12話 悪魔のゴーレム
夜にゴーレム3体を顔や手などをコネコネして形成する。
「これはアルフ魔導士殿、ゴーレムを強化中ですかな」
ガデール男爵と騎士が寄ってきて話しかけて来る。
「いえ、折角ですからもう少し威厳というか見栄えをよくしようかと思いまして」
「そうですか、であれば魔人のような風貌は如何ですかな……フランツ、天幕から北部書をもってこい」
そう言われてフランツと呼ばれた騎士は一冊の本を持ってくる。ガデール男爵がページを開き、これですと見せてくる。え?これ悪魔っぽいけど??
「これは帝国で悪魔とされている絵です。これを真似れば敵兵も恐れるでしょう」
「そ、そうですね……では、やってみましょう」
うん、そうかも知れない。絵を見ながらコネコネ角を作ったり顔を形成した口から牙を出したりする。全体的に鎧を着ているようなディテールにして、爪を尖らせていく。それを見ていた他の騎士が小刀や盾など持ってきてくれるので、調子づいて爪には小刀を仕込み、胸に盾を配置したり、天幕の素材であろう布をマントにしたりと加工して、3体とも身長3メートル程に見るからに恐ろしい悪魔に仕上がった。
「こ、これは怖いですね」
ガデール男爵や騎士が見上げていう。うん、確かに怖いわ、これ。ゴーレムは見事に仕上がった。折角なら馬とか土で作れないか?と地面に手をつけて念じると泥で出来たボロークが出来上がる。
「おお、馬まで作る上げる事ができるとは!」
「いえ、初めて作りましたよ」
人型ゴーレム3体しかコントロールできないが、馬型だと問題なくコントロールできた。考える意識も違うのだろうか?このボローク型ゴーレムをしゃがませて乗ってみる。なかなか壮観な感じだ。
「おお!まるで悪魔の一行のようです!」
「悪魔を引き連れる暗黒魔導士という風貌です!素晴らしい」
ガデール男爵や騎士が言ってくる。
それは褒めているのだろうか……。
休んで翌朝。騎士達は出撃の準備をする。
「あ、私のゴーレムですが、壊されてもまた作る事ができるので、先に行かせていいですかね?」
「ええ、勿論ですとも心強い!」
では、進め!ゴーレムと念じると3対はドガドガと凄いスピードで村のある方向へ駆けていく。乗っているボローク型のゴーレムもこちら向いて僕もいく?というような感じで振り向いてくる。いや、お前はと念じる前に乗っているゴーレムも村へ向って走り出してしまった。ちょっと……なんだろう……これは。あの、ゴーレムのボローク君、止まって。え?やだ?なにゴーレムって意識があるか?
「ガデール男爵!見てください!アルフ魔導士殿が凄い勢いで村へ突進していきますぞ!」
「ああ、さすが伝説のゴーレムを操る魔導士だ!」
「しかし本当に存在していたのですね。ゴーレムを扱う魔導士が」
「私も信じられないが、こうやって目の前にいるのだからな」
魔導士、それは魔法使いの中で極致を収めた者を総称して呼ぶ名。
そしてその中でも“ゴーレムを扱う魔導士”は、王国の歴史の中で数名しか記録のない伝説。膨大な魔力と土魔法が使える魔法使いだけがなれる稀な存在で、その存在自体、数百年は聞かれた事がない。ゴーレムを形成するだけであれば、鍛錬の極致で辿りつく事もできだろう。だがそのゴーレムを人形のように扱うという事は非常に膨大な魔力が必要とされる。1体のゴーレムを半刻の間動かすだけでも、王国の優秀な魔法使いを数百名集めて、やっと行える極致の技。ガデールや騎士達はアルフに逢うや否や気づく。ゴーレム3体を扱う魔法使い……途轍もない魔力を持った魔導士だと。そして神が引き合わせた使者だと。
「皆の者!我々も続くぞ!伝説の魔導士が我らに勝利を!」
「「「「おお!」」」」
「あああ!悪魔だ!悪魔が…グフォ!」
「やめてくれー!ゲファ!」
「逃げろ!にげぇろぉ!悪魔だ!」
「王国は悪魔を召還したんだ!逃げろ!!」
3体のゴーレムが村へ突撃して行き、その後を追って俺の乗馬するボローク型のゴーレムが村に辿りつく。既に殺戮がスタートしていた。当初は何十名の帝国兵が向ってきていたが、ゴーレムが腕を振るう毎に小刀の爪で5~6名の首や頭が輪切りになって飛んでいく。バッサバッサと両手を振り回して、まるでコンバインのように敵兵を狩っていく。いや、この世界にコンバインは無いが。
あっという間、百名近くの敵兵が地面に血のシミを作り、それを見た敵兵は一目散に逃げていく。
そりゃ……怖いよ。これは俺だって怖いよ。こいつら見た感じ悪魔そのものだもの。そしてその殺戮具合は完全に悪魔だしね。
なんかゴーレムの近くに寄りたくないなと考えていると、急に3体のゴーレムがこちらにドカドカと近づいて俺を中心にボディービルのような謎のポーズを取る。
「ひぃー!あいつだ!悪魔の親玉だ!」
「暗黒魔導士だ!に…逃げろー!」
「目を合わすな!呪われるぞ!早く逃げろ!」
「何か恐ろしい魔法を出そうとしているぞ!早くにげろ!」
あれ?お前達、わざとやっているよね。それ。