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チョーノーリョクシャの血脈と残り時間

 料金を精算し、降りたところは三角屋根の斜面がこれでもかと切り立った教会だった。そう大きな建物ではない。戦力を確認しなければならない。敵を見つけなければならない。今崎新は、手ごわいチョーノーリョクシャだ。彼はどの程度のチョーノーリョクシャで、どの程度の仲間を持っているのだろう。魔法使いは、念動力を好きな形に変形する。だから彼らのチョーノーリョクは奇跡の色を帯びている。今崎新はどの程度の魔法使いと組み、そして自己をどの程度まで近しい域に近づけたのだろうか。僕は本物の信仰者について考えていた。僕のような偽物では無く、僕のようなGODに対する畏怖も持つ者では無く、GODに対する真実の愛を持った信仰者について。今崎新。彼は神父だ。彼は、真実の愛を持つにも関わらず、その存在そのものが矛盾であるチョーノーリョクを持つ一人の人間のはずだ。僕は『力』について、『意思』について考えていたのだ。主よ、憐れみたまえ。この豊かなる時代に生きる愚かなる信仰者を、愚かなる畏怖者を。プロヴィデンスこそは全ての彼方を、百億年続く太陽系の全てをさえ見通したもうだろう。我々は、いつの時代だってこういうだろう。この黄金時代に生きる我々こそは主に愛されているのだと。僕は、茫漠たる似姿を瞳の裏でそっと見る。そは、おそらく虚像だろう。僕らはただの人間でただのチョーノーリョクシャに過ぎない。この比較的リアルな世界は夢を見せる。僕ら、金色に輝く現代における日陰者に夢を見せる。さあ。この世界の中心からは程遠い極東の一都市でさえも、僕らに夢を見せてしまうのだろうか。僕は分からない。僕は何も分からない。ただ、時間が無い事だけが分かっていた。

「酷い展開ですね。これは」

 天空の司書様の呟きがもれる。確かに酷い展開だった。姉上の正確過ぎるチョーノーリョクは今崎新の目の前に僕らを放り出し、そうして戦力を探る間もなく、敵がわざわざ残した足跡を追って、ゆったりとしたタクシーで観光気分に御到着というわけだ。時間は二時五分を回ったところだった。残り時間は一時間四十五分。短いようでもあり、長いようでもある。長崎平和記録教会はごく普通の建物の中にある。全き日常の中にあった。昼下がりの二時に巡礼者はいないようだった。それは果たして超能力の無しうるものだったのか、そうでないのか、僕にはわからないことだ。

「酷いかしら。まだ二時間近くあるはずだわ」

 姉上はそう呟いて建物を見上げていた。

「お姉さまは、いつも強気ですわ」

 P・Mのやつが、九条さんが、似合わない敬語を姉上に向かって送呈する。姉上はいつも強い。いつだってそうだった。チョーノーリョクなどというものに頼らずにいてさえそうだった。僕は卑怯者だ。怯懦だ。僕は『力』に依存しきっていながら、『力』を憎んでさえいた。この教会の小さな扉の先にいるのは今崎新だ。彼は飲み込んだものだろうか、飲み込まれたものだろうか。その答えは扉の先にあるはずだった。

 天空の司書が苦笑しながら、扉を開く。

「どちらにしろ。時間は長く短いものです。私たちは予定に沿って動かなければなりません。聖餐式に参加し、今崎新なる人物と対話するにしろ、彼の影を追うにしろ、それは予定通りのことです。姉上殿がいくら無茶苦茶にしようとしても選択肢はたった二つしかないのですよ」

 扉を開いた先では今崎新がマリア像に向かって聖書の一節を読み上げているところだった。偶像崇拝は人の心を落ち着かせる。僕は時々瞼の裏にまします神のことを偶像のように感じ、酷く恐れてしまう。だから、今崎新のように平静な心持ちで祈る人型を見ると、僕の心は憎しみでドス黒く濁ってしまう。

「イエスは『わたしがパン切れを浸して与えるのがその人だ』と答えられた。それから、パン切れを浸して取り、イスカリオテのシモンの子ユダにお与えになった。ユダがパン切れを受け取ると、サタンが彼の中に入った。そこでイエスは、『しようとしていることを、今すぐ、しなさい』と彼に言われた」

 その一節はイエスの破滅を強く意識させる一章だった。今崎新は僕らの姿に気づいていたのだろう。振り返って高らかに謳いあげる。

「メギドの丘よ。最初の弾頭よ。憐れみたまえ。キリストは勝利された。我々邪悪なるものはナガサキにおいて神の光に焼かれた。今、我々は、その御側に侍ることを許されるでしょう。審判の時、我々邪悪なるものは皆裁かれ、地獄に落ちるでしょう。主は、憐れみ深くあられる。なぜならその時地獄という名の奇跡を我々は見るだろうから。超能力者たちよ。神は我が御元に天使を使わされた。彼らは言うのだ。審判の時は近いと」

