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第二幕

八重葉「あっづぅーい!」


ペット「これでもまだまだ涼しい方ですよ、ダブルクローバ。今はその“うちわ”で我慢して下さい」


八重葉「これ腕が疲れるんですけど」


ペット「無いよりはましでしょう」


八重葉「どうだかね。この腕の働きで発生している熱と、自分を扇いで冷ましている熱、どちらが(まさ)っているか非常に気になるところではあるけど、あえて深く考えない事にしておくわ。それにしても一体どこまで暑くなんのよ、人間界は」


ペット「気温で言うと、我々の住む世界の倍近く上がる事が予想されます」


八重葉「ば、倍!?」


ペット「はい。四十度近くまで上がる事もあるかと」


八重葉「四十って……私死んじゃうかも」


ペット「そんな簡単には死にません」


八重葉「……物の例えよ」


ペット「さて、ダブルクローバ、そろそろ学校の時間です。チョコミントなんて食べている場合ではありません」


八重葉「分かってるわよ。もう仕度も済んでるから大丈夫よ」


ペット「ああそれから、そろそろあの女の情報も集めなければいけません。二人三脚の練習もいいですが、あの女の恋心が、本当に初恋かどうかの確認を--」


八重葉「はいはいはい。分かってますよペットさん。今日は情報集めに尽力(じんりょく)しますよー」


ペット「宜しくお願いいたします。この人間界で自由の効かない私は、一刻も早く帰る事を所望します。それに毎日飲んでいるトマトジュースにも飽き飽きです」


八重葉「……血と思って大量買いしちゃったんだから仕方ないでしょ。ちゃんと全部飲み終わるまで付き合いなさいよね」


ペット「ダブルクローバが私の言うことを聞いていればこんな事にはなっていなかったかと」


八重葉「あーあ、うるさいうるさい。さ、学校行こー」


----------


SE:チャイム


----------


由里子「よお、八重葉」


八重葉「あ、おはよ」


由里子「今日もやるだろ?」


八重葉「あ、ごめん、今日は練習よりさ、ちょっと話があるんだけど」


由里子「話? なんだよ」


八重葉「まだ内緒でーす」


由里子「何なんだよ」


正孝「おす、由里子が誰かとお喋りなんて珍しいな」


由里子「うるせー」


正孝「八重葉ちゃん、こいつ友達いねーから仲良くしてやってくれな」


八重葉「へえー、友達いないんだ?」


八重葉(心の声)「馴れ馴れしいやつ」


由里子「余計なお世話だよ。私は友達がいないんじゃなくて、友達を選んでるんだよ」


正孝「あーそりゃすいませんでした。で、八重葉ちゃん、何話してたの?」


八重葉「あ、いや、まあちょっとね」


八重葉(心の声)「あなたには関係ありません」


由里子「女子の会話にちょっかい出してんじゃねーよ」


正孝「おお怖。やっぱりヤンキーは怖いなー」


由里子「うるせー!」


八重葉「ねえペット、この二人仲悪いんだけど」


ペット「ケンカをするほど仲が良いものなのですよ」


八重葉「……複雑ね」


先生「はいはーい! 皆さんおはようございまーす! 九家月さん、もう学校には慣れましたか?」


八重葉「え、あ、いや、まだ二日目なので何とも」


先生「あーそうですね。二日目じゃまだ分かりませんよね。じゃあ、また明日聞きますね」


八重葉「……明日も同じよ」


先生「はい、それではホームルーム始めまーす。今日は一つ皆さんに報告があります。実は昨日の放課後に、隣のN高の男子とうちの生徒がケンカをしたようで、私はもう許せなくて--」


正孝「まあケンカはダメだよな」


先生「うちの生徒が負けちゃったのよ! もう本当に悔しくて悔しくて、何でお前はそんなに弱いんだーって怒鳴っちゃって……」


由里子「せ、先生、怒るとこ違うくないか……」


先生「ケンカでの怪我は擦り傷程度で済んだのですが、今は入院中です」


由里子「え、何で擦り傷程度で入院なんだよ」


先生「私がその時殴っちゃったから、テヘ」


正孝「テヘっじゃないですよ先生。で、そいつどの程度の怪我しちゃったんですか?」


先生「それは……内緒です」


由里子「大ケガさせたんだぜきっと」(面白そうに)


