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7話 情報収集

 さてと、それじゃあ情報集め、してくるか。


 あの後、勇者にゴムの原料になる木の事を詳しくきいた。なるほど、樹液を集めるのか、ちょいっと忍び込んで盗み出す、なんてことが出来ないものだったか。樹液を集めさせた後でそれを盗むことは出来ても、相手が集めてなければ出来ないしな。

 そういう訳で、下っ端貴族の屋敷に向かった。事前にここいら担当の魔族の諜報部員にも情報をもらっておく。

 報告書を見てみたが、まあ、ありきたりな貴族だな。

 どちらかといえば、怠けるタイプの方で、それほど守銭奴ではないようだった。やはり黒幕の命令でやってるのが濃厚だ。


 側近Aは、さっさと間引いてしまえばいいって感じだった。まあ、確かにな、それなら簡単で手間いらずだが。まあ、間引くとすれば黒幕ごとでないと意味がない、俺の目的は勇者の店の継続だからな、間引くことが目的ではないのだ。


 側近Bに隠密用の魔法を掛けて貰い、誰にも気づかれない様にして堂々と屋敷に潜入する。一応、側近Aにも気配察知してもらって、警備している者に出会わないようにしていく。

 いくら人族の屋敷とはいえ、こんな方法で潜入していくことなんて本来しない。あたりまえだ、潜入調査するならもっと重要施設がある場所か、権力者のいる場所に行くからな、当然、そう言う場所にはそれなりの防護策が張り巡らされてて、隠密用の魔法程度じゃ潜入なんて出来ないのだ。


 こんな辺境の下っ端貴族の屋敷に、そんな防護策がされてるわけもなく簡単に潜入できる。

 勇者が相手ならものすごく慎重に行動するところだが、辺境貴族相手にそこまでする必要は無いので、直接問いただすことにした。

 リビングらしきところでくつろいでいたところに、いきなり声をかけてやる。当然隠密魔法の効果もその時に切れる。


「くつろいでるところすまないが訊きたい事があって来た」


「うわっ! びっくりした! 何だ君たちは。どっから入ってきた」


 その辺境貴族は、面白いほど飛び上がってソファから転げ落ちた。大成功!


「俺たちが何者かは、まあ、想像にお任せしとく。誰にも気づかれずにここまでこれる存在だと思ってくれるだけでいい」


 おそらくただの冒険者や、一般の人族なら、いきなりあらわれた怪しい俺たちを排除しようと行動すところだろう。しかし、貴族ならこう言うだけで俺の思った反応をしてくれるはずだ。

 貴族の世界は、腹の探りあい。相手が何を考えてるのか、目的は何か、さっき俺が言ったことについても色々考えるはずだ。でなきゃ貴族なんてすぐに他の貴族につぶされてしまうのだ。

 下手なことを言って、それが実現不可能だったらすぐに責任を追及されて何かしらペナルティを受けてしまうそうだ。そういう世界で貴族をやっているこの人族はそれなりに考慮できるだろう。出来ないのならとっくに衰退しているはずだ。

 中にはちゃんと教育できなかった子供が家督を引き継いだりしたところを、他の貴族にねらい打ちされたりして一気に衰退することもあるそうだ。


 さっき俺が言った言葉には、俺たちが何者かは名乗らないが、相当の実力者で、何時でも暗殺や諜報が出来る存在であること、姿をみせて話し合うつもりであること、他の人族がいないところで声をかけたことから隠密性の高い内容であること、がわかると思う。ていうかわかれ。でないと説明が面倒だ。


「ひいぃ」


 急に怯えだす辺境貴族、お、状況が理解できたのかな。


「別にどうこうするつもりはない、訊きたい事に答えてくれれば俺たちは別のところに行く」


 まあ、これで察してくれ。お前以外にもこうやって訊きに回る予定がある、と。そして嘘を言ってたらバレる可能性もあるってな。

 辺境貴族は真っ青になりながらも、わかった。とつぶやいた。なかなか理解力があるやつだ。


 まずはゴムのことに関して訊くことにする。


「この街に珍しい商品があると聞いて入手しに来たのだが素材がなくて商品が無かった、ということだが、なぜそういうことになっているのか?」


 辺境貴族は、やはりって感じの表情になった後、遅かったか……。とつぶやいた。

 よーし詳しく話せ。





 色々訊いていくことでだんだん真相がわかってきた。

 結論だけ言うと、中央都市にある大物貴族にゴムの存在をかぎつけられないようにすることと、名産品としていくにしても下準備が整っていない新製品なので、他の職人や商人ギルドなどの根回し、既得権益などの介入対策、ゴムの製造方法をめぐるトラブルなど、大物貴族が勇者を引き抜きに来ることも考えられるので、しばらくおとなしくしてもらいたかった。ってのが真相だ。

 で、黒幕は誰かっていうと、この街の領主だった。領主的には勇者が引き抜きに合うのだけは阻止したかったらしい。商売のじゃまをするつもりはなく。準備さえ整えば囲い込みたかったそうだ。

 ゴム以外の商品の売買をする分には何も問題なかったから、勇者が店じまいまで考えてるなんて思ってなかったらしい。

 おそらく貴族特有の遠回しな表現で勇者に伝えたんだろうが、まったく伝わってなかったみたいだな。普通に怒ってたからな。考えてることが伝わってないのはお互い様のようだが。


 解決方法というか、領主の考えだと、中央都市にゴム製品を献上しに行き、有力者に名産品として認めてもらう。その後、原材料がこのあたりに自生している樹木であることを説明し、樹液が原料なので伐採することが出来ず、植樹や栽培するにも気候があわないと難しいので、名産品として各地に製品を売ることが出来るが製造自体はこの街だけのものとさせて欲しい。と交渉しようと考えてたそうだ。

 こうしておけば、ゴム製品の製造法で勇者を引き抜こうとする者に牽制できると判断したらしい。

 さらに発明者である勇者の存在をあいまいにするために、他の人材にも製造させようとしていたがうまく行かなかったってところか。

 正直、どうでもいいことだった。ただ呆れて力が抜けていくかぎりだ。


「あー、俺たちは珍しい商品さえ手に入れば何もしない。名産品にでもなんでも好きな様にしていいから、店じまいにだけはさせないように何とかしてくれればいい」


 そのあと、俺たちのことは黙っていろ、と言って辺境貴族は解放した。


 俺の今日の感想は、人族って面倒だな、の一言に尽きる。

 もう日がくれる時間なので宿屋に向かうことにした。途中で側近Aが領主のほうにも行くんですか? と訊いてきたが、面倒なのでヤダっと一言いっといた。その様子を見てた側近Bは、ヨシッっと一言だけ言っていた。なにがヨシなのか俺にはさっぱりわからん。

 魔王が子供っぽいことを言ったりしただけで側近Bは喜びます。

 そして側近Bが落ち担当になってきてる。セリフないのに。

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