31話 予想を出来る事
どうもアルフです。
遺跡で見つけた扉を開けると、そこには数多くの遺跡が!!……と予想ができるが、俺はそうしなかった。扉があるのですか?と聞かれて、無視。そうシカトだ。聞いてきた職員を睨むでもなく、微笑むでもなく、一切、言葉を発しなかった。職員が教えてください!と声が上げたが、俺は顔を歪ませて一切発しなかった。
「貴様!アルフ魔導士様に失礼な!!」
それを見ている護衛している騎士やガデール男爵、そしてメテール達が職員を責める。特にビライラは、騎士の腰から剣を奪って職員を切ろうとして、騎士と押し問答をしている。
「あたいの旦那に嫌な思いをさせたな!」
「堪えてください」
「嫌だね!!こいつは叩き切ってやる」
カオス!!まさにカオスだ。俺は宿に帰りましょうと、一言呟きそのまま皆を連れて遺跡を出る。後ろで勘弁してくださいー勘弁してください!叫ぶ職員の声と、指か!指いっとくか!と言うビライラの声が聞こえたがそれは特に無視だ。
あの先には、手付かずの遺跡が残っているだろう。ただ鋼鉄製らしき壁は、何かの遮断のためにあるのはアホでも分かる。そうだとすれば、あれは何かのシェルターか軍事基地かもしれない。そんな何があるか分からない事には迂闊に手をだせない。折角、今はいい感じで過ごせているのだ。遺跡から取れた素材で収益があるなら、その収益をしっかり貰えるという確証がなければ、手を出すのは馬鹿だ。
それに、この遺跡は既に見つかっていたので、扉を見つけて開けただけでは、お金が払えないとか言われたらタダ働きだ。俺はボランティア英雄じゃねぇんだ。この凱旋だって王都に着けば報酬でるから身を削ってやってんだぞ。馬鹿にして貰っては困るぜ。
そのまま街に戻りながら、脳内で夜戦をシミュレーションしていると、メテーレ達が声をかけてくる。
「アルフ様、何かあるんですか……あの壁には」
「も、もし危ないなら私も治癒魔法が使えますし、協力します」
「あたいも力になるよ」
彼女達は心配そうに言う。俺はそうだな、と渋い顔して遺跡の方角を振り返って見て、儲かるなら手をだそうと少し考えた。あの遺跡が軍事基地跡で、星を壊すような御神体が無い事を祈る。危なくなったら飛行できたり、何処に転移したりと逃げる魔法を覚えたいなぁ……。
宿に帰り転移や空を飛ぶ魔法の事を彼女達に尋ねると、空を飛ぶのは風魔法で、自分を吹き上げるよう行うとのこと、少し部屋でやるが、風が出て花瓶を倒しただけで実現できなかった。転移については伝説の魔法らしく、古い魔法書にあるが、実現不可能と言われる。
ロニーグさんに聞くと、転移魔法は100年程前までは、国を挙げて専門部署が研究を行っていたが、失敗がつづき、貴重な命が失われたとして、現在は閉鎖されているとの事。なんでも転移自体は実現可能な魔法だったらしいが、転移先の場所を正確に特定できないと壁や岩にめり込んで絶命し、高さ自体も失敗すると下半身が無くなった状態になるという。恐ろしいな……。
閉鎖直前には何も無い空中に転移した風魔法で着地という事も行われたらしいが、1人なら風魔法で着地できるが、数名だと無理なので、この技術は転魔法と空を飛ぶような風魔法会得者でないと使えない判断されて100年前に部署は閉鎖されたとの事。そりゃそうだ、危ないものね。今でも王都の一部のカルト的な魔法研究者は研究を続けているとの事。それにしても、博識だな、ロニーグさん。
「遺跡の先より!今回の凱旋日程を遅らせる訳には行きません!」
「その通りです!まずは王都!それが先です!」
ガデール男爵とフランツ副団長が横で妙なテンションで言ってくる。どれだけこの凱旋に気合いが入っているんだ。この人達は。
夕食後に、領主と伴って遺跡の調査を手伝って貰えないですか?と遺跡を管理する職員がお願いに来たが、ガデール男爵と騎士団が王都凱旋を無事に終えたらと押し問答が続いていた。この街には日程的に明後日までしか居ない。それは無理だとガデール男爵は言う。
「せめて!せめてアルフ魔導士様にあの壁を開ける術があるならそれだけでも!」
「ならん!英雄アルフ魔導士殿は王都へ凱旋する必要があるのだ!」
「そこを、そこをなんとか!もちろん発掘後の収益はアルフ魔導士様と国へ……」
「分からんのか、王は……」
聞こえましたよ、領主さん。収益ですとな。有ればあるほど困らないものってなーんだ?答えはお金だ。前世でもギター片手にサングラス装備の歌手が、声を枯らすほど“金だ!金―!”と叫んでいたしね。金isキチガイ。そう金さえ出すっていうなら、俺は動くよ。むしろお願いします。
ガデール男爵の肩に手を置いて話しかける。
「ガデール男爵、領主がそこまで言うなら私も手伝いましょう。もちろん凱旋の日程が遅れないようにね」
「アルフ魔導士様……」
「それと、王国の発展と帝国との戦いにはお金も掛かります。収益が出て領主様が、その意気込みを見せてくれるなら、私も手伝わない訳に行きませんよ」
決まった!入りは問題ない。愛国心という名のもとに!
その後、収益の何割を国でどれくらいが俺にくるかというデリケートな問題を乗り越えて、明日に遺跡発掘となった。3日後の早朝には街を出るため、タイムリミットは明日の朝から明後日の夕刻、遅くとも夜まで。
領主達は満足した様子で帰っていく。明日の準備ということらしい。
扉開けられなかったらどうしよ。