 今崎新は十字を切る。

「人に与えられし限られた土地を悪魔に売り渡すのが正しい道だと?」

 天空の司書様は、そんな考えを初めて聞いたかのように目を白黒させて、今崎新と、僕のことを交互に見比べた。僕は、この百万進数の百万桁でもって世界をただの数として見通せる即席の家族に見つめられていることを感じると、嫌な物が湧き出てくる。意図してこのエメラルドの瞳を持つ、美しい家族に対して、僕は劣情のような感情を表出させて真意を悟られないように努力した。この美しいセーラー服の女神に劣情を抱くことなんて簡単だ。だって美しいものだから。

「私には神の御心は分かりません。ですが、悪魔は容易く我々を誘惑する。私は、彼ら悪魔でさえも奇跡だと信じることでしょう。もし、我々が悪魔の誘惑に乗ったとして、それがどうだと言うのです。全ては神の御心の内にあるものです」

 今崎新は聖書を折畳んで、再び十字を切る。

「私たちが邪悪だと本気で思っているのね。そして私たちが当然裁かれるとでも本気で思っているのね」

「私は、もう疲れました」

 今崎新は、三度目の十字を切る。

「何が『神の光に焼かれた』よ。あんな物理現象が見たいと言うの? 奇跡があんなことに過ぎないのなら、私はそんな神の近くになんか金輪際寄りたくないわ!」

 姉上の戸惑いと嫌悪感の天秤は結局、嫌悪感の方が勝つのだ。なぜなら、姉上は立派な日本人だったし、立派な女子高生でもあったのだから。僕の心は動揺もしない。GODは畏怖すべきだ。ただ、今の僕にとってGODはそれ以上のものではない。僕の心において今崎新への微かな憐憫の情と顧みるべき一握の砂のような感慨がわいた。ああ。GODは寛容である。GODは余りに寛容でありすぎるから、きっとこの神父の人知れない心の奥でさえも既にして救われているのだろう。

「全てが神の御心の内に在ったものでないとしたら、誰が、彼らを、そして我々を救うと言うのです。私は聖餐式を続けます。あなた方はどうなされる?」

「馬鹿なことを…」

「しばし、強大な神が庇護の元に聖餐を共にしましょう」

 姉上は頭に血が上っているのだろう。天空の司書様がやったように対策は簡単だった。時間を稼いで落ち着くことが第一で、その後で探りをいれるだけだ。基本的に正しい事しか言わない姉上は、頭に血が上ったときだけは、無茶苦茶なことをやらかしてしまう。

「私の天使の長たる彼、彼女との交信が途絶えました。これもあなたたちの力のせいでしょう。私は他の天使たちの言うことはあまり信用していません。ですが、それでも、あなたたちがそう望むのなら、私は彼らを呼び、私たちは地獄に落ちるでしょう」

「神父殿。聖餐を共に」

 ああ。偉大なる魔法使いG・G。かの男装の麗人の力は確かに近しいものがある。僕は、神父が歌うようにラテン語を朗読するのを聞きながら、人と言うものは努力すればどのような事でもできるようになるのだということを思い知らされていた。人はあんなにも長い過去において練り上げられた文章を読めるものなのだ。すべからく努力と年月は人を高みに連れて行くものだ。もし、この世界にチョーノーリョクなどというものが無かったとしたら、そのとき今崎新は、きっと死ぬまで長いラテン語による聖餐式を毎日執り行い続けたことだろう。そして、僕らと、彼との線は交わることも無く、僕らは信仰の上にある一種の煌めきと狂気とを知らずに済んだだろう。彼はみっちり一時間かけて聖餐式を行い、それから、残りの三十分間を説教にあてると言った。一時間もの間、僕はまるで分からない言葉の連続を耳にして首を振るばかりだった。ああ。僕はチョーノーリョクを使い、ラテン語を聞くべきだったのかもしれない。なぜなら、この聖餐式は今崎新にとって最後のものとなるべきものだったから。僕は、このとき、信仰者の声を真剣に聞くべきだったのかもしれない。なぜなら、僕はGODに対して信仰に近いほどの恐れを抱いていたのだから。

「聞きなさい。子らよ」

「聞きましょう。神父殿」

 天空の司書はいちいち反応する。

「ユダヤのヘロデ大王の代に、ザカリヤというアビヤ組の祭司があった…」

 その説教はそんな滑り出しで始まった。ザカリヤとその妻エリサベツに関する短い奇跡の話を神父は語った。僕は、奇跡を無条件に信じるほど子供じゃない。だけど、ああ、どうすればいいのだろう。『力』というものは実に不便だ。知りたくない力の痕跡さえもビジョンとして送り込んでくることに至っては閉口する。

