16話 俺の知らない魔法の世界
この豪華な馬車は凄い。デロンさんで扱っていた馬車とは雲泥の差だ。
嫌な揺れがなく、乗り午後地が半端なく気持ちいい。魔法書を読むのも捗る。貰った3冊の魔法書は読めば読むほど、いや解読すればするほど興味深かった。1冊は「魔法の特性と戦闘における用途」、2冊目は「王国魔法使いと帝国魔法使いの10の戦い方」、3冊目は「魔法使いの極致と魔導士」。
1冊目と2冊目は魔法使いがどうやって戦えばいいかというテクニック本。面白かったのは“守るべき3原則”という謎の3原則。
「1.魔法使いは絶対に戦闘相手に近づくな。2.魔力の前に地位がありき。3.髭を伸ばせ」
……というもの。
1は解るとしても、2と3が理解できなかった。
地位と髭は何故だ?何か魔力を溜める要素があるのか?とゲアドリさんと翻訳して読み進めていくと「魔法使いは威厳が第一!髭が威厳を加速させる!髭が魔法使いに輝けといっている!」と謎の説明文を見つけて二人して解せない顔をし合った。要は実力より地位や威厳こそが魔法使いの本分だという前世の腐った政治家みたいな事が書いてあった。戦い方も身内名前を叫んだり相手を脅かしたりをしてから行うというある意味驚愕のテクニック本だ。
「“ゴノッ!世界をカエェダァィィィィ、アンダにはワカランデショウンェェ!“とか唱えそう」
「それは有名な呪文なのですか?」
「いや、何でもないです……それよりグアドリさん、この3冊目の魔法使いの極致と魔導士の3章の……」
「ああ、これですね。これはアルフ魔導士様のような鍛錬について書かれている章ですね」
魔法使いが鍛錬の極致に辿りつく称号は魔導士で、火の魔導士は1つの大陸を炎で消滅させ、水の魔導士は1つの大陸を海に沈め、風の魔導士は大陸を砂漠にし、土に魔導師は地面より新たな兵士を作りだすと書かれているとの事。怖いな……他の魔導士。核爆弾みたいじゃないか。
「世界を知らなくてお恥ずかしいですが、その……俺、いや、私以外に魔導士っているのですよね?」
「はい、魔導士の称号を持つ方はいます。ですが、この本に書かれている大陸を消滅させる無理だと思いますよ。王宮最高魔導士ネビート様は火魔法に特化されていますが、小屋程の炎が最高だと聞き及びます。あくまで称号で実際にゴーレムを作り出すというアルフ魔導士様のような方は、まさに伝説です!」
「あ、どうも」
変に恐縮しつつ、その3章を翻訳してもらいながら、意味を聞いて写していく。しかしボウダデさんから譲り受けた石は効果を考えるに、もっと普及してもおかしくなさそうだが。
その答えは4章にあった。
「魔力の拡大、生と死」
魔物肝臓を天日で干し、何か特殊な砂を入れたりしたものを磨り潰したものは魔石に近い効能ながら、食すことが出来る。それを食すことで保持できる魔力が拡大する事ができると書いてあった。また魔物の肝臓も竜などの強い種族ほうが効果あるとの事。これじゃないか?……だが、これなら皆がやってそうだが。説明を読んでいくと森羅万象の英知を有してないと即死するので注意とある。なにそれ!すごく怖い!!
「王宮でも毎年のように高齢の魔法使いが挑戦していますよ。ですが今独りして助かったものは居ませんね。自殺と同じですから。老人以外は禁制の業ですよ」
存命の間に魔導士になりたいと、挑戦するらしい。50年前に1日だけ生きた魔法使いが居たが、それが最高記録だという。じゃ、あれ下手したら死んでいたのか?あれ?それか製法が間違っているとか?それに俺が森羅万象の英知なんて持っているとは思えないが。
この3冊目の「魔法使いの極致と魔導士」は勉強になる。土魔法のゴーレムについても書かれていて、古の土魔法の魔導士は1万を超えるゴーレム兵の軍隊を率いて、大地を制したと書かれている。3体でも難しいのに1万とか無理だろと思いながら翻訳と写しを行う。
御者から声が掛かり、宿泊する宿場町にそろそろ着くという。