08話 戦争が始まる
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隣国の帝国が宣戦布告!
デダーブ平原にて戦いが開始される模様。
冒険者組合では工兵を募集しています。
土魔法を使える者は優遇採用!戦闘なし。
能力によっては日給50,000ギル!
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「ボイグラーズさん!これ!凄く稼げるじゃないですか!」
「ああ、戦争だしな。明日、街の外で採用試験があるな…俺は薦めないが」
「おい、モグラ叩き小僧、お前それ受けるのか?辞めとけ、死にいくようなものだぞ」
後ろから見かけた事がある冒険者が声をかけてきた。
「どうしてですか?50,000ギルですよ?戦闘なしって書いてあるし、工兵なら危なくないのでは?」
「結局、戦に負ければ、工兵だからって関係ねぇんだよ。捕まれば敵に首を切り落とされるぞ」
聞くと7~8年前も同じように募集があり、この街から出兵したのは100名程で、生きて帰ってきたのは10人満たなかったという。亡くなった場合はその対価として報奨金が出るらしいが…。
それから冒険者組合の工兵募集の張り紙を見ながら悩んでいると、見知ったベテラン冒険者が色々とアドバイスをくれる。殆どが辞めておいたほうがいいという意見だ。
聞くと戦争は1ヶ月ほど続く予想らしく、その間の食事などの手当ては全て出るという。じゃ、行くのは辞めておこうと判断してその日は結局、久しぶりに噛みつきモグラを狩った。現在所持金は1,320,000ギル。そろそろ装備を買うか。
翌日は朝から噛みつきモグラ狩って、冒険者組合に行くと、ボイグラーズさんに呼ばれて会議室に連れて行かれる。広い会議室にはガックリとうな垂れている見た事のある冒険者が30~40人いた。
「アルフ悪いが、お前工兵で行ってくれないか?この街の冒険者組合から何人か自主的にでると思ったのだが、実は人数が満たない。この街も冒険者組合も国から援助されている以上は、規程の人数を出せという事だ…本当にすまない」
そのまま生返事をして街の外に連れられて行くと一般の市民もいて、皆がっくりうな垂れている。その先に壇があり、恰幅のいい金属鎧を着けたオッサンが声を荒げて説明をしていた。
「…よって、我が国を守るのは民の務め!これより工兵の適正試験を行う!良い成績のものは班長になれるぞ!」
「なにが民の務めだ、どうせ戦に負けたら一目散に逃げるくせに」
ふと横にいた白髪混じりの年配の人が、呟く。
「え?どういう事ですか?」
俺はその年配の人に聞く。
「あ?ああ、坊主も若いのに運がないな。俺は前回の戦争にも俺は徴兵されたが、その時は酷いものでな。指揮官だけは先に逃げて、前線の工兵は殆どが敵に捕まって処刑されたんだよ。俺は運よく本営からの輸送で助かったが…」
「戦闘なしって書いてありましたが…?」
「ああ、確かに戦闘はしない、それは兵士の仕事だ。だが危ないのは変わらないさ」
その後、年齢のおっさんこと、ビドリブさんと会話する。要は危なくなったらすぐ逃げろと念を押して言われる。
「次、お前!名前!冒険者か?」
「は、はい、アルフといいます。土魔法を少し使えます」
その後適正試験を受けて、俺は土魔法が使えるという理由でベロデ義勇第17工兵隊の班長となった。班員は俺を含めて5名。先程のビドリブさんも同じ班だ。他の3人も同じような年配者。
「アルフ、いいか?班長だからって気張るなよ?危なくなったら逃げるぞ。いいな?」
「は、はい、死んだら意味ないですしね」
「そうだ、その通りだ!」
「アルフ班長……っても、俺の子供みたいな歳だな」
「あ、どうも面倒みてくださいね」
「あはは!そうか、まぁ生きて帰ろうぜ」
俺達は翌日には徒歩で50日以上かかるデダーブ平原へ向った。