第一幕
「九家月八重葉、吸血鬼により、初恋禁止」
COLORS様ボイスドラマ台本
第1幕
ペット「--と、言う訳でダブルクローバ、あなたも次の満月で200の歳を数えますので、人間界で修行をして頂きます」
八重葉「……めんどくさいなあ。大体何でこの国を治めているセプトンブル家の一人娘であるこの私が修行しなくちゃいけないのよ」
ペット「国を治めているのがダブルクローバ、あなたではないからです」
八重葉「……そ、そりゃそうだけどさ。それにしても、役得というか、そういうのあるでしょ、普通」
ペット「はい、本来であればセプトンブル家の人間は、座学でのみ今回の修行を修了します。ですがダブルクローバ、あなたは先月に隣国のオクトーブル国を一人で潰してしまいました。いくら抗争中と言えども、休戦中の急襲は厳禁です。それにダブルクローバもまだ戦線には立てない歳なのです、処罰の対象になるのは当たり前です」
八重葉「だって、暇だったんだもん。大体あんな弱っちい国相手に、なに手をこまねいていたのよ、うちの兵士たちは」(だって~はふくれっ面で。大体~は少し怒って)
ペット「皆がダブルクローバの様に強いわけではないのです。ご自分が吸血界でトップクラスの戦闘能力を身につけている事を自覚して下さい」
八重葉「……はいはい。ところでペット、人間界の修行って辛いの?」
ペット「勿論でございます。 今はそうでもないと聞きますが、私の時代の人間界は、それはそれは厳しゅうございまして、当時として--」
↑八重葉はペットの話を被せて遮る。↓
八重葉「あーはいはいはい、もうその話は何百回何千回って聞いたわよ。結局そこにいた人間に恋しちゃった話でしょ? もう耳にタコどころかイカやウニが出来そうなくらいよ。てか、人間界に降りて頑張っても、結局ペットみたいに雇われメイドになるんだったら、骨折り損もいいとこだと思うんだけど」
ペット「その方は名を喜多方正代様と申しまして、バスケットボールに勤しむ素敵な男性で--」
↑八重葉、再び被せて遮る↓
八重葉「だから分かったって! 大体吸血鬼が人間に惚れるなんて聞いた事ないわよ。吸血鬼の恥さらしよまったく」
ペット「恐れ入りますが、人間も悪くないものですよ、ダブルクローバ」
八重葉「ふーん、私は人間なんて興味ないし。て言うかさ、何で吸血鬼はわざわざ人間界に降りてまで修行しなくちゃいけないわけ? こっちの世界だけでわちゃわちゃ楽しくやってればいいじゃない」
ペット「それはなりません」
八重葉「だから何でよ」
ペット「はい、ダブルクローバ、それは遥か古の刻より、我々吸血鬼にはココロが無いとされておりました。そしてそのココロを補う為、人間と触れあうことが--」
八重葉「何だか……長くなりそうね」(心の声、エコー)
ペット「大切なのです」
八重葉、話の続きを暫く待つ。(3秒程度)
八重葉「あ終わり?」
ペット「はい」
八重葉「それ本当に行く必要あるわけ?」
ペット「はい。まあ我々吸血種族としては、人間の“初恋”を吸い取るところを目的としていますが」
八重葉「初恋か。人間ってみんな平和ボケしてそうで嫌だわ」
ペット「そうは言っても、恋愛とは難しいものなのですよ、ダブルクローバ」
八重葉「あー、その手の話ならパス。で、人間の“初恋”を吸い取ればすぐに戻って来られるの?」
ペット「はい、その通りでございます。ですが逆を言えば、それを成さなければ一生人間界で過ごすはめになるということになります」
八重葉「……そうなったら舌噛んで死ぬわ。で、どうすればその人が恋してるかどうかなんて分かるの?」
ペット「それは聞く他ありません。その人、又はその界隈の人に、誰が誰を愛しているのか等を聞き、情報を集めるのです。本人にすんなり聞くことが出来れば早いのですが、人間というものは、なかなかその類いの事に関しては口が堅いのですよ」