「少年よ。超能力者たちよ。では、あなたがたも奇跡を見ることができますか?」

「うん。見えるよ。今崎さん。ねえ、勇作。ここの神は、先触れまで投入して、そうして、神の子の名さえも与えるほどにまで地上を愛していたんだね」

 僕が返事を返す前に、P・Mこと九条さんが返事を返した。

「強大な神ですね」

 合いの手を打つように天空の司書様は、相も変わらず柔和な微笑みを絶やさずに今崎新に返事を返した。

「私は、信じないわ。天使や神なんて物語の中にしかいないのよ。勇作、あなたまで信じるの? こんな馬鹿げた展開を!」

 姉上はあくまで自分の力以外を信じない人だ。全く、自分の力は信じる癖に他人の力は全く持って信じない人だ。そうして姉上は普通の日本人で普通の女子高生だった。だから、僕は薄ら笑いを浮かべて姉上の断固とした決意を迎えていた。

「僕に言えるのはGODが極めて強力で、きっと最も近しいものだってことだけだよ」

 今崎神父は、微笑みながら中断した説教に、いま伝えられるべき最大の敬意を込めて奇跡を継ぎ足した。

「天使が言った。ザカリヤ、恐れることはない。あなたのかねての祈りは聞き入れられた。妻エリサベツは男の子を産むであろう。その名をヨハネとつけよ。この子はあなたの喜びであり、楽しみであり、多くの人もその誕生を喜ぶであろう。主の前に大いなる者となるからである。彼は決して葡萄酒や強い酒を飲まない。そのかわり母の胎内からすでに聖霊に満たされ、それに酔っている。彼は多くのイスラエルの子孫を彼らの神なる主に立ち返らせるだろう。そればかりか、予言者エリヤの霊と力とを持って主キリストの先駆けをし、父の心ふたたび子に向けさせて家をきよめ、また不従順な者を義人と同じ考えに立ち返らせて、準備のできた民を主のために用意するであろう」

 そうして今崎新は、神父は一拍の呼吸を置いて、満足したように微笑んだ。彼は、何をしようというのだろう。この決まりきった一節を最後になるかもしれない説教の一節に選んだ理由は何があると言うのだろうか。

「可愛そうな人」

 P・Mはぽつりとつぶやいて背を向けた。

「人の身には過ぎたる願いですね」

 天空の司書様はどこまでも傲慢であられる。自分の世界を失っても、この極めてリアルに近い世界へと、ぼつねんと放り出されても、その芯なるところは変わらないようだった。その考えはあくまで高慢であり、圧倒的な偏見と共にあった。

「あきれ果てた人ね。自己投影もそこまでいければいっそすがすがしいわね。あなた自分自身で神の先駆けを気取ろうというわけね!」

 姉上はいつも怒っている。何かに対して怒っている。呆れたことに姉上自身の行動が間違った時には怒ることは無い。さて、それはそれとして、今崎新だ。いまさきしんだ。姉上の言葉にその満足したような笑みは揺るぎもしない。さて、僕自身の感想を言おう。もし、G・Gが天使を気取っているのなら、実際に彼、彼女ができることをこの比較的リアルな世界で示すだろう。つまり、あの大魔法使いは、念動力という名のチョーノーリョクでできるぎりぎりの線までやって見せるだろう。あの大魔法使いなら、奇跡の痕跡を見せることなど容易だ。なぜなら、それは実際に在ったこととされているのだから、その輪郭に沿って物語を構築し、幻影を見せるなど容易なことだ。あるいは、それは実際に起こったことなのかもしれない。それならなお容易なことだ。

「少年よ。あの天使の長を疑っているのですね?」

「違うとは言えません、が」

 僕は誤った。彼は、今崎新は、チョーノーリョクによって連綿たる歴史を見せてくれた。僕が畏怖したのはそれが、僕がいつもたどり着く結論と同じだったからだ。そして、彼はその血族で唯一の超能力者では無い。彼が唯一、奇跡だか、幻影だかの目撃者ではないのだ。彼が唯一のものでは無いのだ。だが、何といったらいいのだろう。彼は過去に生きる人物だった。この世界の中心からは程遠い極東の一都市で起こった歴史に生きる人だった。それは、鉄砲の伝来したころに伝道された一つの教えを信じた故に起こった歴史の必然とも言えた。彼らは奇跡を感じ、触れ、そして自分たちの基盤とした。そして敗れた。敗れた故に彼らはさらに奇跡を信じた。それは、基本的にチョーノーリョクの枠を出ないものだ。ナガサキに落ちた、ぽろぽろと落ちた一つの爆弾が、本当に故郷を焼くまで、彼らは自分自身が見た奇跡を誰にも話そうとはしなかった。話せば死が待っていると知っていて彼らは助けられる命を助けなかった。そして彼らの歪んだ良心はその破壊を奇跡へと簡単に挿げ替えてしまったのだった。主は全ての贖いをしてくれる。だが、神の炎が自分たちを迫害した者たちを焼く光景を奇跡と言ってしまう人間を、その規模をさらに巨大にした再現を望む人間の、その恐ろしいまでの身勝手な審判まがいの罪までも贖ってくれるものなのだろうか。僕は、今崎新の満足そうな微笑みとその考えとを上手く整合させることができなかった。

