第三話 忍び寄る暗雲
小鳥が鳴いているのが窓の外から聞こえてくる。僕は早く起きたのを自覚しながら、まだだるいからだを持ち上げてベッドの上から起きた。
「・・・・・・ふぁぁ・・・・んっ・・・っと」
時計をみれば、まだ4時を過ぎたところだった。欠伸をしてジャージに着替えた僕は、いつものトレーニングに出かけた。
◇◆◇◆◇
まだ朝日が顔を出し始めた頃、璃乃は家から一キロ離れた坂道にいた。
「・・・ここからかな」
準備運動が終わり、その少し急な坂道を見る。そこからクラウチングスタートの体制をとり、日が傾いて顔を照らした瞬間、僕は走り出した。
次々と景色が変わっていく。坂道の長さは約500メートルはある。その坂道を一分で下りきり、更にその坂道を走り上っていった。これを5周。実にハードなトレーニングだ。それが終われば、一キロの道を全力ダッシュ、家につく頃には朝日は完全に上りきっていた。
ドアを開けて、中にはいると誰もいない。お父さんは海外へいっており、帰ってくるのは年に一度あるかないかだ。お母さんは、小さい頃になくなっている。実質一人暮らしだ。
お風呂に入り朝食を準備していると、ピンポーンと、音が鳴った。
『・・・璃乃、いる?』
インターホンから聞こえてきたのは、雫の声だった。学生服をきて家の前にたっている。
「いいよ、入って」
お邪魔します、と律儀に挨拶をして入ってきた雫をリビングに入れ朝食を一緒に食べた。
「今日もお母さん家にいないの?」
「・・・ん、また、仕事が早いって」
「そっか」
「・・・ん、・・・・・・あっ、これ、ポストの中に入ってた」
「・・・・・・?」
そういって取り出したのは、一通の手紙だった。白い封筒に赤い薔薇のシールで止めてあるそれは、とても高級感漂うものだった。
赤い薔薇を外し、中を見る。すると・・・・・・、
「・・・・・・何にもはいっていないな」
そこにはなにもなかった。
「・・・ラブレターじゃなかったの?」
「そんな訳ないだろ?」
雫の質問に苦笑いで応えると、雫はそっぽを向いた。そんな雫を気にしつつも、白い手紙を見た。
なにも入っていないということに疑問を浮かべつつも、今は気にせずに、学校へ行く準備をした。
◇◆◇◆◇
通学路--
人が通ることが多くなってきたこの道は、今は学生がよく見られるようになってきていた。空を見上げ春の風を堪能しながらさっきのことを考えていると、横から声がかかってきた。
「・・・気になるの?さっきの手紙」
「ん?あぁ、それは、ね、手紙の入っていない手紙なんて初めてだからね」
冗談めかしてそう言う璃乃に、雫はくすくすと小さく笑った。
なだらかな坂道の上にある学校は、結構な距離がある。制服を着た学生が、汗を垂らしながら上っているのが目に見える。横には既に息を切らした幼なじみがいた。
春なのでまだ暖かい方だが、夏になると・・・・、と、考えようとしてやめた、・・・・・・絶望しそうだ。
◇◆◇◆◇
教室のドアをあけ、自分の席に座った。一時間目の授業の準備をしているといつものメンバー、健、花蓮、雫があつまってきていつものように喋っていた。
高校生活が始まって約一ヶ月、特になんということもなく、1日がすぎていくかのように思われた、あの事件が起こるまでは・・・・・・。
◇◆◇◆◇
六時間目、今日は、修学旅行の班を決めたり係を決めたりしている。
「はーい、それじゃあまず、委員長、前に出てきてもらえるかな?」
男の先生がそういうと、花蓮ともう一人の男が出てきた。
男の名前は、東光希このクラスの委員長で、人望が厚く、頼りがいのあるリーダー格の人だ。バスケ部で超モテモテ、テンプレだろうか。まぁ、そんな彼と花蓮が、僕のクラスの委員長だ。
委員長が喋っていた時に、それは唐突に現れた。何の前触れもなく。
「はい、じゃぁ・・・班のリーダーと、役割を決めて・・・・・・」
「おい!なんだあれ!?」
教室の中心、そこから水滴が水面に波紋を広げるようにその幾何学模様は、教室全体に広がっていく。
「っ!?・・・皆!教室からでなさい!」
クラスメート達が混乱する中、先生の一喝が飛ぶ。その瞬間、みんなの体が薄くなっていく。だが、僕だけが違った。白い光の粒が僕に纏わりつく。まるで、くい止めるように、あるいは別の場所へ、連れて行くかのように。
「璃乃っ!」
「りのちゃんっ!」
「・・・・・・璃乃っ!」
順に、健、花蓮、雫が僕の名前を叫ぶ。僕は三人に諭すように話しかけた。
「大丈夫だ、三人とも離れるんじゃないぞ?」
そう言うと、僕の意識は遠退いていった。
すいません。次回、異世界へ行きます。
誤字脱字等ありましたらお願いします。