八重葉「恋愛って何だか面倒臭いのね」
ペット「はい。しかし人間のそう言ったものを観察するのも、なかなかに楽しいものですよ」
八重葉「ふーん。で、私に初恋を吸い取られた人間はどうなるの?」
ペット「はい、吸い取られた人間は、その人を好きだった感情そのものを失いますので、その恋は、はなから無かった事になります」
八重葉「元々、何とも思ってなかった人と同じ扱いになるって事?」
ペット「その通りです」
八重葉「じゃあ、次好きになった人が初恋の人になるのね」
ペット「いいえ、吸血鬼にココロを吸い取られた人間は、二度と恋をする事はありません」
八重葉「それって、私ってば超危険人物になっちゃうのね」(楽しい)
ペット「人物ではなく、種族的には魔物です」
八重葉「……いちいちうるさいわね。ああ、私の周りで初恋は厳禁ってわけね、フフフ」(私の周り、からは楽しんで)
ペット「そう言うことです。それから、人間界でのトラブルは避けて下さい。そうなってしまえば、即人間界での永住が決定してしまいます」
八重葉「えー! それだけは勘弁だわ! トラブルって例えば?」
ペット「そうですねえ、例えば、盗みを働いたり、もしくは誰かを怪我させたりだとか、そんなところですかね。怪我も程度によりますが」
八重葉「き、気を付けるわ」
ペット「それと、私の様に人間に恋をしても、強制的に戻され、二度とココロを補えなくなってしまいますのでご注意を」
八重葉「あ、それはないから大丈夫。ところでさ、ペットって今何歳だっけ?」
ペット「次の満月で322を数えます」
八重葉「じゃあ、120年くらい前に人間界に降りたのね」
ペット「はい、懐かしゅうございます。また下へ降りて、街を練り歩きたいものです」
八重葉「街?」
ペット「ええ、人間界には街と言うものがございまして、こちらで言う市場が、世界中から一ヶ所に集められた様な場所にございます」
八重葉「ふぅん、要するに、とても大きいのね」
ペット「はい。そこは人々が集まり賑わい、とても楽しい場所です」
八重葉「へーえ。また行きたいんだ」
ペット「叶うならば、今一度」
八重葉「じゃあ、私の代わりに行っちゃう?」(ニヤニヤ」
ペット「そうしたいのは山々ですが、奥様に知れたら--」
八重葉「いいのよ、お母様には黙っておくから! 私はその間、雲隠れで一人暮らしを満喫するわ! 人間の初恋を吸い取って絶望させるのも捨てがたいけど、夢にまで見た一人暮らしには代えられない! 降りたかったあなたも幸せだし、一人暮らしが出来る私も幸せ、みんなハッピーよ!」
ペット「そ、それでは、来月より不肖このペットが、人間界へ降り、120年前のリベンジを果たしてきます」
八重葉「イエース! それじゃあバッチリやりなさいよー!」
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TC(八重葉)
COLORSプレゼンツ「九家月八重葉、吸血鬼により、初恋禁止」
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八重葉「あーこのチョコミントとかいうアイス最高! この朝の涼しい風が更にミントの香りを引き立たせるわ。人間界も捨てたもんじゃないわねー、って、何で結局私も人間界に来てんのよ!」(って、何で--から急に不機嫌)
ペット「はい、ダブルクローバ、私たちの綿密なwinwin計画が、奥さまの耳に届いてしまったからでございます」
八重葉「正解。耳に届いてしまったどころか、あの時私たちが話してるのを直に聞かれてたっていうね」
ペット「世知辛い世の中です」
BGM:ヘンテコな音楽(後程選曲します。)
八重葉ナレーション
「と、言う訳で、結局私も人間界に降りる事となってしまった。学校(←「ガッコウ」はうんざりしながら)とかいう、毎日通わなければいけない場所の地図と道具を一式渡されると、昨晩、大きな屋敷へと落とされてしまった。(「学校」からここまでは全体的にウンザリしながら。)