「私たちは、皆、過去を見、未来を見、生きてきました」

「チョーノーリョクは分子的進化において中立的にしか現れません」

 僕は、ただ、そんな答えだけを返してしまう。今崎新は困ったような顔をしながら、冷静に声を返した。

「私たちの血族は奇跡を夢見続けました。おそらく私が血族に連なる最後の人間でしょう」

 僕は深呼吸する。この神父の言い分にも一部分の真理くらいは含まれている。悲しいことだ。チョーノーリョクは分子的進化において中立的にしか現れない。もし、その遺伝が百億分の一でしか、現れないとしたらそのチョーノーリョクシャは何を信じるというのだろう。自分とは異なるニンゲンを信じるのか、あるいは自分の『力』だけを信じるのか。どちらにしても救いようの無い事だ。分子進化は中立的だ。だから、一度発現したチョーノーリョクは次代にも引き継がれることがある。その遺伝が優勢遺伝だとして、その数がニンゲンに及ぶまで何年かかる。一世代に一人ずつ増えて一人に対して二人が生き残るとすると、二のn乗しか増えない。イエスがもし、特異体質のチョーノーリョクシャであったとして、子供を残したとして、そう、そこまで無理な仮定を押し付けてさえ計算すると、二千年では、その数は二の百乗に過ぎない。たった二の百乗だ。…ん。あれ、これ計算すると今の世界の人口よりも多いよね。僕は、誤った例えを考えていた。だけど一度考えてしまったことは仕方ないので、これはこれで違うことの説明もできるはずだ。そうだなあ、例えば、これを、生物が進化する中で脳神経間のニューロン交換を行うチョーノーリョク生物が現れて、生命爆発が起こった理由付けとしておこう。

 さてと。では、なぜ、僕が考えた理論と違って、手ごわいチョーノーリョクシャが少ないのだろう。それは、ニンゲンが未知のものを嫌うのもあるだろうし、偉くもなんともない血脈でチョーノーリョクの仇花開いたとしても、その血脈が残る可能性が少ないからもある。けれど、一番大きいのは手ごわいチョーノーリョクシャが奇跡を読み取りやすいというのが一番だろう。手ごわいチョーノーリョクシャは過去、未来、現在の奇跡を明敏に読み取ってしまう。そして彼らは夢を見て殺される。僕は身震いする。今崎新の血塗られた家系図は死に満ち溢れている。

「…続きを読みましょう」

 彼は続けた。僕らは聞いた。それだけのことだ。姉上は不満たらたらで聞いて、P・Mは悲しそうに聞いて、天空の司書様は深く頷きながら聞いていた。僕はと言えば、残り十五分を切るまで、ずっと、今崎新のこととチョーノーリョクシャのこととを考えていたんだ。ずーっとだ。僕は、今崎新の血族全てに呪いをかけた大魔法使い、G・G、が幻影を見せたのか、それとも本当の奇跡を見せられたのか自分一人では判断がつきかねていた。だから、僕はただGODを恐れた。天空の司書様の予想する百万進数の百万乗の計算力を持ってしても届かない領域にあるGODのことをただ恐れた。教会は恐れを持つには悪くない場所だ。なぜなら、そこは神の住処だ。だったら、いつかその時を本物のGODが本当に見ていてくれるかもしれないから。残り時間は五分を切った。

 突然、今崎新が十字を切った。一人、ボロボロのコートを着たチョーノーリョクシャが現れた。そのチョーノーリョクシャがにやにやしながら十字を切った。二人のチョーノーリョクシャが現れた。それぞれ全身鎧を着込んだ筋肉質な男と、ガーターベルトを着込んだ見目麗しい女性だった。三人のチョーノーリョクシャが表情豊かにそれぞれ異なった容貌で十字を切った。六人のチョーノーリョクシャが現れた。今や教会には一人の神父と九人の異世界人が立っていた。今崎新は再びマリア像に祈りをささげていた。チョーノーリョクシャたちが、今崎新を守るように展開する。後、三十秒、僕は今崎新が神に祈る前で、何に祈るべきかとそんなことを考えていた。僕は、この世界に対する別れの言葉を口にしようとし、そして、人差し指を口元に押し立てた天空の司書様の姿にぶち当たった。僕が考える間も無く天空の司書様は僕の手を取る。そして、そのエメラルドグリーンの瞳を閉じて、手の甲に軽くキスをした。

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