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8話 不如意

 次の日、勇者の店に行くことにする。

 一応、昨日わかったことで、伝えれる範囲のものを知らせて閉店させないようにしないとな。

 さて、どこまで伝えるのが最善か。実は領主が黒幕だったーなんて言えないからなぁ。いや、黒幕ってほどでもないか。

 そう考えながら歩みを進めていると。


「マオ様、少しよろしいでしょうか」


 側近Aが話しかけてきた。


「なんだ?」


「マオ様が勇者に対して、できる限り穏便にするように、気をつけておられるのは承知しております。ですが、私はあの勇者と手合わせをしてみたいと思っております」


「なに! やめておけ、殺されるだけだぞ。……まて、なぜ急にそんなことを言い出した?」


「前回の勇者との戦いで予想外の戦闘スキルを使ってきたことがあります。事前に手合わせをすることで、少しでも相手の戦闘パターンを把握し、もし、危険なスキルを持っていた場合、今後に向けて対策を取れるようにしたいと思っております。後、本音を言わせてもらえれば、強者と戦わなければ自分を磨くことが出来ないので、戦ってみたいってところです」


 結構ぶっちゃけてきたな、側近Aがこうも愚直に本音を言うとは思わなかった。

 ははーんなるほど、前回の勇者との戦いで、全力を出せる相手として勇者をみてるってわけか。

 そりゃ勇者だ、いくら側近Aが強いとしても勇者には勝つことができないだろう、とはいえ、側近Aも簡単にはやられたりしないはずだ。

 そうなると、勇者の持っている戦闘スキルのどれかを見れるかもしれないってわけか。悪くない提案だ。

 しかし懸念材料はある、側近Aが本気を出しすぎて、魔族であることがばれてしまうかもしれない。まあ、ばれたって別に構わない、ばれたら逃げるだけだ。最悪なのは、勇者が手加減しきれなくて側近Aが倒されてしまうことだ。一応、側近Bと俺がカバーに入れるようにするくらいしか対策はないが。


「ああ、そうだな、まあいいか。相手次第だが、一応勇者に訊いてみておくよ」


「はい、ありがとうございます。しかし、マオ様が以前におっしゃっていた危険なスキルがなければいいのですが」


「ふむ、さすがの俺でも対処しきれないものがあるからな」


 そう、転生の秘術で対処できない技があった場合に困るのだ。やっかいだと思われるのは封印系の技だ、封印だと殺されていないので、復活できない。あとは憶測だが、魔王を討伐していないので勇者が弱体化しない可能性が高い。きわめて危険な状態が続くかもしれないのだ。

 ほかには精神に及ぼす効果のある技なども注意が必要だ。俺の意識が乗っ取られて自分で転生の秘術を解除してしまうかもしれないからだ。

 後は吸収、無効、融合とかか、対策はしているが、なにぶん勇者のやることだ、どんなからめ手でくるか予想もできんからな。


 対策といっても有効かどうかまではわからないが、転生の秘術は俺の全魔法力で構成されている。打ち消したり吸収するとしてもそれ以上の魔法力が必要になるはずだ。俺以上の魔法力を持ってるかどうかまではわからないが、もし持っていたとしても、大量の魔法力を討伐以外の目的で消費するのか? ってのが俺の考えだ。普通は攻撃に使うはずだ。何かしらの強化魔法程度だと考え、少ない魔法力で吸収や、無効化しようとしたとしても効果は出ないようになっている。だからといって安心はできないがな。

 俺は異世界の勇者と融合できるなら知識を得られるから望むところだ。だが、さすがに初手で融合のような技を使い出すとは思えない。それに融合では魔王討伐とはいえないだろう。


 勇者がそんな変則的な技を使用する前に倒されてしまうのが一番いいのだが、前回のこともあって戦い方をもう少し考えておかねばならなくなったのだ。それもあって側近Aの提案はなかなか良いものだとおもう。




 そうこうしてる内に勇者の店の前まできたのだが。


「どういうことだ、これは」


「うーんとぉ『都合によりしばらくお休みさせていただきます――店主――』ってかいてありますねぇ」と、側近B。


「そんなことはわかっておる、定休日とかなら出直すが、しばらく休むってことは次いつ開店するのか目処がたっていないってことだ」


「気配を探ってみましたが店の中には誰もいないようです、マオ様」


 これはもしかしたらマズイ方向に向かっている気がする。


「とりあえず、ここにいても仕方がない、いったん宿屋にもどって対策を練るぞ」


「しっかし勇者ってぇ、本当ぉに行動が読めないですねぇ」


 まったくだ、適当に状況を話してしばらく待てば、名産品を作れるようになることを説明する。それからゴムの木の捜索に出かけることを承諾するついでに側近Aの腕前を見てくれ、と言って手合わせを申し込もうと計画してたんだがなぁ。

 ゴムの木の捜索もちょっと楽しみにしてたんだけどな。

 今はもうゴムの木を探そうとする気も起きなかった。まあ、後で諜報部隊にでも探させるか。


 やっぱうまくいかないもんだなあ、どのような策を用いても勇者を思ったように行動させることが出来ない。最終的には勇者と呼ばれるものは魔王討伐にやってくるのだ。早いか遅いかだけの違いだ。今回が成功すれば前例を作れたんだが無理そうだな。


 宿屋にもどり、消音魔法で声が外に漏れないようにしてから相談する。

 俺としては勇者が商売をあきらめずに続けてくれればいいんだがな、この街じゃなくて中央都市でもいい、しがらみや妨害がないところで異世界の商品を売り出してくれたらお得意先になってやるぞ。


 まあ、そんな希望的な展望は勇者次第だからな、予測不可能なうえに見張りをつけたりするのも危険すぎてつけていないから定点観測的なことしか出来ていない。いや、今にして思えばつけるべきだったな。適当な人族を傀儡にしておけば魔族と気づかれにくく出来たかもしれないな。

 今から聞き込みなどをして勇者の行き先を調べるのはさすがに危険だ。

 とりあえず勇者についてはしばらく様子見かな。そんな風になことを相談して決めていく。


 あーあ、ここに来てまだ何も異世界っぽい商品を手にできていないんだけどなぁ。何故こうもうまく行かないんだ。 やっぱあれかなあ、勇者と魔王は絶対敵対するようになってるとかがあるとか? そういうのは信じたくないんだけど、うーん。


「やはり、あの辺境貴族を間引いてしまっていた方がよかったのではないですか?」


 側近Aが少し感情的になっていた。勇者と手合わせするのができなくなったからだろう。そんなに戦いたかったのか。俺は戦いたくないぞ。

 側近Bの空気感が……ぱない。人族の街に来てる間は眼鏡っ子にしてキャラだちさせるか?

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