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22話 祝賀会という名の見世物

「俺……いや、私がいる限り!帝国の蛮行は許しません!」

「何故か!この戦いが正義だからですぅ!」

「ゴーレムの正義の手刀が帝国を打ち破る!」


祝賀会では、ガデール男爵と領主、そして参加者に促されて、メテーレさんに貰った紙に書いてある台詞をゴーレム3体とポーズ決めながら言う。見ている人は目を輝かせている上に、女性はキャキャー騒ぐので、悪い気分では無いが、流石に内心はうんざりだ。


……というか、これ完全に見世物ですわ。


何が英雄だ。これじゃ上野公園のパンダだ。ちきしょう、股間のゴーレムも凄いぜ!帝国の蛮行なんか糞くらえだ!おれは毎晩バッコンバッコンだ!と下ネタを暴発させてやりたいが、それが出来ない辛さ。ああ、もう夜になりメテーレさんと抱き合いたいと半分惰性で英雄を演じる。


一通り演じたところで、ガデール男爵がエールを持ってやって来るので、小声で彼に言う。


「これあと……2つの街でやるのですかね……」


「凄く私も感動しましたよ?英雄は作られるといいますから」


僅かですが、参加の慰労金がお礼として俺に出されると聞いて少しは機嫌を直す。そう金があれば、大抵の事は目を閉じる。俺は現実主義だ。会話しているとメテーレさんが女性2人を伴って近くに来る。


「本当にアルフ様のような方と結ばれて幸せです」


「私も君と一緒なれて、この世界の全てを手に入れた気分になるよ」


やばい、さっきの演技が抜けきれず、歯の浮く台詞を吐いた。メテーレさん両手を押さえて顔を赤くしてまんざらですね。ん?その両脇の女性2名は?と視線を移すとメテーレさんが説明してくる。お知り合いになりたいと頼まれたとの事。


「実は……彼女達は私の元部下なんです。その……アルフ様は、私のような女性を選ばれましたから、お好きかと思いまして」


聞いて2人の女性を見ると、若干、筋肉質。独りの女性はメテーレさんより頭一つ身長が高い。喧嘩になったら股間にチップキック貰って昇天させられそうだ。目つきも怖いしね。


ん?……お好きかと思いまして?それは側室にしろと?


この世界は多重婚が認められている。一夫多妻も妻が妾夫を持つ事も。いずれも養える事や身分に関係する。農家で育った俺は見たことがないが、ベロデの街では卸商のベーグさんは2人の妻が居たのを知っている。


まさかメテーレさん……。


この2人の女性を入れて3人で甘い三連星(ジェットストリップアタック)を行いたいというのだろうか。何と破廉恥な!論理も貞操もあったものじゃない。大歓迎だ!大歓迎すぎて俺のビームなサーベルがいつもより輝くだろう!今夜の月のように。身長が高い彼女がオルテガか!?だが、どうやって戦えばいいのだ!圧倒的不利。2in1か?いや彼女の噛みつきを考えれば……。


「アルフ様?、アルフ様!?」

「ハッ!?……ああ、すいません、つい考えて……ギリギリな例えで」

「何かお考えで……?」

「今宵の月も綺麗だと……いえ、なんでもありません」


キャーと女性達が騒ぐ。回り人達がずっと見ているのに、更になんだと視線を強めて若干気まずい。


「まぁ、アルフ魔導士様は素敵な比喩も語られるのですね」

「すごいじゃない!メテーレ!あんた最高の玉の輿よ」


3人はキャキャーと、3人が騒ぐ。会話をすると3人は元々ラハラムの街の弓隊出身で、身長の大きな女性はビライラという名でホーシャムの槍突隊で突撃隊長を勤めており、メテーレさんと同じ身長の女性はミザラという名で衛生隊の副隊長だという。




「で、では夜に彼女達を……その……部屋に……」

「ええ、治癒魔法ももっと教わりたいですしね」


そういうと彼女達は支度をしますと言っていそいそと離れていく。


男は愚かなものです。特に俺。


だが、いい。これでいい。ビバ異世界、ああ思い出す。何もできず奉公に出されて、冷たい水で指がバックリ割れた日々を。それがこの数ヶ月で夜はバックリ。今夜はどんな熱い戦いになるのかと想像するだけで、体中の液体がビートを奏でそうだ!ああ、生きていて良かった。


つい、感動で涙がこぼれそうなるの上を見て堪える。



会場を出る3人は振り返りアルフを見つめる。


「ちょっと!メテーレ!アルフ魔導士様、上を向いて涙ぐんでいるけど?あれは……」

「あれは……ね……戦場で治癒魔法が使えずに、仲間の命を助けられなかった……」

「そんな、……なんて健気な」

「あたしは惚れたよ!今夜がんばるからね!」

「もう、ビライラったら!」



会話を聞いた周囲の人はアルフ魔導士が涙を堪えて見上げる姿に感銘を受け絵画になった事と、メテーレも含めて、3人が「じゃじゃ馬3姉妹」じゃじゃ馬3姉妹(一生独身姉妹)と呼ばれていたの俺が知ったのは随分と後の事だった。





あれ?いいのか俺、凱旋で寄る街で女性増やして……と、正気に戻ると俺を中心に円を描くように皆が膝を突いていたのは少し恐怖を覚えた。


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