先生「お、大ケガだなんてそんな! 全然大した事はないんですよ、ほんと」


由里子「本当かなぁ」(ニヤニヤ)


先生「本当です!」


由里子「冗談だって先生、そんなにむきになるなよ」


先生「大人をからかわないで下さい、まったく。ところで皆さん、アバラって簡単に折れるって知ってました?」


由里子、正孝(二人同時に、心の声)「骨折ったんだー」


----------


SE:チャイム


----------


八重葉「あー、疲れたー! 二日目終わりー!」(疲労)


由里子「お疲れさん。で、何か私に話あるんだろ? 何だよ」


八重葉「あ、ここじゃあちょっとあれだから、昨日の河川敷に行こうよ。今日は私がチョコミントおごってあげるから」


由里子「あ、別のがいいな。私チョコミントちょっと苦手で」


八重葉「キモ!」(間髪入れず)


由里子「何でキモいんだよ」(ちょっと笑いながら)


八重葉「チョコミント苦手なら何ミントがいいの?」


由里子「ミントは確定かよ!」


八重葉「何チョコミントにする?」


由里子「いやだからチョコミントから離れろよ」


八重葉「美味しいのに……」


正孝「あ、二人でどこかお出掛け? いいねえ友達ってのは。で、どこ行くの? 八重葉ちゃんが行くなら俺も行こうかな!」


由里子「お前は来なくていいよ」


正孝「つれないねえ。じゃあ俺は一人寂しくゲーセンにでも行ってきますよ。八重葉ちゃん、また今度ねー」


由里子「へいへい、さっさと帰れ」


由里子(心の声)「おいおい、正孝も八重葉の事気になってんじゃねーのか? 何か八重葉もジーっと正孝の事見送ってるし! 八重葉、お前の気持ちを聞かせてくれー!」


八重葉(心の声)「……ウザ」


由里子「お、おい八重葉。私たちも行こうぜ」(動揺)


八重葉「あ、うん。行こう行こう」


----------


由里子「あー、夕方だってのにあちーなまったく。で、話って何だよ」


八重葉「えーとね、単刀直入に聞くけど、由里子、あんた正孝とかいうやつの事好きでしょ?」


由里子「な、何言ってんだよ、昨日も答えただろ、別に好きじゃないって」


八重葉「本当ぉ?」


由里子「本当だって。疑り深いやつだな」


八重葉「嘘だ」


由里子「何を根拠に言ってんだよ」


八重葉「今度の二人三脚で一位取って、前に告白した時の返事を考え直してもらおうとしてるんでしょ! 分かってんだからね!」


ペット「人の考えを、よくもそこまで堂々と盗めますね」


八重葉「うるさい!」(小声)


由里子「な……何で、分かったんだよ」


八重葉「やっぱりねえ。私、天才だから分かっちゃうのよ、そういうの」(かなり得意気)


由里子「いちいちうっとうしいやつだなお前は。でも、そうだよ。お前の言う通りだ。二人三脚で一位取って、また告白するつもりだ」


八重葉「ですよねー♪ で、由里子に一つ残念なお知らせがあるのです」


由里子「--!? こ、今度は何だよ」


由里子「まさか、やっぱりこいつも正孝の事を!?」(心の声)


八重葉「私、吸血鬼なの」


由里子「は?」


八重葉「吸血鬼。知らない? 人の生き血を吸うやつ」


由里子「そ、それは知ってるよ! 急に変な冗談ぶちこんで来るから突っ込めなかっただけだよ」


八重葉「冗談なんかじゃないわよ。本当に吸血鬼なんだから。で、あんたの心を吸う為に人間界に降りて来たってわけ。まあ、別にあんたのじゃなくてもいいんだけど」


由里子「……吸血鬼なのに心吸いに来たって、何言ってんだよお前。まあいいや、証拠見せろよ」


八重葉「証拠?」


由里子「ああ、お前が吸血鬼だって証拠だよ」


八重葉「じゃああんたの血を吸ってみようか?」


由里子「は?」


八重葉「いただきまーす!」


由里子「お、おいやめろ! 顔近づけるなよ!」


八重葉「証拠見せろって言うから」


由里子「もういいよ、面白くない冗談はやめろよ」


八重葉「だから本当だって言ってるでしょ! あんたの恋心を吸いに来たんだから! その、正孝を想う、初恋をね」


由里子「は? 初恋? 初恋じゃねーし!」


八重葉「え! 初恋じゃないの!?」


由里子「何で初恋だと思ったんだよ。私の初恋は小学生の頃で終わってるよ。……って、何言わせんだよ!」


八重葉「初恋じゃ……ない」(心の声、エコー、絶句)


