29話 遺跡もあるんですね
それからもう1泊してから、俺達は王都へ向けて馬車で進む。ベドレーデ、ムードスの二つの街を越えていけば、王都だ。街道の休憩では俺はまた小屋を造ったり、ボロークに水をあげたりベロベロされたりしつつ、箱馬車中では、魔法書を翻訳して写す。もうお金があるからとは一瞬考えたが、1億ギルも1ギルが1億ギルあるから1億ギルという精神で、ひたすら頑張る。
また街道の休憩中、俺が小屋を造っている横でゴーレム達が土で鎧の型をつくり、そこに土をいれて、340体のゴーレムが鎧を大量生産している。特に3体のマッチョゴーレムが起用に指先の小刀で粘土質の土をコネコネして、装飾が上手い。時々意識を飛ばしてきて“これでいいですか?”とか“このデザインでいいですかね?”と聞かれるので、騎士団の鎧を元に指示を意識にして飛ばす。数回の休憩でデザインは騎士団と変わらないデザインになったが……ゴーレムでかくなってないか?全ゴーレムは皆、身長が3メートルぐらいあるんだが。
最初は休憩の都度ゴーレムを収納していたが、呼ぶのも収納するのも、痛みを伴うので、今は馬車と一緒に行進している。騎士団は現在150名程で、俺たちのゴーレム兵と合わせて500名近い兵士がザクザクと足音を立てながら進む。凄く壮観だ。
また説明が難しいが、マッチョなゴーレム3体がハブとなって俺の意識を各ゴーレムに届かせている感覚で、コントロールを意識しているのは3体だけ。これと同じようなことができれば、どこまでゴーレム増やせるのか、いつか試してみたいところだ。
ベドレーデの街までは、あと1日と迫ったときに魔法書は全て翻訳と写しが終わった。翻訳を手伝ってくれたゲアドリさんにお礼を言う。
「アルフ魔導士様の真剣な学ぶ姿勢の私も心を打たれました。私も騎士して日々鍛錬いたします!」
「いえ、ぜひ今後も色々を教えてください」
俺の場合、金になるからという原動力だけどね。それにしてもこの魔法書に書いてある姑息なテクニックは本当に驚く。ただ、「魔法使いの極致と魔導士」という本については、翻訳すればするほど、空想の伝説ではないか?と思う事が多く書かれている。
特に空には古代魔導士の英知を集めた天空の城があり、今も王の帰還を待っているとか、地底深くに伝説の魔導士が魔王を封印させたが、いずれ復活して世界を暗黒に陥れるとか、物騒な事がずらずらと書いてあった。なんだよ、その天空の城とか魔王って……アニメと焼酎しか知らんよ。
「はは……ねぇ、天空の城があるってさ」
写した本を指で指しながら、メテーレやビライラ、ミザラに笑っていう。
「いずれアルフ様も目指すのですね?」
「え……目指す?……あるの?それ?」
「はい、ありますし、天気の良い日は東の空に見えますよ?ご存知かと」
あ、あるんだ。いや、興味が無かったと誤魔化したが、もしそこにあり、行けるならロマンだ。ベロデの図書館で見た本に魔法で空を飛べる魔法があると書いてあったはずだ。きっと空も飛べるはず!スピリッツで!
「メテーレさん、そういえば魔法で空を飛べると……」
「天空の城へ飛んで行けないかという事ですね?撃ち落されますわ」
聞くと天空の城へ近づくと、神の怒りと呼ばれる光の攻撃を受けるという。今までの歴史でも、高名な魔導士が挑戦したが、悉く失敗しているとの事。……それ、既に城にメガネをかけた王がいるんじゃないか?まぁとりあえず触らぬ神に祟りなしだ。チュドーンってされるのは、想像に容易い。知らなかった事にしよう。うん、そうしよう。
それと魔王。地中深く魔王が封印って……。これも知らなかった事にしよう。そう思っているとビライラが、俺の写した魔法書を覗き込んで、横で話しかけてくる。
「魔王の事も書かれているのだね。まぁ、帝国の事だから、あたいらには関係ないね」
サラっと言われたが、いるのか魔王も……一応聞くと、帝国は地下から古代の遺跡を見つけ出して、魔王を復活させようとしているとの事。まだ見つかっていないらしいが、時間の問題だと軍部では話が噂だと言う。遺跡って結構有るのかな?と聞くと、王都も遺跡の上に築かれたという。またこれから行くペドレーデの街の近くにも遺跡があるという。これは着いたら是非、見学に行きたいな。
古代遺跡……それは男のロマンだ。失われた文明とか最高だ。鞭とか覚えて、中折れ帽も被って遺跡から金貨ザクザクとか想像する。まあ、そんな都合の良い事ないだろうが。
近づいてくるペドレーデの街を目指して俺達の一団は進んでいく。