そして、今日は記念すべき人間界初日の朝、と言うわけだ。(ヤレヤレ)
名前も、本名の「セプトンブル・ダブルクローバ」から、日本で通用するように、数字の九に、家、それから月日、の月、を連ねて「九家月」で、「くげつき」と、してみた。これは「吸血鬼」を無理矢理漢字に割り当てたモノでもある。私としてはなかなかお気に入りの名前だ。
そしてペットも、念願叶って私と一緒に人間界へ落とされたが、彼女には「単独行動禁止」という厳しい制限が付いてきた。飽くまで私の世話役、という訳だ。目の前に広がる街並みを目の前に、自分の好きな様に行動が出来ないのはさぞかしもどかしい事だろう。
ここへ降りてきてすぐ、屋敷から出ようとして雷に体を貫かれた事は言うまでもない。ペットの事を想い少し夜道を歩いてはみたが、何とも明るすぎて、まるで陽がずうっと登っているかの様な錯覚に陥ってしまった。
そしてもう一つ、ペットはどうやら他の人には見えないらしく、私の側をついて歩くだけの役立たずメイドとなってしまった。
(前の「~となってしまった。」からあまり間を開けずに切り出す)ああちなみに、ペットが120年前に人間界へ降りた時から、こちらでは20年程しか時間が経っておらず、“セイレキ”とか言う年の数え方で、2015を数える年に位置を付けていた。思っていたより時間が経っていなかった事もあって、「喜多方正代様はご健在でしょうか」と、ペットはいちいちうるさかった。」
ペット「ところでダブルクローバ、学校までの道のりは分かりますか」
八重葉「ねえ、そのダブルクローバっての、こっちではやめてくれない? 八重葉って呼んでよ。せっかくダブルクローバの和訳を考えたんだから」
ペット「それ考えたの私です」
八重葉「うるさいわね、私が四葉のクローバーって単語出さなかったら思い付かなかったでしょ?」
ペット「で、道のりは分かりますか」
八重葉「……都合の悪い事は聞こえないみたいね。まあ、途中まで地図通りに進めてたから問題ないとは思う。……地図に唯一明記してあった、この「アイス屋さん」ってのが気になって寄り道した以外は順調よ」
ペット「それは何よりです」
八重葉「それにしてもさあペット、見つかるのかねえ、恋をしている人なんて」
ペット「初恋です、ダブルクローバ。初恋以外では意味がありません」
八重葉「分かってるわよ。んー、初恋って事はさ、幼い子が対象なのかな?」
ペット「そうですね。一概には言えませんが、その可能性が高いかと思われます」
八重葉「ちきしょう、さっき見かけた黄色い帽子被った子たち、全員取っ捕まえて吸っとけばよかった。一人くらい当たりがあったかも」
(間)
ペット「……鬼ですね」
八重葉「吸血鬼ですから。それにしてもこの制服とかいうやつ、どうも着心地悪いわね。好きな服に着替えたいんだけど」
ペット「ダブルクローバの通う学校の義務服ですから我慢して下さい。その服以外での学校の出入りは禁じられております」
八重葉「人間界も厳しいのね。ああ、それにしても本当にこのチョコミントとかいうの美味しいわ」
ペット「おえ、よくそんな臭いのキツい物食べられますね。こちらまで臭いが漂ってきます」
八重葉「あら、良い香りじゃない。私みたいな可憐な少女にはうってつけの食べ物だわ」
ペット「よく聞こえませんでした」
由里子「あー、遅刻遅刻ー!」
八重葉「きゃあ!」
由里子「うわぁ!」(二人ぶつかる、ほぼ同時に発声)
由里子「うえー! アイスがシャツについちまったじゃねーか! きたねーな!」
八重葉「ちょ、ちょっと! 私のチョコミント落ちちゃったじゃない! どうしてくれんのよ!」
由里子「はぁ!? どうしてくれんのよはこっちのセリフだよ! このシャツどうしてくれんだよ! まず謝れよ!」
