24話 怒りと大量発生
ドォォーン!と大きい音がして、後頭部にパラパラと小石らしき物が降りかかる。冒険者組合に押さえつけていたが、今は解かれたようだ。土煙の中、体勢を直して回りを見ると壁に穴が開き、オッサン3人は俺達のゴーレムに片手で喉輪されて持ち上げられて足をバタバタさせている。
ゴーレムは俺を見ると親指を立てて、待たせたな?的な意識が伝わってくる。遅いよ。いや、共に本当にありがとうと、少し涙が滲んだ。腕が無くなるところだった……間一髪だ。
それと共にメテーレの事が心配になり、受けた扱いで強烈な怒りが沸いてくる。
激情の怒りというのは中々、抑えられないものだ。人間は感情の生き物だ。一度頂点に達すると悪い悪くないを飛び越えて捨て身の強烈な破壊衝動的な感情も発生する。そして一番厄介なのは感情というものは急ブレーキが効かないのだ。
俺は床に手をつけ、持てる精神の全力で意識して叫んだ!
「もっと出て来い!ゴーレム!でてこいゃー!」
コントロール?できるかできないか?それは分からないが今は全力で戦うところだ。部屋の床を突き破りボコボコと数体のゴーレムが出てくる。メテーレを救うぞ!と意識して俺は廊下にでる。ゴーレム達は壁に突撃して穴を開けていく進んでいく。
なんだなんだ!と冒険者組合の職員が各部屋から出てくるが、ボコボコと床を破ってゴーレムが現れて、次々と職員を喉輪で持ち上げて進む。ゴーレム達はそれぞれの扉を蹴破り、中にいる職員を根こそぎ喉輪で持ち上げて出てくる。全員表で連れて行けと意識すると、ゴーレム達はそれぞれ壁をブチ破って彼らを外に連れて行く。その間も床からボコボコをゴーレム達が湧き出てくる。
この冒険者組合の建物は広い。片っ端から探し出して屈辱事を返してやる。やられても、やられなくてもやり返す!メテーレに何かあったら皆殺しだ!
「どこだぁ!メテーレ!!ゴーレム!もっと出ていぃやぁぁ!」
叫びながら探す。奥に階段があるのを見つける。俺は走り、その後ろをゴーレムが付いてくる。ドカドカとゴーレム達は扉という扉を蹴破り、部屋から職員を喉輪で持ち上げて連れ出してくる。
「おのれ!きさま!」と何人か剣や斧をもって突撃してくる人もいたが、ゴーレムの半円を動くストマックブローと共に壁を破って場外退場させられていた。得物を持って出てくる人が多くなるが、俺のゴーレムもドンドン増えていく。しかし見当たらない。廊下の先に豪華な扉が見える。
___そこか!?奥の部屋か!?
進め!ゴーレム!突撃せよ!
「ですから!アルフ様を不当に!」
目の前の娘が机をバンバン叩きながら半ば叫びながら訴えてくる。
「お嬢さん?この組合長室に勝手に入るのも罪になるのだぞ?分かっているか?」
「ですから!!受付に言っても聞き入れてくれないから!」
「それにね?聞くと英雄アルフ魔導士様とローブが違うというじゃないか?祝賀会で見た英雄はベルベットで高級な黒いローブだという。君がいう少年のローブは色も違う。それにゴーレムを連れていないじゃないか?」
まったく……と呟くと、ホーシャム冒険者組合長ウールシェッドはため息をついた。
ホーシャムの冒険者組合に所属する冒険者は8,200名、組合職員は240名。毎日面倒事ばかりが起きる。先日は貴族の末っ子が家族は反対しているのに勝手に冒険者なって討伐で死んだ。それをこの組合が認めたからだと貴族相手に揉めたばかりだ。最近の親は子供が勝手に育つと勘違いしている。特にいい地位に就いている頭の良い親ほどその事が分かっていない。
大方、この目の前の娘も仕立てのよい服を着ているから、その口だろう。報告を見ると、少年が英雄のペンダントを持ち込んで尋問中とあるから、予想するに祝賀会に参加できる貴族や金持ちの小僧が英雄のペンダントを盗んでローブを着てここにきたのだろう。
そしてこの娘はお姉さんかメイドだろう。子供の遊びに付き合ってあげるのは評価するが、罪は罪。度が超えている。もっとも職員も良く分かっているだろうから、しっかり少年を脅してくれるだろうが、問題はこの娘だ「アルフ様が!」って英雄と同じ名前か?そうでなければ、この娘を処罰しないとならない。
「最後に聞くが、そのガキはアルフといったな」
「な!アルフ様をガキ呼ばわりするなんて!」
「黙れ!黙って聞いていれば!小娘!何処のお偉いさんのガキか知らないが、ここはお子様のあそび……」
机を挟み、娘の胸倉を掴み怒鳴り始めたところで、ドゴンドゴンと建物が揺れる。なんだ!?地震か!?程なくして扉が開かれて職員が慌てるように伝えてくる。
「た!大変です!!!ご!ゴーレムが!ゴーレムに襲撃を受けております!」
その瞬間扉の脇の壁から飛び散り土煙から何かが出てくる。あれは、兵士か?、泥?兵士!?。開け放たれた扉からはローブを着た少年が数十体の奇怪な兵士を引き連れて入ってくる。その間も壁に空いた穴を拡張するように奇怪なぞろぞろと沸くように泥人形が出てくる。
「ああ!メテーレ!貴様……メテーレを!その汚い手をどけろ!」
「アルフ様!!ご無事で!」
「ああ、メテーレ!無事か!?」
娘は俺の掴んだ手を振りほどき、出てきた少年に駆け寄る。俺は理解できないでいると足元に穴が開き泥の手が俺の脚を掴んだ。あっという間に何十体の奇怪な……ご、これはゴーレムだ。まさか……。おれはゴーレム達に殴られて、そのまま意識を失った。