ペット「おかしいですね。初恋の匂いはしていたのですが、私の間違いでしょうか」


八重葉「ねえ本当に初恋じゃないの? 嘘でしょ、本当は初恋なんでしょ、ねえ、ねえってば」


由里子「うるさいなお前は! 私の初恋は小学二年生の頃に終わってるよ」


八重葉「え、え、え、えーーーー!」(最初の「え」は普通に発声。徐々に強くなり、最後の、えー!はエコー)


由里子「だからうるせえって。何だよ今のエコーは」(前の八重葉「えー!」のエコーの途中で入る。八重葉のエコーを途中で遮る感じ)


八重葉「そ、その時の初恋エピソードを聞かせなさいよ。その素敵エピソードを私に聞かせなさいよ!」


ペット「何をするつもりですか、ダブルクローバ」


八重葉「へへへ、こうなったら、その話をしている時の、由里子の心を吸い取るまでよ。初恋をしている時の気持ちにさせて、隙あらば吸うわ」


ペット「……上手くいくとは思えません、第一その様な、話だけで甦った弱い恋心では--」


八重葉「うるさいわね、やってみなきゃ分からないでしょ」


ペット「……ご自由に」


由里子「そこまで言うなら話してやるけど、大したもんじゃねえぞ」


八重葉「大丈夫大丈夫、人間の恋は素晴らしいんだから!」


ペット「よくもまあいけしゃあしゃあと」


由里子「えーと、どっから話そうかな。私さ、小学二年の頃から書道に通っててさ」


八重葉「ショドー?」


由里子「……早速つまずくのな。習い事だよ、習い事。で、その帰り道にさ--」



場面転換、由里子小学二年エピソード



由里子「かーえーるーのーうーたーがー♪ きーこーえーてーくーるーよー♪」


山内(男の子)「おう、由里子じゃねーか! 習字の帰りか? お前いくつ習い事してんだ?」


由里子「げ、いじめっこの山内。べ、別に、あんたに関係ないでしょ」


山内「お、これ習字道具か? 見せてくれよ!」


由里子「あ、ちょっとやめてよ! 先生に言いつけるよ!」


山内「ちょっと見せてもらうだけだから。へー、こんなんで字書けんのか? ん、何だこれ。うわ、黒い水が出てきた! くらえー!」


由里子「きゃあ! ……もう、服汚れちゃったじゃん、お母さんに怒られちゃうよ……」(泣きそう)


山内「アハハハ! きったねーの!」


ヒーローのお面を付けた謎の男の子、小学二年生、以下ヒーロー(シンさんお願いします)「やい! 女の子をいじめるのはやめろ!」


山内「何だお前、セブンマンのお面なんかつけやがって! 男が女の味方すんのかよ!」


ヒーロー「セブンマンは弱い者の味方なのだ! かかってこい! 悪者!」


山内「誰が悪者だよ! 食らえ! 毒水アタック!」


ヒーロー「あまい! これでも食らえ! セブンパーンチ!」


山内「痛ってえ! 覚えとけよ!」


SE:走り去る足音


ヒーロー「セブンマンは強いのだ!」


由里子「あの、ありがとう」


ヒーロー「礼にはおよばん! 君も強くならなきゃダメだぞ! さらばだ!」



場面転換、現代に戻る


由里子「で、気づいたらずーっと、そのお面の男の子の事が頭から離れなくて。それが私の初恋。ごめんな、つまんなくて」


八重葉「うっうっう、良い話だなあ」(ボロ泣き)


由里子「え!? ボロ泣きやん! 嘘ぉ!」(ちょっと引き気味)