八重葉「何こいつ! この私にぶつかっておいて謝るどころか、謝罪を求めるなんて! 大体何なのよ、その真っ黄色の変な色の頭は!」
由里子「金だよ、金! 金髪だよ!」
八重葉「はぁ!? 全っ然金色じゃないじゃない! しかもパサパサしてて何だか汚いし。臭そうー。私のこの艶やかな黒髪を見習いなさいよ。フンッ」(私のこの~は得意気)
由里子「んだとコラ! 痛い目見てーのか!」
八重葉「は、はあ!? 今私に向かって痛い目見てーのかって言ったのこの女!? 嘘でしょ!? よりにもよってこのセプトンブル家の私に向かって!? もう、頭来た、痛い目見るのはどっちかしらね!」
由里子「お前こそそんな口聞いて、潰しちまうぞ」
八重葉「つ、つつつ、潰すぅ!? あんたなんかに潰されるようなやわな作りはしてないわよっ!」(怒り)
由里子「私も舐められたもんだな。これでも去年は空手の全国で優勝してんだよ私は。この場で潰してやろうか、あん?」
八重葉「っはぁ!? 何なのこのクソ生意気な態度は! お前こそ潰してやろうか!」
ペット「ダブルクローバ、おやめ下さい。あなたがやったらこの女は即死してしまいます(ひそひそ)」
八重葉「殺しなんてしないわよ!」
由里子「あらら、私殺されちゃうの? おー恐(おちょくる様に)。それじゃあ行くぞ!」
SE:パシッ!(由里子のパンチを捌く音)
八重葉「甘い!」
由里子(心の声)「なっ! 私の正拳を捌いた!?」
八重葉「パンチってのは、こうやんのよ!」
由里子(心の声)「くっ、ゼロ距離! ヤバい!」
--ちょうど学校のチャイム鳴る
ペット「ダブルクローバ! そこまでです」(ダブルクローバ!は少し大きめの声で、そこまでです。は静かに)
八重葉「え!?」
SE:ぺち(八重葉のパンチ当たる音、非力)
由里子「あぁ? 何だよそのへなちょこパンチはよっ!」
SE:八重葉殴られる音
八重葉「い、いったー!」
八重葉「ちょ、ちょっとペット! 急に叫ばないでよ!」(ひそひそ)
ペット「学校に間に合わなくなってしまいます」
由里子「まったく、私に喧嘩売るとこうなるって事だよ。気を付けな」
八重葉「うるさい!」
由里子「シャツのクリーニング代絶対もらうからな! じゃあな!」
SE:足音
由里子(心の声)「何なんだよまったくあいつ。……顎に綺麗に入ったのにグラつきもしなかった。普通なら確実に落ちてたはずなのに。それに、鉄でも殴ったみたいに拳がいてえ。あいつ……ちょっとヤバいかも」
--SE足音
ペット「行ってしまいましたね。ダブルクローバ」
八重葉「いけすかない奴!」
ペット「さあ、我々も向かいましょう。指定の時間が迫っています」
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--チャイム
先生「はーい、それじゃあホームルーム始めるわよー! 席に着いてー! 今日は編入生がいます。九家月さんどうぞー」
八重葉「はい」
野次(数人の男子)「お、可愛いんじゃね?」「俺タイプかも」「彼氏いんのかな?」「クラスの女子より可愛いよな」等など、ざわつき。(違和感なく男声でざわついてる感じができれば、ここも録音をお願いします。)
女子「男子うるさい!」「可愛くなくて悪かったわね!」「なんなのよ!」等など。ざわつき。(これも男子野次と併せてお願いします)
先生「はいはい皆しずかにー!(←ざわつきが録れた場合のみ)それじゃあ九家月さん、自己紹介をお願いします」
八重葉「あ、はい。九家月八重葉と言います。えーと、お父さんの転勤で、この学校へ来ました。宜しくお願いします」
ペット「何のオリジナリティも無い、完璧な台本通りのセリフでした。さすがです」
八重葉「それ褒めてんの?」(イライラ)
先生「えーと、それでは、九家月さんは、あそこの素暴さんの隣の席に着いて下さい」
