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26話 黒いローブと私

メテーレさんとガデール男爵、それと騎士団を引き連れてローブ店へ。ローブ店って専門店なんてあるのかこの街は。ベロデの街より大きいから良く分からないが、これなら王都とか凄いのじゃないか?と都会を思いつつ、入店したローブ店ではVIP対応で店員が色々とローブを薦めてくる。


「これなんて素敵です!王宮のミガール魔導士様モデルで白の刺繍が素敵ですわ!あとこちらのネビート魔導士様モデルの紫色も最高ですわ」


メテーレさん楽しそうにしてくれるので、それだけ幸せさ。


店員がローブを色々と出してメテーレさんが俺に着せ替え人形のように着せてくる。結構な時間が掛かったが、結局は頂戴した黒いローブを同じローブを選ぶ事にした。


尋ねるとこの黒いローブは王宮魔導士ロウガスタ卿モデルだという。


「無知で申し訳ありませんが、王国って魔導士さんは何人いるのですか?」

ガデール男爵に尋ねる。


「今までは5名ですね。アルフ様を含めると6名になりますか」


そういえば、勝手に魔導士と呼ばれているが、登録とか承認されるとかあるのか聞くと特にないらしい。その内俺のローブ、アルフ魔導士モデルとか出るのだろうか。


選んだ黒いローブにメテーレと店員が騒ぎながら刺繍を打ち合わせている。なにやらお店の職人を総動員していまから仕上げるという。凄いな。靴は?といわれてなにやら3軒となりの靴屋もこのローブ専門店に合う靴を持ってきて俺中心に何か工房のような状態なる。危うく靴の先が尖っているピエロのような変な靴を出されるところだったが、冒険者らしい良くあるような皮製の長靴で噛み付かれても大丈夫な仕様にしてくれた。


ローブはローブでメテーレが矢を通さないようにと内側の素材を追言したり、内側にポケットつけてくれたりと何度か試着して1刻を待たずに完成した。鏡を出されて自分を見る。


おお……かっこいい。まさに魔導士。両手を広げてなにか魔法をブチ出しそうだ。なにより顔を隠せるぐらいの深いフードがいい。すごくミステリアス!試着しいるとその腕輪の袋はどちらにつけますか?と言われる。


全く分からないので、聞くと腕輪と袋が一対で連動しており、魔力を流す事で袋の容量を上回る物を収納できるという。名前は収納袋。そのまんまの名前だが初めて聞いた。ラウデの村で検分して頂戴した袋それなのか。宜しければ新調しますか?と言われたので、お願いするとこれまた腕輪と収納袋を別の店の人が、これはどうですかと腕輪をつけてくれながら薦めてくる。


これはアレか!?色々な物がアホみたいに収納出来て、収納している間は時間の経過が無く、食料とか入れれば、洞窟とか冒険に出かけて、ホクホクのお弁当とかバンバン出せる夢の道具か!?一瞬喜んだが、普通に入れていれば腐りますよと呆れられた。まさか魔導の極致で時を!?と聞かれたが、いやいや、と濁した。


……で、実際にこの収納袋は魔力を定期的に流していないと、中身が飛び出すので魔力が無い人は使えない上に価格も高い。俺が今回買った収納袋は1,920,000ギル。3億ギル以上も持っているのに高いというなと言われそうだが高い物は高い。それに容積は荷馬車に入る半分ほど。荷馬車借りても1月で150,000ギルだぞ?まぁ、ボローク不要と考えれば安いか。


いずれにしても、ローブも新調して装備したらいかにも魔導士見えた。いいぞ俺。もう見下されて腕切り落とすぞとか脅されたくないものね。洗濯を考えてローブは3着、靴は2足購入した。


ガデール男爵と数名の騎士は俺がファッションショーやっている間に用事で出かけていったが、終わる頃には戻ってきて素敵です!最高です!以上なテンションで煽てる。分かるぞガデール男爵。こういうの男性は付き合うの面倒だもね。早く終わらせて欲しいのあろう。



今回の買い物で使ったお金4,500,000ギル。出兵する前に狩りをしていた俺の数ヶ月分の稼ぎに値する。まぁ冒険者組合から貰ったと考えれば……ねぇ。




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「不始末では事足りませんよ」


「申し訳御座いません」


路地裏でガデール男爵は膝を突き、深々と一人の騎士に頭を下げる。周囲には同じく騎士が数名、周りを警戒して路地を見張る。


「建物修繕費用は国から出して今から突貫で対応します。今夜、広場で冒険者組合の関係者を極力集めて周知させてください。いいですか?極力!全員ですよ。酒屋や楽団、娼婦達の費用も国が負担しますから。ケチらず対応してくださいね。孤児院と教会は我々が対応します。それと街での風評がありますから、明日より同じ広場で祭りも行いますから、告知も行ってください。いいですね?」


王宮直属の情報部隊ロニーグ少佐は、厳しい口調でガデール男爵にそう伝えると、後ろで控える数名の仲間に指示を出していく。王都より伝令と共に来た情報部隊。王直属の部署で、その所属する隊員の実権は侯爵より上だといわれる。


今回の騒動では冒険者組合所属のアルフ魔導士が、帝国との戦いに積極的でないホーシャムの街の冒険者組合と口論になり、その際に婚約者のメテーレの暴行を働き粛清に至ったという筋書きが適用され、帝国への戦いを見据えたアルフ魔導士が将来の期待する孤児院や、孤児院を運営する教会に多大な寄付を行い、正しい信念を持つ冒険者や街の民へ宴を行うという事になった。



「いいですか?男爵、彼は確かに伝説の魔導士かもしれませんが、国の英雄なのです。その彼がですよ?盗人の小僧と間違われて、片腕を切り落とすなどと脅されたなんて有ってはならないのですよ!わかりますか?」


「は、はい……その通りです」


「では、次から彼から目を離さないでくださいね!」


その後ろで遺体の入った麻袋が、担がれて荷車に投げられる。


「冒険者組合長ウールシェッドは、アルフ魔導士の言葉と行動に感動し、帝国との正義の戦へ数名の職員を伴って国境へ向った……いいです?」


「はい……」


「浮かない顔ですので、お伝えしておきますね。

この凱旋が終われば、ガデール男爵も英雄となり、伯爵です」


「え!?いま、何と!?」


「ガデール男爵、いや……伯爵殿。領地も騎士団大幅に!ああ、これは凱旋が終わってから王より賜ってください」


第27騎士団を率いるガデール・フォン・グライム男爵。グライム家の3男に生まれ、騎士団に所属して早15年。貴族といってもグライム家の領土は狭く収益も少ない。ガデール自身、家督も継げず半ば今回の戦では躍起になっていた部分もある。死ねば王国から妻や子にも幾ばくかお金も残せてやれると。だが今!耳に届いた言葉。


___伯爵の地位


ガデールは想う。私が目指した未来。それは敵を倒す為に夢見た剣技でも、仲間を救う義でもない。私の未来。そう!伯爵になり!親を超えたグライム家が成し得なかった最高の地位と名誉!


私は目を開きながらも夢を見る。

そして、昨年に生まれた我が子。

我が子を抱く妻メリーラが微笑みながら言う____貴方!おめでとう!


私は叫ぶ。


「勿論です!!!この凱旋!我が英雄に最高の凱旋を!!」


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