八重葉「ご、ごめんごめん。(ボチボチ泣きやむ)で、その初恋の男の子って誰だったの?」


由里子「さあ、それが結局分からず仕舞いで。もう昔の事だから、誰だったかなんて、今ではまったく気にもならないけどな」


八重葉「あんたも幼い頃から辛い恋愛してんのね、って事でその初恋頂き!」


由里子「くっ! な、何だ!? 急に胸が、く、苦しい……」


八重葉「フフフ、あらあら、苦しそうね。残念ながらあんたの恋心、全部吸わせてもらうわよ」


由里子「く、う、かはっ!」(←このセリフじゃなくてもOKです。とにかく苦しそうに)


ペット「その辺で良いでしょう、あまり吸うと死んでしまいます」


八重葉「オーケー♪」


由里子「ぐはぁっ! はぁはぁはぁ。な、何よ、今のは?」(以下、由里子のキャラ変更、少し品の良いお嬢さん、的な。暫くしたら元のヤンキーに戻ります)


八重葉「フフフフ、ご馳走さまでした、由里子さん。あんたの恋心、全部頂きました」


由里子「え、本当に言ってるの? って、あれ? 何だか気分が良い。気持ちがすごく落ち着いてるって言うか」


八重葉「……はぁ!? 何で気分がいいのよ!? 口調まで変わっていけすかないやつね! あああ! 何だか無性にイライラするわ!」


ペット「……ダブルクローバ、一つ言い忘れていた事があります」


八重葉「何よ!?」


ペット「もし標的に初恋の恋心が無い、もしくは薄い場合、他の、余っている心を吸う事になります。そして、由里子の口調が落ち着いているところとそれを考慮するに、もしかしたらダブルクローバが吸った由里子の心は、この女の奥に眠る、“(よこしま)”な心を吸ってしまったのかもしれません。イライラもきっと、そのせいです」


八重葉「何でそんな事黙っておくのよ! ああ、イライラする!」


由里子「八重葉、大丈夫? 何だか、顔が怖いよ?」


八重葉「……だ、大丈夫よ。ちょっとイライラして、誰か殺したいだけだから」(辛そうに)


由里子「ア、アハハ、じょ、冗談はやめてよ」


八重葉「じょ、冗談。うん、そうね、冗談はやめとこう、かしら。由里子、私もう帰る。これ以上一緒にいたら、由里子の事、殺しちゃいそうだから」


由里子「わ、わかった。また明日ね! じゃあねー!」


SE:走り去る



場面転換



SE:トイレを流す音


八重葉「あー、トイレでココロ吐いたら少しは落ち着いたかも。一時はどうなるかと思ったわよ」


ペット「(わたくし)の、不徳の致すところであります。申し訳ありませんでした」


八重葉「いいのよ、私が無理に吸ったのがいけないんだし。それにしても初恋じゃなかったってのが痛いわよねー。このまま二人三脚やってたって時間の無駄って事じゃないのまったく」


ペット「何とも腑に落ちない所はありますが」


八重葉「もう二人三脚も体育祭もばっくれちゃおっかなー」


ペット「学校のルールには従って下さい。問題は起こしてはいけませんから」


八重葉「……そうだったわね。もう、体育祭終わってから次のターゲット捜すしかないわね」


ペット「早く帰りたいのはお察ししますが、時間はいくらでもあります。次は確実にいきましょう」


八重葉「了解」




SE:チャイム



八重葉「ああ、やっと教室着いたー。何だか最近朝が辛いわね」


ペット「暫く血を吸えていないので、低血圧になっているのでしょう」


八重葉「そんな単純な造りなの? 吸血鬼って」


ペット「貧血で倒れないようにして下さいね」


八重葉「へいへい、あー、超眠い」


正孝「九家月! 由里子見てないか!?」


八重葉「え、まだ来てないみたいだけど、どうしたの?」


正孝「今朝、うちに由里子のお父さんから連絡があったんだ。昨日から由里子が帰ってないけど、俺の家に来てないかって」


八重葉「え! 昨日は夕方に別れたから、どんなに遅くても夜には帰ってるはずだけど」


正孝「そうか。……心配だな。昨日、由里子何か変わったところとか無かったか?」


八重葉「え、変わった、事? え、えーと、そう言えば、一つ……」


正孝「何? 教えて!」


八重葉「由里子が妙に大人しくなったって言うか、少女キャラになったって言うか……」


正孝「へ?」


八重葉「何だか牙が抜けた感じになってた……かな」


正孝「由里子が大人しいって……一体何があったんだろう」


八重葉「……何があったんだろうね」(若干棒読み)