八重葉「素暴?」
先生「はい、あそこの、ジャージで寝ている女の子の隣です」
八重葉「分かりました」
先生「はーい、それでは改めてホームルーム始めまーす」
八重葉「素暴さん、これから宜しくね」
由里子「何だようるせーな、静かに寝かせろ--! お、お前は!」
八重葉「あ、あー! あんたは!」
先生「あら、二人は知り合いなの? 丁度良かったわね」
由里子「し、知り合いって言うか!」
八重葉「何であんたがここにいんのよ!」
由里子「お前こそ、何でいんだよ!」
八重葉「わ、私はお父さんの転勤よ!」
由里子「私はお父さんの転勤よ」(ふざけて八重葉の真似する)
八重葉「ウッザー! 何なのこいつ!」
先生「仲がいいのねー、良かったわ。はーい、それじゃあ今度の体育祭なんだけど、うちの学年は二人三脚をする事になりました」
由里子「は!? だっる! 二人三脚って」
八重葉「二人三脚?」
ペット「二人が肩を組み、お互いの内側の足を結び付けて、息を合わせて走る競技です。何組か一斉にスタートして、その速さを競います」
八重葉「……ふぅん、変なの。てかさペット、体育祭って何なの?」(てかさ~、はひそひそ)
ペット「この学校の行事です。個人の走る速さやチームの団結力を競いあう、小さな大会の様なものです。以前 私も経験しました」
八重葉「へぇ」
由里子「なあ先生ー」
先生「はい、素暴さん、何でしょう」
由里子「それって強制なの? 私やりたくないんだけど」
先生「もちろん強制です。やりたくなくてもやって下さい」(笑顔)
由里子「えー、めんどくさい。先生、私絶対やらないから」
先生「ダメです、必ず全員参加です♪」
由里子「やらねーって言ってんだろ?(静かに怒)」
先生「ダメです、やって下さい♪」
由里子「だからやらねーって(怒)」
先生「ダメです♪」
由里子「やらねーって言ってんだろ!」(キレる)
先生「ダメです♪」
正孝「うるせーよ」
由里子「あ、正孝、起きてたのか」
正孝「隣のやつがうるさかったからずっと起きてた」
先生「古賀君からも言ってあげて下さい。素暴さんが、二人三脚やってくれそうにないんです」
正孝「え、先生こいつと二人三脚したいんですか?」(笑いながら)
先生「ち、違います! 今度の体育祭でうちの学年が二人三脚をやる事に決まったんですぅ!」(むきになって)
正孝「アハハ、冗談ですよ先生、ちゃんと聞いてましたよ。で、何でやりたくないの? 由里子は」
由里子「めんどくさいからだよ。他のやつらでやってりゃいいんだよ。肩組んで仲良くえっちらおっちらよ」
正孝「お前は相変わらず非協力的だな。たまには先生の言うことを素直に聞いたらどうだ」
由里子「めんどくせーってのが素直な気持ちなんだよ」(ふて腐れ)
先生「困りましたねえ」
八重葉「ねえペット、二人三脚って面倒臭いの?」(ひそひそ)
ペット「見たことはありますが、やった事はありません。非常に走り辛そうでした」
八重葉「ふーん。肩組んで内側の足をねえ……まぁ、確かに面倒臭そうね」(一人言)
先生「九家月さんも、早速で申し訳ないんだけど参加してもらいますね♪」
八重葉「え、あ、はい! 勿論です!」(元気に)
八重葉「だっるー! 私その体育祭自体出なくないんですけど!」(心の声、エコー)
正孝「お、流石に優等生は違うねえ。九家月さんは頭も良さそうだし素直そうだし、どっかの不良とは違うな」
由里子「うるせー!」
正孝「おい由里子、もしお前が今度の体育祭の二人三脚で一位になれたら、この前の返事、考え直してもいいぞ」
由里子「……ん、まじかよ」(若干照れ)
八重葉「この前の、返事?」
正孝「ああ、この前こいつ、俺に--」
由里子「だー! うるさい! 言うな!」(正孝の言葉をかきけす様に)
八重葉「ねえ、何なの? この前の返事って」
由里子「お前は知らなくていいよ!」
八重葉「ねえ教えてよー」
