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逃げた女は 私を笑った

作者: 桜田桂馬

柔道の練習で疲れ、電車で自宅へ帰る時、とんでもない事をしてしまった。

私は県警に連行され取り調べを受けた。どうしてこんな事になったのかと思うと、自分自身の判断の甘さに腹が立った。


 それは金山駅で準急列車を待っていた時だった。

プラットホームに下り列車が到着すると、先頭車両からピンクのスニーカーを履いた若い女性が、電車を待つ人混みをかき分け、私の方へ走って来た。誰かに追われているようだ。


男だ、彼女の数メートル後から紺色の野球帽をかぶった男が追って来る。


『助けて!偽刑事に追われてる!お願い』と横を走り抜けるとき振り向きざまに私に言った。

 彼女を追いかけてきたのは髭面の背の低い男だった。

男は今にも彼女に追い付きそうだ。

私は追跡してくる男の前に、思わず右足を出した。

男はつんのめり、地面に転がり一回転した。

一瞬痛そうに顔をしかめ起き上がり『警察だ』と叫び、胸のポケットから警察手帳を取り出し私に見せた。


『偽者め』と言って私は男の胸元を掴んだ途端、私は腕の逆をとられ地面に組伏せられた。


すぐに、其の横にもう一人の男が駆け寄り、私の奥襟をひっぱり立たせた。


『離せ!偽物!警察を呼ぶぞ』と私は叫んだ。


『俺達が警察だ』と後から来た鋭い顔つきの男がどなる。


『あの人が言ったんです。偽刑事が追い掛けて来る、助けて!』って。


まさかあんな美人のか弱そうな女性が、犯罪者だなんて私には思えなかった。

それに追いかけてきた私服刑事の人相は悪く、彼女の言うとおり悪人に見えた。

 

『あなたを公務執行妨害で逮捕します。署まで同行願います』


私はその場で手錠を掛けられた。

周りには遠巻きに人垣が出来る。

私に憎悪の視線を送っている。

私は手首の部分に上着を掛けられ、手錠が見えないようにして連行された。




 取調室で刑事がこう言った。


 『我々はスリの常習犯を追いかけていた。

  もう少しで取り押さえるところ

  あなたがそれを妨害した』

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