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50話 拿捕

撤退した敵兵を見て、俺はその事を皆に伝える。


目の前が地面は、大きく陥没している。あれだけゴーレムを呼び出せば、そうなるか。それでも引き続きゴーレム兵を可能な限り呼び出して、生き残りの兵と数両の蜘蛛のような足をつけた戦車を運ぶように意識する。木々の間に見える空が明るくなってきた時、ゴーレム兵が帰ってくる。



連れ帰った敵兵は13名。戦車は2両。


「き……貴様が……ゴーレム使いか?」


拿捕した敵兵がそう苦しそうに言う。

同行している騎士が兵士の首に剣を当て尋ねる。メテーレ達もそれぞれ得物を持ち、敵兵を脅している。もちろん、筋肉ゴーレムも。あ……こら、爪で敵兵を突くのはやめろよ。ゴーレム3体が敵兵を囲い爪でツンツン刺している。恐怖からか兵士は失神して倒れる。するとゴーレム達は、その横の兵士へ移動して、同じように囲むと3人でツンツンして、失神させていく……何をやっているんだ、お前ら……。


「なぜ、貴様らの目的はなんだ?」


騎士は剣を当てている敵兵の1人に強い口調で尋ねる。


「知らん……たとえ知っていても、言えるか!」


「ほう、見上げた心意気だ。だが無理でも言ってもらわないとな!」



俺はそれを横目に戦車に興味津々だ。既に開いているハッチ部分から中を覗き込む。計器らしきものはなく、レバー状のものが2つあり、3人程が乗れる広さだ。そして戦車の前方には小型の砲のようなものが付いている。どうやって操作するのだろうとじっくりと観察する。


ふと後ろで騒がしいので、振り向くと、騎士が尋ね始めている敵兵も、ゴーレムが敵兵を囲む。


「え?嫌だ!やめてくれ……!」


ゴーレムは指先でツンツンしながら、彼の首を両手で持つ。


「や!やめくれ!首をもぎ取らないくれぇ!」


敵兵は叫ぶように言う。


騎士がこちらを振り向き聞いてくる。


「アルフ様、ゴーレムが……」


答えていた敵兵は、ヒィィと叫び、そのまま失神する。それじゃ、聞けないだろうよ。ゴーレムよ……。結局、その後、敵兵を無理やり起し、脅しながら聞きだした事は街にいる魔導士を捕らえろという事だった。つまり俺か……。やっぱり過ぎる。


戦車については出発前に色々と調べたが、操作どころか起動も出来なかった。ただ砲の部分の構造はメテーレ達が説明してくれて理解できた。魔力をこめた水晶を弾にして、小規模の火魔法を与えると、爆発するらしく、そのまま飛んでいき、着弾すると水晶自体が爆発するという。王国にもこれに似たものがあるらしいが、非常に高価なので、あまり実装されていないという。メテーレも矢の先にこれと同じようなものをつけて攻撃する武器を数回取り扱った事があるというので、内部に残っていた水晶を頂戴した。


この敵兵はどうしようかと悩んだが、首から下を地面に埋めた。魔物の殺されてしまうとは思うが、こっちも命が掛かっている……なむさん。


そのまま俺達は白道を西に向う。


それから3日は問題なく進み、4日に昼前に海が望める崖に辿りついた。この世界の海を見るのは初めてだ。遠くまで続く水平線。鼻につく潮の香り。聞こえる波の音。


馬車を止めて、俺は一人駆け足で海の見える場所まで来る。そして想う。



このまま海の近くで、騒動が治まるまで生活してもいい。そうだ。どこか無人島でもないか?そこで過ごすのはどうだろう。騎士は邪魔なので、お帰り頂いて、メテーレ達と無人島で過ごすんだ。そうだ。そうしよう。あなた、今日は魚介のスープですよ?ああ、上手いな、これは牡蠣か?この世界でも食べるのか。ほう、これは精が付きそうだ。今夜はこの精を放出すんぞ!まぁ、あなたったら……そんな顔を赤らめる彼女の肩抱いて……。


「メテーレ!ビライラ!ミザラ!俺達で無人島に……」


振り返り彼女達に伝えようとすると、異変に気がつく。

彼女達の首に刃物を当て、俺達を囲う敵兵……え?


「妙な動きはしないでくださいね。既に完全に囲んでいますから。私はグザバード・バーミリロ魔法王国、魔力管理省から来た執行者のデガービです」


いつの間!?ゴーレム達はどうした!?と見ると3体のマッチョなゴーレムは手のひらを上に向けて、どうしようも無かったと意識が伝わってくる。突然現れたという。転移魔法か?なんだ?15名程の敵兵が俺達を囲んでいた。


「先にこちらの望みを伝えますね。魔導士殿、私と一緒に来てくれれば、彼女達は無事に解放します」


騎士や彼女達は心配そうにこちらを見つめる。デガービの言う用件は、このまま俺は彼らをついて行けば、開放し、街に進攻した軍も引くという。うっすら彼女達に当てられている剣が薄皮を切り込むのが見える。


俺は言う。わかったと。


ゴーレムを消してくださいと言われて俺は言う通りにする。敵兵の一人が俺の腕を掴み何かじんわりと光る石のついた手錠のようなものを付けられて、背中をドンと押されて歩かされる。その先には地面に光る模様なような場所。


後ろでメテーレ達が叫んでいるのが聞こえる。そのまま俺はドロっとした空気に押される感覚を受けて、目を閉じる。そして目を開けると、森ではなく、まったく違う場所にいた。


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