06話 馬車冒険者
どうもアルフです。
手持ち金48,500じゃロクな武器を買えないでドン詰まりです。とりあえず足の指喰われては困るので、防具屋で爪先と靴底に鉄板入りの厚皮長靴を購入。価格は12,000ギル。さすがに素手じゃ無理で、まだ辞めていないデロンさんの馬小屋から干し草用フォークを1本借りた。これ武器になるのか分からんが、ブッ刺せば噛みつきモグラでも死ぬだろう。道具屋では捕まえたモグラを入れる麻袋も買う。これが、700ギル。
屋馬車のデロンさんは昨日ミータルから帰ってきたばかりだから、数日休みでいいよと言われている。暫くは馬車屋で仕事しながら、冒険者。いや、冒険者やりながらアルバイトで馬車屋か。金がないから仕方ない。現在の所持金は35,800ギル。宿屋が3,000ギルで一食しか出ないから食事を入れると稼がないと10日も持たない。
これは辛い。が…頑張れ俺!
依頼書を見ながら街の南門から出て、20分程歩くと簡易な柵のある畑に辿り着く。見ると地面がモコモコ所々動いている。なんだ?これはと草干し用フォークを思いっきり地面に刺すとギィーと声を上げて子犬ほどの大きさの噛みつきモグラが飛び出て俺の顔面に飛び掛って来た。瞬間的に避け振り返るとモグラは血を流して更に飛び掛ってくる。
思わず目を閉じてフォークを突き出した。
ズンとフォークが重くなり見ると噛みつきモグラはギィギィと声を上げて動かなくなる。
モグラからフォークを抜き、先でつんつん触る。
どうやら仕留めたようだ。
血がついて鈍く光るフォークを見る。
あれ?意外と凄い武器じゃないか?これ。
とりあえず1匹800ギル!ガンガン稼ぐよ!
朝から頑張って昼までに31匹を仕留めた。要領が分かれば簡単だった。モコモコと動く移動先のほうからズップリと思いっきりフォークを差し込めば動かなくなり、テコの要領で持ち上げると絶命したモグラが出てくる。
一度、まだ生きていて噛みつかれそうになったが、注意していれば問題ない。
意気揚々と袋に入りきらないモグラを繋げて引きずるように街に戻る。冒険者組合につくと早速受け付けのボイグラーズに声をかける。
「おいおい、裏の回収の持っていけよ、血が滴っているじゃねぇか」
「あ、すいません、裏ですね」
裏に持っていくと次はその場で血抜きしろと注意を受けて、引渡し書を貰い、受付に行くと引渡し書を交換で24,800ギルを受け取る。
これはいい!これなら馬車屋で一日3,500ギルより稼げる。
「ボイグラーズさん、この噛みつきモグラって農家の人でも仕留める事できるのでは?」
「まあ、そりゃそうかも知れねぇが危険だろ?それに魔物は俺達じゃ理解できない行動もする。アルフも気をつけろよ」
注意を受けたが、俺は再度、畑に戻って夕方まで噛みつきモグラを狩る事にした。
結局その日は暗くなるまで狩りつづけて、合計61匹、48,800ギルを稼いだ。
現在の所持金は84,600ギル。
うん、だがまだ片手剣も買えないで日暮し状態だ。
それから5日間、ひたすら噛みつきモグラを狩った。いくら狩っても出てくる噛みつきモグラは打ち出の小槌のように思ったが、冒険者組合で聞くと1匹800ギルのモグラを狩り続けるのはアホだといわれる。森狼なら1匹30,000ギルはするのだから当然とはいえば当然。
現在の俺の所持金は230,000ギル。一振りの剣を買ったら喰うのにも困る状態には変わらない。ちなみに俺が愛用している干し草用フォークはお値段16,800ギル。馬車屋で借りたフォークは6本爪だったが、現在は自分で道具屋から爪の太い3本爪を買った。資金不足で鍛冶屋や武器屋で買えない所が辛い。
それに冒険者組合や南門の兵に「馬車冒険者」とか「モグラ叩き小僧」と馬鹿にされるが、あまり頭にもこない。人間お金がかかっていると結構、我慢や根性が沸くものだと思ったりした。
それから3日馬車屋で働き、3日休んでモグラ退治を繰り返し、1ヶ月後には“これは稼げる”と確信して馬車屋のデロンさんに馬車屋を辞める旨を伝えて、俺は冒険者専門で働く事にした。