由里子「な、何だよしつこいな!」
正孝「何赤くなってんだよ?」(笑いながら)
由里子「うるさい!」
ペット「なるほど、ダブルクローバ、分かりました」
八重葉「え、な、何が分かったのよ」(ひそひそ)
ペット「この女、この正孝という男に恋をしているようです」
八重葉「え! こいつがぁ!?」(小声)
--チャイム
先生「はーいそれではホームルームを終わりまーす。今日も一日元気に過ごしてねー!」
--場面転換、チャイム
八重葉「あー疲れたぁー! 授業って疲れるんだねペット。さ、帰ろうかね」
ペット「そうもいかない様ですよ」
八重葉「え?」
ペット「あの女がこちらへ来ています。何か話があるようですね」
由里子「なあちょっと九家月、お前放課後、何か用事あんの?」
八重葉「何よ、別に無いけど」(ツンツン)
由里子「じゃあ私に付き合いなよ」
八重葉「……えーと、あ、ごめん、今急用入ったわ」(えーと、あ、ごめん、は何か言い訳を考えながら)
由里子「嘘つけ! 今この瞬間のどのタイミングで用事入ったんだよ!」
八重葉「チョコミント食べなきゃいけないのじゃお先にー」(どこでも区切らず棒読み。逃げる様に)
由里子「ちょ、ちょっと待てよ! じゃあ私に付き合ってくれたらチョコミント買ってやるから!」
八重葉「私をチョコミントなんかで釣ろうだなんて、ハハ、私も随分と安く見られたものね」(「ハハ」は感情のない笑い。本当にただ「はは」と発音するのみ)
由里子「何だよ、じゃあ付き合ってくれねーのかよ」(ふて腐れ)
八重葉「付き合うわよっ!」(即答)
--場面転換
八重葉「んで、こんな河川敷に連れて来て何するつもりなの? 私を潰すつもり? それでもいいけど、ちゃんと自分の墓穴は掘ってきたのかしら?」(威圧感たっぷり、急なお姉さんキャラ、見下す様に)
由里子「アイス食い終わった途端不機嫌なんだな。そう言う事じゃなくて、今度の体育祭の二人三脚、お前と私がペアなんだよ」
八重葉「はい? 寝言は寝て言ってくれるかしら? なんなら、一生眠らせてあげてもいいけど」(引き続き見下し)
ペット「お言葉ですがダブルクローバ、一生眠らせるという言葉、ちょっとおかしいです 」
八重葉「え、そう?」(キャラいつも通りに戻る)
ペット「はい、この場合「眠らせる」は、「殺す」という意味なのに、「一生」と付けるのは変です。今のダブルクローバの言葉、言い換えると「死ぬまで殺してやる」という意味になります」
八重葉「……何言ってんのよ」(ひそひそ)
由里子「何ゴニョゴニョ言ってんだよ」
八重葉「ね、意味わかんないよね」(←八重葉は、由里子がペットに向かって「何ゴニョゴニョ言ってんだよ」と言ったと勘違い)
由里子「……は?」
(間を開けず、由里子の「は?」のすぐ後に八重葉の「は?」を切り出す。)
八重葉「……は?」
八重葉「あ、いや……何でもないわよ!」(あ、いや、で我に返って、「何でもないわよ」で突然キレる)
由里子「何怒ってんだよ」
八重葉「で、私とあんたがペアだから何だって言うの?」
由里子「練習するんだよ、二人三脚の」
八重葉「練習?」
由里子「ああ、紐も職員室から借りてきた」
八重葉「……ひ、紐ぉ!? な、何に使うのよ! この変態!」(身を守る様に警戒)
由里子「あ、足結ぶに決まってんだろ! 何考えてんだよまったく!」(動揺)
八重葉「あ、ああ、足をね、なるほどね。そ、そうよね、足を、結ぶのよね、うんうん、知ってた知ってた」(一人でブツブツ呟き、何となく疲れ)
由里子「……大丈夫かよ? で、何としてでも一位を取る!」
八重葉「え、何でよ、あんた全然やる気無かったじゃん」
由里子「う、うるさいな、気が変わったんだよ!」
八重葉「それは何より。でも私はパス。体育祭だっけ? そんな下らない行事にいちいち付き合ってる時間なんて、私には無いの」
