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19話 動き出す帝国と伴侶

「それは真か!数体でも手に余るというのに!」

「はッ!間者の話では数万体のゴーレムは行使可能で、いまだその数は知れずと」


一度は撤退した南東の3つの帝国部隊は戦果なしには戻れぬと考え、集結しラハラムの街で総攻撃を考えていたが、間者からの情報でその起案を中止した。3体で数百名を殺害された上に更に数万のゴーレム兵を控えているのであれば、敗戦は必須。


「で、そのアルフなる魔導士以外にも王国には脅威となるものはいるのか?」

「現時点で王国には5名の魔導士の称号を持つ者がおります。ですが、以前の情報ではそこまで脅威とは……」

「今まで名前も出てこなかったアルフなる魔導士がいる以上は警戒せねばならぬ。帝に報告し、このまま帝国へ引くぞ!」


帝国軍はそのまま天幕を引き払い帝国領に戻る。

ラハラムの街はこうしてひと時の平和を得ることができた。

その頃、アルフは気だるい朝を迎えていた。









どうも、アルフです。

一晩中、女性に噛み付かれる事を経験した事があるでしょうか?俺はあります……昨夜です。一言でいえば、体力のある女性は素晴らしいというか、戦いでありました。この世界は初体験であったが、問題なく初戦を乗り越えた。弓隊団長のメテーレさんは、昨夜 祝賀会が終って俺が部屋に戻ると来てくれた。直後、言葉を交わさず正に獣同士の夜戦。せめて少しは会話したかったが。



「おはようございます。メテーレさん」

「お、おはようございます。アルフ魔導士様」

「……」

「……」

お、おう気まずい。それからメイドさんが部屋食事を持ってきてくれて、朝食を食べた。メテーレさんはメイドさんが来ると、恥ずかしがって隠れていたが。


「メテーレさんは弓隊団長ですよね?」

「はい、もう9年で、団長になってからは3年です」

「優秀なのですね」

「アルフ魔導士様にそう言っていただけると感激です」


女性で団長って凄いな。普段はスパルタンな感じなのだろうか。


それから彼女と会話しながら朝食を食べた。


メテーレさんはこの街の出身。両親はこの街で弓具工房を営んでいるという。彼女がいうには弓一筋で、彼女もそうやって育ってきたという。結婚適齢期である為、数年前から親が相手探しに奔走していたが、彼女自身が自分より強い人でないと断り続け、今回、親が祝賀会の参加権を必死でゲット。英雄を射止めてこいと乗り込んだとの事。さすが弓一筋。見事ゲットです。


彼女の俯いて恥ずかしがる横顔を見る。美人です!これは上物です。


もう彼女と田舎で過ごそう。うん、そうしよう。学校で可愛い子をゲットしなくていい。メテーレさんと一緒になって彼女の得意な弓や俺をビンビンしてもらおう!この街で生きていくのもいいな。あなた!狩りもいいけど、私も狩って!おうマンザラだ!父さん今日はオームランだ!おう!グレートセントラル!賭け事禁止だ!


「アルフ魔導士様!アルフ魔導士様!」

「ハッ!申し訳ない。つい考え事を……」

「何をお考えでしたか?」

「賭けご……いや、この戦い賭けた命の事を」

「さすがアルフ魔導士様。日々お命を賭けている意気込み、頭が下がります」

「いや、そんな……あ、俺の事はアルフと呼んでください。もしくは“あなた”でも」

「え!?……そんな!あっ……ありがとうございます。では私もメテーレとお呼びください。私!がんばります」


お、おう……。

俺も頑張る。



着替えて、ロビーに行くとお決まりの昨夜はお楽しみでしたね?と言われる事なく、ガデール男爵と合流する。このラハラムの街にもう一泊し、明日の朝に王都に向けて出発するという。昨夜すっかり忘れていたゴーレム達はロビーで膝を抱えてしょんぼりしたポーズでこちらを見ていた。ご……ごめん。


呼ぶと機嫌を直しポーズを決めたゴーレム達とメテーレの実家に行く事にした。ふと後ろを見ると騎士団達も付いて来る。


「あ、あのガデール男爵?彼らは?そして男爵も?」


「アルフ魔導士殿、どちらに行かれるにしても護衛も必要ですから。そちらの女性は昨夜の……」


「弓隊団長を務めていますメテーレと申します。そのアルフ魔導士様とは……」


「がっちり妻に迎えようと思っています」


「おお!それはめでたい!」


「ですので、まずは彼女の家に挨拶に……」


「おお!!!それは!皆聞いたか!では、アルフ魔導士殿、結納の品はいかがされますか?」


「え?」

「え?」



ああ、それ必要なのか。挨拶行くだけと思ったが、そうは行かないのか?そりゃ、そうだよな。困ったと考えるとガデール男爵が暫し時間をくださいというと騎士団に何か挨拶をして半刻を待たずに高そうな小箱を手にして渡してくる。え?と思い箱を開けると王国印の入って大きな金貨が鎮座している。


「こ……これは?」

「王国の記念金貨です。アルフ魔導士殿に昨夜渡そうと思ったのですが、なにやらお忙しかったようで。こちらを先方へ渡せば先方も納得していただけるはずですから」

「本当にすいません。なにからなにまで……」

「いえ、我が国の英雄ですから」


街中人だかりが集まる中、騎士団を引き連れて、彼女の実家の弓具工房へたどり着く。工房の人驚く中、奥から物凄い強面のオッサンが出てくる。


「と、父さん!私!」


「よくやった!良くやったぞ!メテーレ!」


あ、良かったと思われているなら良かった。


その後、両親と挨拶して宜しくお願いしますとあっさり終わる。金貨の入った小箱を渡すと、彼らは本当に!?と感動していた。メテーレはそのまま今夜は実家に止まり、夜にはまた宿にくるという。帰りにガデール男爵に金貨の値段を聞いて一瞬失神しそうになったが、奥さんもらうには必要経費だと自分を納得させた。うん、これから稼ぐよ。


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