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20話 愛ゆえに!

見事にメテーレを確保した俺は、このガデール男爵と共に街の領主に挨拶にいく。本来は昨夜の祝賀会に出席する訳だったが、高齢の為、しかたなく欠席したとの事。英雄様に来てもらう訳には言っていたらしいが、合わない訳にはいかず、こちらから挨拶に伺う。


領主は確かに高齢でゲホゲホしながら、感激ですと挨拶をされ、俺のゴーレムをペタペタ触っていた。これで思い残す事ありませんと縁起でもないこと笑いながらいう面白い爺さんだった。


その日は商工会や商店街をパレードのように挨拶して回り、時々ガデール男爵と騎士団が俺の回りで、剣をカシャカシャ合わせて舞っていたが、俺はボローク型のゴーレムの上で、ローブを深く被り夜の半分転寝をしていた。一晩中戦っていたのだから眠くて仕方ないさ。その後、一折パレードが終わり夕刻には宿屋に戻ってきた。


暗くなって両親を付き添ってメテーレが来る。ガデール男爵と騎士団も同席して夜食会。


「アルフ魔導士殿、我が娘を貰ってくれてありがとう」

「いえ、こちらこそ、あ、アルフとお呼びください」

「あなた、英雄が家族になるなんて、息子だなんて夢のようだわ!」

「やめてくださいよ、お母様」

「きゃー!感動だわ!」


「ちょっとお母さんやめてよ」

「何を言っているの!あんた!子作りしっかり頑張るのよ!」

「もうっやめてよ」

「大切なことだぞ!メテーレ!」

「父さんまで!」

「頑張ります!お父さん!お母さん!」


凄く喜んでいただけるメテーレ母さん。可愛いです。メテーレさんもこうなるのかと、その仕草を見ながら想像する。メテーレ父さんスキンヘッドで厳つい顔だが、どこかで似たような人に会ったような気もするが……。

いずれにしても会話は日本的雛形として呼ばず何というか。ともかく自称出来る男は親戚付き合いもおろそかにしないぜ。


会話を進むと、メテーレは今日の昼間に弓隊を退職してきたと聞く。上司も英雄を結婚ならと歓迎だったというが、折角団長まで勤め上げたのに、寿退役させて申し訳ないというと、逆に早く退役したかったですからと笑顔で答えられた。


今後の事を話し合い、明日には王都に向けて移動するというとメテーレも付いて来るという。親が逃がすんじゃないぞという声が聞こえたりしたが、こちらも大歓迎だ。聞くとメテーレも数回王都に行った事があるらしく、美味しいお店を紹介しますと乗る気だ。ガデール男爵も馬車にまだ乗れるので是非と薦めてくる。その後も、騎士団の方々が一人ずつ、お酒を注ぎつつ挨拶に来て、一言二言会話をする。そういえば、騎士団の面々とあまり会話していなかったな。皆と会話できて良かったが、人数も多いので名前は覚えきれなかった。


解散して、あとは二人でと皆に言われて、メテーレさんと二人で部屋に戻るとメテーレが俺に抱きついてくる。メテーレは俺より身長が高い。俺が若いというのがあるが、彼女の胸の位置(ブレストファイヤー)が俺の顔面だ。若干固めだが豊満な胸が心地よい。思わず両手で自分の顔を挟み込む。


「弓を引くのに胸が邪魔でしたが、今はアルフ様に喜んで貰えそうですね」


恥ずかしそうに言うメテーレさん最高ですよ。確かに弓を引くのに胸の大きな女性は邪魔だろう。確か前世で女性の戦闘民族が弓を引きやすいように、片胸を切り落とすとか聞いた事があったが、もし本当ならけしからんことだ。その後、メテーレさんは噛みつき技を発動して夜遅くまで戦闘民族と化したが。いつか噛まれるのは苦手だと伝えなければ……俺の耳たぶとか無くなりそうだ。


その夜、俺は夜遅くに、ふと起きてローブを羽織ってバルコニーに行く。夜風が気持ちいい。見下ろす街は通りを街灯の明かりで照らして情緒がある。何故だか洞窟の中で亡くなった土魔法を教えてくれたボウダテさんの事を思い出した。あの時、俺が治癒魔法を覚えていれば彼は助かっただろうと何とも言えない後悔の気持ちが湧き上がってくる。


ボウダテさんから死ぬ間際に教わった治癒魔法は全く理解も再現が出来なかった。そもそも前世でも傷であれば、絆創膏を貼り、体調が悪くなれば薬局で薬を買うぐらいしか知識がない。一度肺炎で入院したことがあるが、治療を受けた際の点滴も注射も中身については全く知識がない。この世界で今まで運良く健康的に生きてきたが、伝染病とか発生したら助かるのだろうかと急に不安になる。


気がつくと、後ろからシーツを巻いたメテーレさんが声をかけてくる。


「起きていたのですね?眠れませんでしたか?」

「いえ、偶々起きまして……ところで、弓隊や軍にも治癒魔法を使える人はいるのですか?」

「ええ、勿論。私も簡易ですが行えますわ。あの?騎士団であれば、数名が会得しているのではありませんか?」

「そ、そ、そうなのですか」

「はい……」


知らなかった。灯台下暗しだな。早速、王都までの道中、メテーレさんや騎士団の人に手ほどきを受けよう。


「覚えようとお考えなのですか?」

「ええ、会得していれば、救える命がありましたから……」

「そうですか……では!私がアルフ様にお恥ずかしながら手ほどきを!」


その夜は、朝まで治癒魔法のお陰で朝まで、元気に夜戦を行った。うん、すごいぜ治癒魔法。ただ朝まで頑張ったが、俺は寝技しか上達出来なかったが。



翌朝、俺達はラハラムの街を出発し、次の宿場ホーシャムの街に向う。ホーシャムの街は人口21万人。ラハラムの街の4倍以上大きさで、南の国との貿易や周囲の町の輸送の要になっている街だと説明を受ける。冒険者組合もあるだろうから出兵の振込金額を確認するか。戦闘は20日間以上あったとの事。往復の56日間も課金され居るなら……3,800,000ギル!?いやいや、満額の1日50,000ギル貰えるとは限らないし、日数も怪しい。だが、班長やっていたから、もしかしたら報償でているのでは?王都へ着いて貰える報償をも合わせれば、激しい金額になるのじゃないか!?、成金魔導士の爆誕では!?これはもうドキドキが止まらないぜ。


いや、メテーレさんとの愛に生きる愛の魔導士(エロ小僧)だ!……いや、なんでもない恥ずかしい。治癒魔法と魔法書を翻訳しながら、時々思いをはせ、俺は首から下げている冒険者組合のペンダント(預金口座)を強く握り締めながら、目を閉じて必死に金勘定をしていた。


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