由里子「……そうかよ」(落ち込み)
八重葉「そゆこと、じゃあねー」(軽くあしらう感じ)
--少し間
由里子「……待てよ! 頼む! この通りだ」(苦し紛れ)
八重葉「ちょ、ちょっと何土下座してんのよ! 頭上げなさいって! 恥ずかしいでしょ!」(由里子の腕を掴んで体を起こそうとする)
由里子「……お前が首を縦に振るまで、頭は上げない」
八重葉「(諦め)まったく、強情なんだから。でもそんな事言ったって、私は練習には付き合ってあげられないから」
ペット「ダブルクローバ、手伝ってあげてはいかがですか? この女があの正孝とかいう男を想っている気持ち、もしかしたら初恋かもしれません」
八重葉「え、そうなの!?」(ひそひそ)
ペット「私の推測が当たっていれば、ですがね」
八重葉「……うーん、こいつがねえ。この年で初恋だなんて、そんなウブな女には見えないんだけど」(心の声、エコー)
由里子「お、お願いします」(言いにくそうに)
八重葉「私にあそこまで牙を剥いていた素暴由里子がここまでするなんて……本当にそうなのかもしれないわね。(心の声、エコー)よし! いいわ、やってあげる!」
由里子「ほ、本当か!」
八重葉「ただし! 条件があるわ」
由里子「お、おう、条件なら何でも飲む! もう一本チョコミントか!?」
八重葉「だから! 私をチョコミントなんかで釣れる女だと思わないでくれる!?」
由里子「じゃあ毎日チョコミントでどうだ?」
八重葉「早く足結びなさいよっ!」(即答)
--以降、徐々に音声絞り
八重葉「あなたいいアスリートになれるわよ」
由里子「二人三脚のアスリートって何だよ」
八重葉「オリンピックだっけ? いけるんじゃない?」
由里子「二人三脚でオリンピックとかねーわ!」
八重葉「一緒に目指してみる? 二人三脚フルマラソンとか」
由里子「殺す気か!」
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八重葉「いち、に、いち、に、いち、に!」
由里子「いち、に、いち、に、いち、に!」(二人の声合わせる)
ペット「ダブルクローバ、私の推測を聞いて下さい。恐らくこの女、あの正孝という男に以前告白をして破れているのでしょう。それで、この二人三脚で一位を取ることが出来れば、その返事を考え直してくれると、朝にそう言っていたのかと思われます」
八重葉「あーもううるさいっ!」
由里子「あいててて! な、何だよ突然! 急に止まるなよ」
八重葉「ああ、ごめん、こっちの話」
ペット「結構自信のある推測なんですよ」
八重葉「その推測が当たっていたら、私はこの素暴由里子に一位を取らせて、正孝と成就した瞬間にその恋を吸えばいいのね」(ひそひそ)
ペット「その通りです」
八重葉「フフフ、完璧ね」(完全に悪役、悪そうに)
由里子「お、おい何だよ気持ち悪ぃーな。走りすぎておかしくなったか?」
八重葉「な、何でもないわよ」
由里子「怪しいやつだな……。それにしてもお前、見かけによらずタフなんだな」
八重葉「そっちこそ、なかなか体力あるじゃない。ってか、二人三脚って本当に走りづらいのね」
由里子「そうだな、掛け声があっても、一回バラけだすとなかなか修正効かないしな」
八重葉「そうそう。(少し間)でも、ちょっと楽しいかも(ご機嫌)」
由里子「そうか?」
八重葉「うん、二人三脚初めてやったから」
由里子「はぁ? 二人三脚初めてとか、今まで小学校とかでもやったことないのか?」
八重葉「うん、てか小学校とか行ったことないし」
由里子「はぁ!? お前義務教育は!?」
ペット「ダブルクローバ、小学校と中学校は通っていた事にしておいて下さい」(ひそひそ)
八重葉「え、あ、あの、冗談よ! ハハハ、ちゃんと通ったわよ小学校も中学校も大学校も」
由里子「大学校ってなんだよ」
ペット「ダブルクローバ、小、中はありますが、大はありません」
