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28話 そりゃ情報操作も気がつくさ

翌日は男爵と教会と併設されている孤児院へ。この世界の宗教は知らないが、教会があるのは知っている。そして前世からの記憶もプラスして、信仰は時として脅威なる事も知っている。ともかく敵に回らないようためにも、終始、大人の対応。途中、なんか神を信じていますか?と言われたので、勿論です!と最高の笑顔を放ってくれた。俺が知っている神は電脳ネットワークの中にしか居ないとは言えない。それにこの世界には電脳ネットワークは無いしね。しいて言えばベッドの中のメテーレ達が女神だが。


孤児院では英雄サマーと集まってくる子供達に、予めガデール男爵に用意された台詞とお年玉のように小銭が入っている小袋を配りまくった。その度に子供達は目を輝かせて言う。


「魔導士様!僕も大きくなったら、帝国を倒すためにたたかう!」

「ずるいぞ!オレが帝国をたおすんだ!」

「あたしも!あたしもたおすー!」


男爵や騎士団が、皆で倒そうな!おー!とか皆で一致団結して仲良くなる。さぁ皆で歌いましょう!とシスターだが保母さんだが声を上げて、歌いだす。帝国は悪魔だ、皆で倒そう、王国に栄光を~と。うん、微笑ましい光景だ……王国の未来は明るく……って、そんな訳があるか!!


なんだこれはユーゲントか?帝国って言葉より帝国らしい。ふと横をみるとメテーレまで歌っているじゃないか。え?ベロデの街にこんな事なかったような。あったかも知れないが、俺は農村育ちで学校も行ってないからわからん。洗脳されているじゃないかと考えたら、皆が俺をみるので、俺も口パクで歌う。


なんだよこれ。


宿屋に帰り、ガデール男爵と話がしたいというと、ガデール男爵とフランツ副団長、それと目付きの悪い騎士が来て、こちらへと一室に通される。


「お話はとは……なんで、なんでしょうか?こちら至らぬ事が!?」


「なにか!?失礼が!?」




ガデール男爵とフランツ副団長がオドオドしながら言う。なのに目付きの悪い騎士はその様子を横目でみながら、一切動じない。舐めるなよ。俺だって前世で大都会の中、揉まれながら仕事していたんだ、この状況は分かるぞ。


「ところで、そちら騎士様は?いや、騎士様でしたっけ?」


ポイントは既に知っているように、自信有りげに言う事と、間違っていても“あさ、そうでしたよね?”と誤魔化せる切り出しだ。そう俺にはわかる彼がキーマンだ。


「良く分かりましたね。農村で育ったと調査記録にありましたが、キレものですね」


「ええ、聞かせて貰えますますかね?」


「アルフ様にはぜひ、もっと英雄で居てほしいのですよ。もちろん、本物の伝説の魔導士様です。ですが、民衆の象徴となってほしいのです」


「つまり、帝国との戦いのですかね?」


「話が早くて助かります。問題がないですか?」


俺は皆の顔をみて、沈黙をじっくりと時を置いて答える。


「それが望みなら……私は力になろう。そして国も私を助けて欲しい」


「ええ、勿論です!魔導士様」


皆がほっとした顔をした後、笑顔になり握手をしてくる。



ここまでシリアスに対応したが、当たり前だっての!!農村で育って丁稚奉公からやっと喰えるようになり、運よく魔力ゲットだぞ。下手すりゃボウダテさんのように矢を受けて死んでいるんだ。こっちは今の状況で大満足だ!下手すりゃ、いま頭を下げてお願いします英雄にしてくださいと頼むぐらいだっての!


冬の井戸水で指がばっくり割れた生活から、夜のベッドで色々とバックリの熟れた性活になってだよ!逃すかこの生活を。単純に知らないで情報操作されるより、知っていてやるほうが俺はやりやすいだけで聞いているだけで、問題どころか、大歓迎だ!プロパガンダ?大賛成だよ。俺はこの世界で色々を気持ちよく生きる事で十分です。そう十分なんです。


魔法なんて何が原理で、何故、使えるのかこっちは分かって無いんだ。そんな棚から牡丹餅より彼らを信じるさ。長い物に巻かれるスタイル。なんでしたら、前世のスティングの名曲に乗せて歌いだすぞ!そう!おれは転生in異世界だ。だが、一応その答えを引き出すのが必須という……前世の名言を実行しただけだ。


___いいか?__顧客の言いなりなっちゃだめだ。

まず、先に相手に認めさえるまで粘るんだ。

最終的に相手の言い分が通るとしても、最適な答えを引き出すまで!粘れ。

そして最終局面になれば、何があっても全力を尽くせ!

それがビジネスマンのスキルだ!


お客先へ重要な商談に行くときに、喫煙スペースで先輩が、ゆっくり煙を吐いて後に行って名言を思い出す。


ちなみに最終局面で先輩が見せた“お願いしまずぅ!契約してくだぁい!”と泣きながら全力で土下座したワイルドな光景はいまでもトラウマだ。今回、下手したら俺がその全力スキルを使うところだった。


その後、ガデール男爵、フランツ服隊長、そして目付きの悪いロニーグさんの要望は、帝国は悪だから皆で戦うように扇動してほしい的な事と、俺強いから帝国こっちくるなよ?というアピールしつつ、帝国の間者が接触したきたら直ぐに教えて欲しいという事。対して俺の要望は、家族で(無料)住める場所が欲しいという事だけを伝えた。


それ以上は何を望むか。異世界であろうと、前世であろうと人が生きて行く上で、本当に必要なものなんて、そうは多くない。ただ皆、多くを望みすぎるだけだ。多くを望む人間はそれだけ愚かな事だ。


ちなみに俺は愚かな人間のほうね。


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