48話 世界大戦のはじまり
グザバード・バーミリロ魔法王国の一室で各省の代表が顔つき合わせて話す。
「では、執行官は殺されたと見て間違いないのだな?」
「はい、状況から間違いないかと……」
「で、そのアルフ魔導士は、騎士2名と女性3名を連れて、この街にいる……と?」
彼らは机にある地図を見つめる。
「考えは分かっておりますぞ!ですが、彼は英雄とされているらしいではありませんか!」
「英雄もいつかは死ぬ。そうでしょう?それともゴーレムが怖いのですかな?情報省と魔法省は?」
「ふん!片腹痛い英雄?ただのゴーレム!ただの泥人形!何を臆するのか!我が魔導装甲兵団の足元にも及ばん!」
「では、決まりましたね。良い行いは、急いで行え……ですかね」
それを一番奥の席で聞いていた国王ヒアンブーは言葉を放つ。
「では、許可!急いで行え!」
その日、魔法主義国家のグザバード・バーミリロ魔法王国は、ニーダ国とバウロ王国へ侵攻を決めた。電光石火の魔導装甲兵団の進攻はニーダ国を僅か2日で駆け抜け、翌日にはバウロ王国へ侵攻した。目的はアルフ魔導士の拉致。
また魔法省は同時に世界に噂の目を撒いた。
バウロ王国は魔力拡大の術を開発したと、その事が大きく火種となって世界に広がっていく事になる。
アルフ達は2日程、街に滞在し、翌日に王都帰ろうと用意を行う。馬車に食糧やシーツなど雑貨も多く購入する。王都よりこの街のほうが安い雑貨もあり、結構大量に仕入れた。翌日に場所に乗り込こんで、出撃だという時に、突然、街の鐘が連続して叩かれる。
「あれ?この鐘は?」
「こ、この鐘の鳴らし方は敵襲の合図です……え、えっと鳴らし方で、まだ警告のようです」
メテーレが答えてくる。さすが元軍にいた事だけあるな。
聞くと国境を越えて敵軍がこちらに向っているとの事。北部にあるニーダ国かと、聞くとニーダ国とは友好のはずという。ビライラもミザラも分からないと顔している。もし魔法王国だとすれば、ニーダ国を占領したか抜けてきた事になり、争いがわかれば情報が回ってくるはずだと。
同行している騎士が、なにやらこの街の騎士に話を聞いてきたようで、俺達に言う。
「アルフ魔導士様、これは問題かもしれません、詳しい事情は分かりませんが、半島のグザバード・バーミリロ魔法王国の魔導装甲兵団がこちらに向っているとの事です。国境の警備兵は大敗して、応戦もできず、こちらへ逃走中らしいです。あと1刻もすれば、この街に到着するでしょう」
なにその魔導装甲兵団って!?
すごく惹かれる兵団!いや、それはともかくヤバイのか?と聞くと凄くやばいと答えてくる。魔法で補強された魔法戦車で、何年も溜め込んだ魔力を砲にして撃ってきて、挙げ句に攻撃を得意とする魔導士が歩兵として同行するという魔法王国の先鋭部隊だという。ただ何年も魔法戦車は準備をする必要があるし、魔導士は死んだら損失が大きいので、進攻が確認されたのはもう10年以上前だという。
「え?どういう事です?なんでそんな危なそうな兵団が……いや、それはともかく、どうしましょう?」
「あたいらだけでは勝てないよ、逃げるしかないよ、そんな突撃してくるなら、回り込まれそうだね」
「東に山脈があり、馬車は難しいです、西の森なら騎士団の白道が昨年に通ってるはずです」
メテーレ達が話し合う。さすが元軍人。騎士達と話し合って西の森を抜けて、海岸沿いで争いを避けようとなった。いくら強い兵団もっていても王国とは国力が違う。なんらかの目的があってくるのだろうと彼らは話す。10年前は魔法王国内で国王交代があり、国内に力を示す為だったといわれているらしい。
誰も俺がゴーレム使いだから、戦ってよと言わないのがありがたい。聞くと兵団の数は5千以上いるらしく、とてもじゃないが、俺の300体程のゴーレムじゃ蹴散らされそうだしね。
俺達は人々が南に逃げるのを横目に西の森へ進んだ。