ペット「ちょっと、心配ですね」


八重葉「うん、どうしちゃったんだろう」


先生「はいはーい皆さんおはようございまーす! それではホームルーム始めます! 九家月さん、もう学校には慣れまし--」


八重葉「まだ慣れてません」


先生「はい了解でーす♪ えー、実は今朝、素暴さんのご家族の方から連絡がありまして、昨日の夜からずっと素暴さんが帰っていないようです。誰か何か知ってる人いませんか?」


八重葉「あの、私昨日夕方までなら一緒にいました」


先生「あら、何時頃までですか?」


八重葉「えーと、五時過ぎだったと思います。でも別れてからは会ってないので、それ以降はわかりません」


先生「そうですか。えー先生は素暴さんを他の先生と捜しますので、一時限目は自習になります! それじゃあ、あとは日直さんに任せまーす!」


ペット「(わたくし)の嗅覚であれば、彼女の居場所くらい分かりそうですが。捜しますか? ダブルクローバ」


八重葉「そうね、由里子がいないとチョコミント買って貰えないし、捜しに行きますか」


正孝「由里子捜しに行くのか? それなら、俺も一緒に行く!」


八重葉「……邪魔にならないようにね」



場面転換



ペット「んー、徐々に強くなってきました、次の交差点を右です」


正孝「おい九家月、さっきから歩いてるだけで、由里子の事捜してるようには見えないんだけど」


八重葉「うるさいわね、こっちに彼女がいるのよ」


正孝「え、何で分かるんだよ」


八重葉「……女の勘よ」



場面転換



ペット「ここのようですね」


八重葉「ここにいるんだって。女の勘がそう言ってるけど」


正孝「ここって……N高じゃないか。うちの生徒がここの生徒と喧嘩したって、ホームルームで言ってたな。……あ! そういや、由里子も先月ここの生徒と喧嘩して、一人病院に送ったって言ってたな」


八重葉「そうなの?」


正孝「ああ、ここの藤原ってやつで、ヤンキーどもを牛耳ってるやつだよ。由里子のやつ、空手やってる上に喧嘩っ早いからな。もしかしたら、それと何か関係あるのかもしれない」


八重葉「じゃあ早速捜してみますか」


正孝「ちょっと待った。この制服だから堂々とは入れないよ。裏から忍び込もう」


八重葉「めんどくさいなあ」



場面転換



ペット「ダブルクローバ、どんどん近付いています。そこの建物の中のようですね」


八重葉「了解。正孝君、由里子あそこにいるみたい」


正孝「体育館? 何であんな所に。てか、本当に、どうして分かるんだよ」


八重葉「……女の、(みさお)よ」(操よ、はかっこつけて)


正孝「……何言ってんだよ」



場面転換



正孝「体育館、広いなあ」


ペット「ダブルクローバ、ステージの下へは入れますか?」


八重葉「ねえ正孝君、あそこのステージの下って入れるのかな?」


正孝「え、うん、多分入れると思う。行ってみるか」


八重葉「あ、あった、扉だ」


正孝「鍵、掛かってるな」


八重葉「鍵なんて持ってないよ……。壊していい?」


正孝「はあ? 壊すって、どうやって? ハンマーとかあるのか?」


八重葉「こうやって……、く、硬いわね、この、やろ!」


SE:軽い破壊音


正孝「……マジかよ」


ペット「この中にいるみたいですね。ですが、匂いが非常に薄いです」


八重葉「由里子、いるの? ああ! 由里子!」


正孝「おい由里子! 傷だらけじゃないか! しかも縛りつけられて。大丈夫か!? 今ほどいてやるからな」


由里子「ああ、正孝、か。ちきしょう、藤原にやられた。昨日は何だか体が動かなくて、やられ放題やられたよ、ハハ、情けない」(傷だらけ、辛そうに)


正孝「九家月が見つけたんだぞ、お前の事」


由里子「おう、八重葉、サンキューな」


八重葉「チョコミント、食べたかっただけだから」


由里子「まったく、調子いいなお前は。ん? 誰か来るぞ、きっと藤原だ! 二人とも隠れろ!」


八重葉「え、別に隠れなくても--」


正孝「こっちだ!」


八重葉「え?」





最終幕へ

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