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37話 大歓迎

街は歓喜に包まれ、誰も英雄の名を叫ぶ。ごらん!凱旋が行くよ!大通りに面した建物の窓には、ひと目英雄を見ようと危なく身を乗り出す人々。路面には手を振る人々。王都入り口で乗り換えた屋根のない馬車にのり、観衆に手を振って、アルフ達はゴーレム兵と騎士団を率いて王城に向う。


王城について待合室で一息入れる。とても疲れた。そう疲れたよ。笑顔で手を振り続けるのが、こんなに辛いとは。一方、メテーレ達をみるが、凄く興奮して“すごかったねー”とか、キャアキャア言い合っている。


その後、メテーレ達を残して、俺は案内されて王の間に向う。


赤い絨毯の先に壇上のような場所があり、俺たちは、近づき膝を突いて見上げる。そして、王がいた……というかガデール男爵とロニーグさんが横で、ぴったり付いて、“もう一歩歩いて、そこで左の膝をついて”とか“あの方が王です”と小声で教えてくれるので助かる。


見上げた王は、前世で良く行った居酒屋の親父に良く似ていた。王の話は特別なものではなく、良く頑張った、褒美はこれだ!と言うと横からお盆をもった人が出てきて、俺は変な形のメダルと封筒を貰う。報酬はその封筒に書かれていますが、今は開かないでくださいとロニーグさんに囁かれ、ロニーグさんの言うとおりに感謝して受け取る旨の口上を言う。“今後も王国の為に戦いますっ!”と。


ガデール男爵も何か貰ったようで、最後は伯爵と呼ばれて、領地がなんとかと言われて、最後は涙ぐんでいた……というか、この式典は難しい単語を多く使うので、分からない事が多い。横でロニーグさんが、説明してくれたからどうにか理解できたが。




「難しい事はここまでじゃ、気楽にせよ。さて……英雄アルフ魔導士よ。お主は王宮で働く気はないか?」


「はい、喜んでお仕えしたいと考えますが、未熟者ですので、鍛錬を一区切り終え次第、お仕えしたいと考えております」


「そうか、では、その時まで王国はアルフ魔導士を待とうではないか」


この会話はここに来るまでにロニーグさんと打ち合わせた内容だ。形式上、参加している人には俺が王に従うことを示せばいいという事らしい。王宮で働く……それはある意味公務員で、安定しているので願ってもいない涎がでる職場だが、毎日血筋や出身で差別される職場だとロニーグさんの話から想像できるので、涙を呑んで先送り的な答えをする事にした。


その後、夜に祝賀会を行うと言われて、退場して宿泊する部屋に向う。部屋に暫し休み、気になっているワクワクの報酬が書かれた封筒をメテーレ達と開いて見てみる。


────────────────────────────

■報酬

王国英雄叙勲

金:500,000,000ギル

住まい:王都中央区19-19番-072宅

上記、アルフ魔導士に授ける。

────────────────────────────


おぉっぉ!でた!でたでた!5億ギル!これで俺の所持金と、今後入ってくる遺跡からの費用を考えると、もうこの世界では一生安泰だ!覗き込んでみているメテーレ達もすごいすごい!と大騒ぎだ。そりゃすごいさ。説明書きもあり、このお金は俺のペンダントに入るとの事、住まいは数日後に入居できるという。


もうね、ここで俺の異世界の冒険が終わったと言って過言ではない。


お金?贅沢しなきゃ一生過ごせるだろう。遺跡?天空の城?魔王?そんなのは全て無視だ。危ない事には手を出さない。手じゃなくて、足から違うものを危険日に出す事が俺に課せられた最大のミッションだ!ああ……明日からのバラ色の日々が楽しみだ。4人で酒を飲み、爛れた毎日を過ごす。芸者を呼べよ!寿司を頼めよ!構うことない!俺が全部払うよ!……この世界に芸者も寿司もあるか知らないが。ともかくそんな感じだ。


夜はベッドで運動会!色っぽいな!エロいな?金持ちにはバッコンもバッコンだ!ああ、父さん!溶解デムパというか色々立ってますよ!おい!リビドが来たろ!ああ……チキチキバンバン猛……


「アルフ様!アルフ様ッ!」

「ハッ!?」

「どうされました?」

「もぅれ……いや、もう、祝賀会の用意しようか」



俺は巻き込まれるトラブルを少しも想像できなかった。ただただ、報酬に浮かれていた。

この時、少しでも自分の置かれている立場理解していれば、もう少し回避できたのではない……。



前世の名言を思い出す。


人生は後ろ向きに進む。

未来は分からないし、どうなるか分からない。

ただ、過去に起きた事は知ることが出来る。

優れた者は、その過去を見てまだ見えない未来を予測して進む。

愚か者は、それすらしないで見えない未来へ歩こうとする。



競馬場でハズレ馬券の紙ふぶきを降らせた先輩の言葉を思い出す。

まぁ、正直、未来なんて誰にもわからんよ。


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