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月下紋次郎、松下鴎、桶川散魅。
三人が意識を失って、どのぐらいの時間が経っただろうか。
鴎が何をしても振動が止まらなかったスマホを止めた。
規則的に変わるスマホの液晶の色に合わせてタップした。
タップすること数分、振動が止まり……。
画面が暗転した。
そして……。
『Welcome!!』
と表示された瞬間、スマホを見ていた三人の意識が飛んだのだった。
実際には意識を無くしてはいなかった。
三人ともしっかりと意識があった。
しかし、体と精神が分離したかのような、浮遊感が広がり眠っているかのようだったのだ。
スマホの液晶みたいに規則正しく色が変わっていく空間を抜けていく。
高速で勢いよく飛んでいく。
三つの光の玉が真っ直ぐ進んだ。
やがて空間は色彩を失い、あたりは暗闇に飲まれた。
それでも光になった三人は飛び続けた。
暗闇を抜けると青空が広がった。
大きな雲が一つ流れていくのが分かった。
青空の次にどこかの草原の上を飛んでいた。
風で草が揺れる、どこまでも広がる大草原。
次第に荒れ狂う大海原の上を三つの光が突き進んでいた。
遠くで雷鳴が聞こえ、雨が粒ぶが勢いよく降り始めた。
雨の中を一直線に進む光の玉は、砂漠を飛行していた。
砂丘がいくつも見える、いつの間にか夜になり空には幾千の星が輝いていた。
紋次郎たちの光は星々の光の渦に向かって飛び込んでいき……。
星間の飛行しながら、次の目的地まで飛んでいった。
……風の音が聞こえる。
……人々の喧噪が聞こえる。
……地面の冷たさを感じた。
「う、ううう」
紋次郎が上半身を起こした。
石床の上に転がっていたせいか、体が冷えて硬くなっていた。
回りを見ると、どうやら高台にいるようだった。
周囲を見ると、松本鴎と桶川散魅が重なり合うように倒れていた。
慌てて二人の元へもたつく足で駆け寄った。
二人の頬に平手打ちをした。
「おい、起きろ、おい!」
「……あ、紋次郎」
「紋ちゃん?」
「二人とも目を覚ましたか、よかったの」
「紋次郎ぅ~!」
鴎が紋次郎に抱き付き、泣き出した。
「あ、あんたいきなり……ぐすっ……うわぁぁん!」
鴎に続いて散魅まで泣き始めた。
長い間、側にいるのに話しかけられず、触れ合うことも出来ずにいたからなのか。
やっと知っている顔を見て安心したのだった。
「まったく、二人ともしょうがねえの」
紋次郎は両手で二人を抱きしめ、空を見上げた。
そらには白い雲と青い空が広がって……いなかった。
「おう?」
紋次郎は目を手でこすり、もう一度、空を見た。
やっぱり紋次郎の知っている空は広がってはいなかった。
空を支配していたのは、青と紫グラデーションの空だった。
「なんじゃこりゃ……」
泣いている二人も空を見上げ、驚愕した。
「空が変な色に……」
「紋次郎~なんなのこの空……」
紋次郎は立ち上がり、空を見上げながら言う。
「どうやら……ワシらはとんでもねえところに来ちまったみたいだの……」
やけに冷たい風が三人の間を通り抜けていった。




