に出迎えてくれた。

すると、


「ねえねえ聞いた?」


と言うので、


「何がだ?」


と聞くと、


「それがね、自由の光(フブラ)の人たちが逮捕されたんだって!しかも一人の男の子のおかげで!」


と言ってきた。

俺は軽く女の子から目を逸らし、


「(はは…。情報早え…。)ヘエー、ソウナンダー。」


と返して、そそくさと部屋に戻った。





部屋に戻ると、疲れたのかネアはすぐに寝てしまった。

俺は窓の外を見ながら、


「はあ…。あんだけやって怖がらねえとか何だよコイツ…。あーあ、また派手にやっちまったなあ…。ま、金はたんまりと貰えたし、次の町でゆっくりすりゃあいいか。それと…。」


とネアに目をやり、昼間のことを思い返しながら、


「コイツら亜人への国民の考え方がなあ。この宿屋の人は良い人だったからつい油断しちまってた。…面倒だけど、これからもコイツにも魔法の手(ルーア)の盾付けといてやらないとな…。」


と、少し亜人の現状を考えた。


「…まあ、亜人全体のことは俺にはどうすることもできねえし、今は自分のことだ。とりあえず王都に向かって職探しでもするかな。」


と考えていると、コンコン、とドアがノックされた。


「旅人さーん!ご飯お持ちしましたよー!」


と女の子が夕飯も持ってきてくれた様だった。


「…ふう…。ありがとう。今行く。」


そう言って夕飯を受け取り、


「おい、起きろ。飯だ。」


とネアを起こした。

食事の度にネアの世話をするのは嫌だったので、


「…今日はフォークとスプーンの使い方を教えてやる。」


と言うとネアは、さっきまで眠そうに瞑っていた目を見開き俺の前に座った。


「ふぉーく…!すぷーん…!」


「…。何でこんなことになったんだろうな…。…俺のせいか…くそ…。」



そうして今日は、終わりを告げた。







おまけ



「…おい。」


寝ようとベッドに入った時だった。


「…んぅ?」

「…お前のベッドはあっちだろ…。」

「んーーー!(枕にしがみつく)」

「…勝手にしろ。」


今夜は隣でネアが寝た。


「(寝づれえ…。)」

「スピー…。スピー…。ムニャムニャ…。」

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