18話 英雄は好む。ラハラムの祝賀会
どうもアルフです。
現在、祝賀会に絶賛参加中です。この街の名士さんや美女さんと会話したり握手したり。一方で、呼び出したゴーレムもまんざらなのか3体でボディービルのポーズを見せて皆を沸かせている。
うん、やるなあいつ等。俺よりゴーレムに人気が集まって良かった。俺は美女と会話しつつ、下ネタ会話をいつ繰り出そうかソワソワしていた。
そんな中、やけに色気がある美女が近づいてきて俺に尋ねる。
「ところでアルフ魔導士様は何体ぐらい呼び出せるのですかぁ?」
「そうですね……」
モテる英雄は辛いぜ。
だが、答えようとした時に気がついた。このグラスを持つ女性の左手の人差し指の付け根と親指にタコがある。普通の人は気づかないだろうが、俺は気がついた。同じタコを見た事があるからだ。
忘れもしない鍛冶屋の時に特注で頼まれた短剣のミスで危うく殺されそうになった事件。当時、その発注者はその筋でヤバイお仕事の人で、
「左手用に短剣を依頼しただろうがぁ!暗殺してやろうか!あ!」
……と思いっきりインフロントキックをお見舞いされた。決して忘れない強烈ビターな思い出だ。
つまりこの女性はそういう商売の方だ……この女性は危険だ。
意識するとゴーレム3体が俺の傍に寄り添い守るよう立つ。そして俺はさりげなく後ろに下がる。
「あれ、頼もしいゴーレムですね、普段は3体なのですかぁ?」
女性は白々しくいう。ぜんぜん動じない……3体ぐらいゴーレムなら余裕と言いたいのか?この女性、すごく怖い。よく見るとパーティ用のドレスを着ているが、見える身体はがっちり筋肉質。
それに今、気がついたが背中に切り傷が見える。
この質問は、俺の戦闘能力も伺っているのだろう。
こういう女性には思いっきり吹かして相手するのが俺の心情だ。
「そうですね、何万体まで呼び出せるか今度挑戦してみましょうか」
「ほ……ほんとう、ですかぁ、それは凄いですね」
お、一瞬だが動揺したな?周りの囲う人も歓声を上げる。
「聞きましたか!万体ですと!もはや王国に敵なしですな!」
「まさに伝説!素晴らしい」
いや、お前達、目の前の暗殺者どうにかしろよ。彼女のスカートのスリットからざっくり切れる小刀だしてきたらどうするよ。それとも会場内に複数暗殺者がいるのか?俺は引き続き回りを警戒しながら彼女と会話する。
こういう女性にはガツンとかましてやるぜ。もちろんゴーレムがだが。というかゴーレムなしではざっくり殺されそうだ。
「この子達もヤリますけど、私も現役の冒険者でしてね。私自身、多少は(モグラに)噛みつかれても、気持ち良いぐらいですよ?」
「まあ、アルフ様だけでなく、そんな……ゴーレムも!?いや、それは、でも……
えっと……それは……誘って頂けていますのかしら?」
なんと白々しい。こちらがゴーレムを傍に立たせた時点で暗殺者だと露呈しているのが、本人も判っているはずなのに、まだその口を叩くか。ボロがでるまで付き合うつもりはないぜ。
「ええ、宜しければ!私も(ナイフで)刺すのは得意ですから!」
「まぁ!感激ですわ!」
彼女は顔を赤らめて回りも感嘆の声を出す。
そして近くにいるおっさんが声を上げる。
「流石は伝説の魔導士!“じゃじゃ馬の弓隊団長”を口説き落とすとは!!」
「え?弓隊?」
彼女の持つグラス目を向けると彼女は恥ずかしそうにいう。
「ああ、このタコですね。私はこの街の弓隊団長を勤めておりますので、この職業柄……で、では今夜、お部屋にお伺いさせていただきますわ!」
そういうと彼女は恥ずかしそうに会場を出て行った。
あ……あれ?
会場内に帝国の間者が数名おり。
ゴーレムの存在とその万を越す召還可能な情報が帝国に届くのは、翌日の事だった。