30話 人は誰でも演者
ペドレーデの街に到着して、大歓迎のパレード。そして夜は祝賀会。ガデール男爵とロニーグさんを含む数名の騎士とがっちり打ち合わせして俺は俺の役を演じる。
英雄アルフ魔導士。
ゴーレム達とポーズを決めている時に前世の名言を思い出す。
人は誰でも役者よ。
会社員や主婦、学生。
そう……私、女優でも同じよ。
だから私は常に全力で演じているの!人生を。
前世のアダルトビデオ女優の名言が俺をブレイブさせる。やっぱり演技だよなとがっかりしたのは別として、ばっちこーいだ!いいじゃないか!戦争行こうぜ!さあ、皆さんご一緒に、戦う!戦う!そして俺!金貰う!?
Win-Winの関係、いや、イエーイイエーイ!の関係だ。難しい事は国王や貴族が決めればいい。
前世でも難しい事は、政治家や官僚にやらせて、俺達は文句をだけ無責任に言っていればいいのさ。大学生は親から金出してもらって遊びながら、言いたいを無責任に言ってデモ行進だ!世の中っていうのはそういうものだ。路地裏の孤児が泣き叫んだって、世界は変わらない。
夜になり宿屋に戻り、俺はメテーレ達と口付けを交わして本能に任せる。移動中に営み無しだったので、俺のアルフ式短距離地対空誘導弾は既に全弾装弾済みだ!そう……通称「短チム」が炸裂する。
激戦の泥濘局地ではジャッキアップして躯体を安定させるのは難しい。だが誘導弾は左右に振れるビッチリ目標を合わせて突撃していく。
吐かれた煙が一瞬目に染みて少し涙ぐむ。誘導弾にもレールのグリスがついているのか、飛んでいきながら、月の光を受けて先っぽがテカテカ乱反射して飛んでいく。
生きていて良かった!そんな夜ここです。
この街には調達も兼ねて、2泊するとの事で翌日、街の近くにあるという遺跡に騎士団を伴って見学に行かせて貰う事になった。街から徒歩20分程。森の中にぽっかりと空いた洞窟。
ペドレーデの街はこの遺跡を含め、周囲に存在する遺跡から取れる良質な鉄や魔道具の素材で繁栄した街だが、最近は発掘が落ち着いて、街の景気は悪くなって来ているという。
「新たな遺跡が見つかればいいんですけど、あ、この先が遺跡です。奥の壁までは発掘が終わっております 」
遺跡を見つけた者には、その遺跡から取れた素材などの売り上げの何割かを貰えるという。これは老後までに遺跡ハンターするしかないぜ。ゴーレム使って探し出せば……と妄想した。
進みながら管理している職員に説明を聞きながら奥へ進む。30年前までは猿のような魔物が巣食っていたが、討伐されたとのこと。見ると洞窟内部の壁は、所々剥がれてはいるが、タイルのような物が貼り付けられている。
20分程歩いていくと、壁が現れて行き止まりになる。壁をコンコンと叩くと鋼鉄製のよう感じだ。壁には採掘できないか試した後がある。歩いてきたここまでの道には色々と物があったらしく全て運び出されたという。
発掘を終えて10年程立つが、時々、何故か洞窟には猿のような魔物が沸くので、随時入り口に騎士団を配置しているという。ふと壁の左端を見る。これは?と振り返り職員に聞くと模様ですねという返答。え?これ扉じゃないのか取っ手の無くなった扉に見えるが。
「あの、扉は開かないのですか?」
「え?扉ですか?それは見つかってはいませんね。扉があれば大発見ですよ」
調べてないのか……どうしようか。鍵の掛かっているだけなら、ゴーレムで開けるのは?扉の向こうにゴーレムを呼び出して開けてもらうとか。どうする俺……開くか?嫌な予感がする。そしてお金の香りもする。




