07話 魔法を覚える
デロンさんの馬車屋を辞めてから早2ヶ月。俺は毎日休まず噛みつきモグラを狩っている。ベテランの冒険者には遥か及ばないが、それでも俺は午前、午後と合わせて毎日60匹近く狩っている。毎日手押し荷車を押して南門から出ていき、噛みつきモグラを狩り、荷車一杯になったら冒険者組合に向かい換金をして、また畑に戻り夕刻まで狩る。
お金もさすがに多くなっていたので、冒険者組合に預けているが、その額2,500,000ギルに届きそうだ。本当にならもっと溜まるはずだが、草干し用フォークも爪が折れたり、宿屋のちゃんと働いているだろ?と値上げされたりと中々、思ったようには行かない。それでも半年前と比べれば雲泥の差。
「普通、冒険者ってやつはアルフみたいに真面目じゃないさ、ある意味ギャンブルみたいな職業だからね。アルフを見ていると、まるで毎日休まずに畑に行く農家のようだ」
そんな趣旨の事を冒険者組合では良く言われる。「馬車冒険者」から「農家冒険者」に揶揄されるのが変わっただけ。冒険者組合でも良く馬鹿にされるが、真面目に働く俺を見てそこまで酷くは言われないが。
そんな俺だが、今はもっと稼ぐために方法を模索している。ひとつは魔法を覚える事。魔法学校へ行きたいが卒業するまで時間もかかるし、聞くところによると学校へ行っている間は仕事なんてできないような趣旨を聞いた。
それから1ヶ月後、噛みつきモグラの討伐をやめて、俺は魔法道具屋のマリースさんの所で給料なしで働く事にした。
マリースさんの所では魔法図書や魔道具の整理。素材となる魔物の解体。マリースさんは何歳だか分からないが、非常に高齢で、たまに言葉が聞き取れないが、的確に指示を出してくれる。一緒に働いているのはベドルさんという若い女性で、エルフ族の血が混じっているらしく耳が細長く身長が高い。魔法…この世界に転生して憧れてやまない。魔道具を整理しているときにベドルさん聞く。
「種火とか簡単な魔法なら、自己鍛錬でいけるよ。自分の中のマナを感じて想像するだけだからね」
それから仕事の合間にベドルさんにアドバイスを貰いながら、夜に訓練し、休日は街の外で訓練をして2週間程で、身体から力が抜けて、指先に小さな炎を出す事に成功した。成功したときの感動をベドルさんに伝えたが、ああ、そう?という感じで呆気なすぎた。
日々、鍛錬を続けてそれか1ヶ月後には拳の大きさの炎を手に出して、投げつける事に成功した。不思議な事にこの炎は投げつけるとありえない速度と距離を飛び、物に当たると爆発をする。魔物を殺すほどの力はないが、引火したりすれば毛足の長い魔物は結構な威力になるだろうか。
それから暫く頑張ったが、炎はそれ以上大きくならず、ベドルさんに聞くと属性がないのでは?という事で、水系、風系などそれぞれ頑張ったが、どちらも芳しくない。水系は出せるには出せるが、量は多くだせるが、水鉄砲ほどの威力しかなく、風系の魔法はそよ風しか出せなかった。
「アルフくんねぇ、そんな皆が覚えられたら苦労しないよ。でも、火系の魔法は凄いじゃないの?」
この世の中にはいくつか火・水・風・土などいくつかあるらしい。ちなみに雷は?と聞くとその魔法は伝説らしい。そうなのか…。
最後に残されていた土系の魔法だが、落とし穴や野営に利用されるらしくあまり人気がないという。土系の魔法も俺は鍛錬した。地面に手を当て窪むようにイメージをする。体からスッと力が抜けるような感覚があるとボコと目の前の地面が50センチぐらいは窪む。地面に手をかざして50センチ窪んでもなぁ…。
だが、この土魔法だけは火や水、風と違って毎日鍛錬しても、まったく限界を感じなかった。2ヶ月訓練して、いまでは3メートルぐらいの落とし穴がほれるようになっていた。
魔法の才能も土魔法だけかと、来月にはマリースさんの魔法道具屋をやめることした。そろそろ稼がないと。
そんな時、俺にぴったりな特別依頼が冒険者組合に張り出された。