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5話 店内にて

 すいません、ちょっと短めです。

「いらっしゃいませー」


 ちょっと緊張気味に店に入ったら、いきなり声をかけられた。これは歓迎されたのか? まさか、待ち構えられてたなんてことはないだろうな。

 しかし、声をかけられたからには何か応えなきゃな、さて商人ならどう応えれば無難かな。


「ああ、えっと、この店で取り扱ってる商品を見せてもらいに来たんだ」


「これはこれは、かわいいお客様やね。それに……」


 おそらく勇者だと思われる人物に、品定めされてるようにまじまじと見られる。まずいな、正体がバレる前に撤退するべきか。


「身なりもええし、護衛の方も腕が立つようやね。どっかの貴族様なんでしょうか?」


「いや、そんな大それた者じゃないよ。商人の息子で、あちこちの商品を見て回ってるんだ」


 貴族や王族のお忍びだと思われたようだ。少し安心する。

 側近Bが用意した服だが、素材や作りがよいので、そう思われたんだろう。

 ん? 魔王だから王族なのか? 違うな、魔族の王は世襲制ではない。原理はわからんが、ある日突然勇者のように覚醒して魔王になるのだ。俺のときはそうだった。


 そういや最近の勇者の末路は、よく王族や貴族にだまし討ちや毒とかで死んでいたな、勇者の弱点は王族や貴族なのかもしれないな。


「あら、じゃあうちの商品をゆっくり見てってくださいな。って言いたいんやけど……」


 そう言って勇者は店の中を見回す。俺もつられて見回した。

 思ったより商品が少ない。そういや入手するのが困難なほど売れていたんだったか。


「……ちょっと難儀なことに、原材料の確保に手間取ってしもて」


「それじゃあ、しばらく商品の入荷はないってことなの?」


 折角ここまできたのに物がないのはさすがにつらいな。商品の説明とかを聞きながら、どうやって異世界の話に持っていこうかと色々考えてたんだけどなぁ。

 こうなったら少々危険だが、滞在期間を延ばして商品の入荷次期がわかるまでこの店に通いつめるか。

 うまく行けば異世界の話が聞けるかもしれないしな。

 そんな風に思っていると。


「素材の入荷の目処がたたへんからそろそろ店じまいかなぁってとこなんよ」


「え!」


 何なんだよ、何でこうも予想を斜め下に持って来るんだよ勇者ってやつは。この店を継続させていれば魔王討伐に来ないなんて言ったらこの有様だ。結局は近い未来に討伐に来るってことかよ。よくあるそういう運命、てやつかね。ほんと散々だ。


「あーあ、珍しい商品があるって聞いて来たのになぁ、もっと早く来るんだった」


 もうほんとがっかりだ。


「その様子やと、ほんまに貴族やないんやね」


 勇者が驚いたような、少しとぼけた表情で話しかけてきた。


「たしかに貴族なんて者じゃないぞ」


 貴族じゃなくて魔族だからな。


「そないな認識阻害のフードやら、見た目を変更できる指輪やらしてはるから、てっきり貴族がうちの様子を見に来てるもんやと……」


 やっぱ勇者は貴族が弱点なのか。いや、考察は後でいいだろう。それよりも。

 あんまり貴族を良く思っていないそぶりと、店じまいするかもしれないってのがなんか関係あるのかな。ないわけないだろうなぁ、絶対思わせぶりのセリフじゃないか。うちの商品が欲しいならその貴族を何とかして欲しいとか言い出すんだろうか。

 しかも俺の持ってる装備品の効果をこの短時間で見破ってるし、側近達の強さも理解してるっぽい。


 大方、貴族の嫌がらせで素材の入手に制限をかけられてるとかで困ってるところか。そこに、貴族ではないが、それなりの装備品をもってて腕の立つ護衛がいる俺たちが現れた。ってところだ。


「ちょっと相談に乗ってくれたらうちの商品を融通してもええんやけど、どないかな?」


「相談にのるだけでいいのか?」


 予想してたような展開だ。だが、勇者にはこの店を継続してもらうのが俺としても都合がいいからな。邪魔な貴族を間引いてこの問題が解決するなら、いくらでも間引いてやるさ。


「知り合いとかにも声、かけてるんやけどねぇ。この際仲間は多いほうがええかもしれんし、うん。そやね、うちらの仲間になってくれへんやろか」


 勇者の仲間になれと勧誘されてしまった。それは俺のセリフではないのか。まさかこんなことになるとは思わなかったな。しかし、今まで何度か勇者に仲間にならないか? と訊いてきた俺が、勇者に仲間にならないか? と言われることになるとはな。くくく、面白い。さすがは異世界から来た勇者だな、今までの勇者とはまったく違う。

 側近達も何やら微妙な表情だ、特にアトモンこと側近A。予測不可能な事が起これば確かにそうなるよな。さすがのレタ子こと側近Bでも困惑気味だ。

 基本この二人は人族と会話をしようなんてこれっぽっちも思ってなく、会話はたいてい俺任せだ。だから俺がどう返事するのか気になったようだ。


 俺の返事は決まっている。

 俺は不敵な笑みを浮かべ、まっすぐ勇者の方を見、答える。


「うん、断る!」


「ええーー!?」


 はんなり? な勇者が登場です。

 一応女性ですが、魔王は人族の性別や、名前に無頓着なので。

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