八重葉「と、とにかく! 今度の体育祭では一位取るんだからね!」
由里子「おう!」
八重葉「あ、でさ、聞いておきたい事があるの」
由里子「何だよ」
八重葉「あなた、あの正孝って人の事好きなの?」
由里子「っな! なわけねーだろ、ハハハ。てか突然何だよ」(動揺)
八重葉「ねえペット、違うみたいだけど」(ひそひそ)
ペット「いえ、まだ分かりません。人間は己の気持ちを隠す傾向にありますから。これに関しては探りを入れてみましょう」
八重葉「え、今から!? 今日はもう帰ってチョコミント食べたいんだけど」(ひそひそ)
ペット「明日から徐々にでいいでしょう」
八重葉「ああ、良かった」
由里子「え、良かった!? 良かったって何が良かったなんだよ!」
八重葉「あ、いや別に、こっちの話」
由里子「こっちってどっちだよ! こ、こいつまさか正孝に気があんじゃねーのか!?」(心の声、エコー)
八重葉「そっかそっか、正孝君のこと何とも思ってないのかー」(帰ってチョコミント食べられるから嬉しい。明るく)
由里子「な、何とも思ってないなんて言ってないだろ! お前はどうなんだよ、正孝の事、ど、 どう思ってんだよ」
八重葉「え、私? んー別に何とも、まあどっちかって言うと、嫌いかな。①」
由里子「嘘つけー! 流石に恋愛経験ほぼ皆無の私からしてもそこは分かるっての! いくら周りから不良不良と罵られてもこれでも一応女として17年間はやってきたんだ、女心は持ち合わせてるんだよ! 本当に何とも思ってないんだったら「うーん、普通かな(わざと可愛く、乙女チックに、持てる限りの可愛い声でお願いします)」とか答えるだろーが! そこをわざわざ嫌いって答える辺りが意識しまくってるって事だろーがよぉ! 違うかぁ!?」(八重葉の「嫌いかな」に、やや被せる様に入る。「嘘つけー!」は溜める様にゆっくり、それ以降は早口で。最後の「違うかぁ!?」もゆっくり)
八重葉、①に入る言葉(由里子の早口のバックに入る為ボリューム小さめ)「嫌いって言うか、大っ嫌い。だって私の事知りもしないくせに頭良さそうだとか素直そうだとか言ってたし。初対面で私の何が分かるかっての。お前何様だよーって感じでイラっとしたよ。これから毎日会うのかと思うとウンザリするわ。あんなの好きになるやつがいたら顔見てみたいかも。あごめんここにいたわ」
八重葉「って聞いてる?」(由里子早口の「違うかー!?」の直後にタイミング合わせて)←由里子の早口とタイミング合わなそうだったら教えて下さい。セリフ調整します。
由里子「え?」
八重葉「何でもないわよ」
由里子「しまった聞き逃したー! 今完全に正孝の事をどう思ってるかの感想言ってたこいつ間違いなくー!」(かなり悔しい。心の声、エコー)
八重葉「さ、今日はもう帰ろうか」
由里子「え、もう帰んのかよ。まだ話が最後まで」
八重葉「あんたと話す事なんて無いわよ。それより、あんたのシャツ貸しなさいよ、洗ってあげるから。今日はそのままジャージで帰りなよ」
由里子「洗ってあげるってか、それが当たり前なんだけどな。でもいいよ。朝はイラっとしたけど、根性あるやつは嫌いじゃない。それに、同じモノを好きになった奴をライバルとして受け入れるのも、悪くはないかな、と」
八重葉「は? 同じモノを……何の事よ?」
由里子「言わせんなよ。それより、私の事、由里子でいい」
八重葉「由里子!」(呼んでみる)
由里子「お、おう」(照れ)
八重葉「私は八重葉でいい」
由里子「八重……葉」(照れ)
八重葉「おう!」
由里子「お前面白いやつだな」(笑)
八重葉「お前こそ!」
由里子「だからお前って言うな」
八重葉「由里子!」
由里子「うるせーよ! 用事がある時だけ呼べよ!」
八重葉「チョコミント忘れないでよね」
由里子「へいへい」
ペット「何だか、面白くなりそうですね」(笑)
第一幕 -終わり-