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小人閑居して不善をなす

 ネット上で知り合いになったその人の日記を読むようになって、僕はある疑問を抱くようになった。

 どう考えても、その人が確りと働いているようには思えなかったのだ。日記を読んでいる限りでは、その人は昼夜逆転の生活をして、酒を飲んだり無料のネットゲームをやったりしていた。その人は音楽活動をやっていて、楽器を人に教えたり演奏したりで、多少の収入があるらしかったけど、それだけで暮らしていけるとはとても思えなかった。音楽活動で稼げる額がどれくらいかを僕は知らないけど、若いミュージシャンなんかが苦労しているって話はよく聞くから、そんなには多くないと考えていたんだ。

 そのうちに、その人がどうやらうつ病で障害者年金を貰っているのだと、なんとなく分かって来た。

 うつ病。

 正直、僕は彼をうつ病だとは考えなかった。いや、医者がうつ病だと診断したのだとすれば、どうであろうと、それはうつ病なのだろうけど、少なくともそれは従来型のうつ病ではないと考えたんだ。まぁ、いわゆる新型うつ病だと。

 実はうつ病の定義は曖昧で、最近では様々な症状を持った人がうつ病だと診断されている。それらの総称が新型うつ病だと思ってくれて構わない。そういった人達の特徴的な行動に、“自分がうつ病である事を武器にする”というのがある。

 何か責められると、「自分はうつ病なのに、そんな酷い事を言うな」と返す訳だ。つまりは自分を人質に取って、相手を脅すのだ。もちろん、これが行き過ぎれば、問題のある行動になるのは言うまでもない。

 だから、精神科医や他の専門家の中には、これら新型うつ病をうつ病とは認めていない人もたくさんいて、人格障害として扱うべきじゃないかと提案していたりする。僕はその人もそうじゃないかと考えたんだ。

 まぁ、もっとも、そうは内心で思ってはいても、「あなたは人格障害です」なんてなかなか言えるもんじゃない。でも、日記を読みながら、多少は苛立たしく思ってはいた。

 だって、「気分が悪くなった、自分はうつだ」と訴えているその生活態度は、不規則で酒を飲みまくったり、煙草を吸ったりという不健康なもので、病気にならない方がおかしかったから。普通、どんな人でもそんな生活を送れば、気分が悪くなる。

 一応、断っておくと、ストレスってのは嫌な事で溜まるものじゃない。身体に害のある事で溜まるものだ。つまり、例え楽しい事ばかりしていたって、不健康な生活をしていれば、ストレスは溜まるのだ。

 だからその人は、大変にストレスの溜まる生活をしている事になる。もちろん、うつ病にも思いっきり悪影響で、はっきり言って悪化させているようなものだ。健康的な規則正しい生活は、うつ病治療の基本だから。

 納得できる話だとは思うけど、そのうちに、その人は体調を悪化させて入院してしまった。確か、一ヶ月くらいだったと思う。高い入院費がかかったはずだ。いくら障害者年金を受けていて、優遇されているとはいえ、これはかなりの負担になったはずだと僕は思った。ところが、その人はまったく平気な様子だったのだ。それどころかその人は、皆が彼を心配するコメントに対し、

 「こんなに皆が心配してくれて嬉しいな、また入院しようかな」

 といったようなコメントまで返した。

 これ、明らかにおかしい。まるで医療費が負担になっていないように思える。それで疑った僕は、その人に鎌をかけてみたんだ。生活保護制度の問題点について、少し触れてみた訳だ。何故なら、生活保護受給者は、医療費の支払いを免除されているから。

 すると、案の定、その人は噛みついて来た。そしてその場で、自分が生活保護を受給していると白状した。僕は落胆した。ここまで酷い人だとは、まさか思っていなかったのだ。この人は、うつ病の障害者年金と生活保護という二つの社会保障制度をダブルで利用していたのだ。受取額が、それでどうなるのかまでは知らないけど、せめて生活保護の方は受けないようにするべきじゃないのか、と僕は考えた。そもそもその人は、日記の内容を読んでいる限り、生活保護法に違反した行いをたくさんしていたんだ。完全にアウトなものから、グレーゾーンのものまで、様々。生活保護制度を利用して良いような生活態度じゃない。

 その人には頼れる親族がたくさんいるから、そのうちの誰かの家に住ませてもらえば、障害者年金を合わせて、恐らくは軽いアルバイトだけで充分に暮らせるはずだ。この財政の厳しい時代に、社会に負担をかけるような暮らしはするべきじゃない。百歩譲って、仮に生活保護に頼るにしても、医療負担が軽くなるように、健康的な生活を送るべきだろう。それに、そもそも、健康的な生活を送る事は、生活保護受給者の義務の一つでもある。

 そう思った。だから僕は、その人に忠告をした訳だ。できれば生活保護に頼らないよう努力して欲しい。せめて、健康的な生活を送ってくれと。

 すると、その人は怒り始めてしまった。

 どうやらその人は、生活保護制度が、本来は、一時回避の手段の為の制度である点をまるで知らなかったらしい。怒られたって、僕の方も曲げる訳にはいかない。何しろ、その人は法律に違反すらしているのだ。何とか説得を試みた。

 しかし、そのままその人は、僕との関わりを断ってしまった。恐らくは、逃げたのだろうと思う。


 その人は、自称共産主義者だった(受給費で赤旗まで買っていたようだ。これも、何にかしら問題がある気がする)。共産主義者が、労働者に負担のかかるような生き方をして良いのか? と、そう思いもするし、それがツッコミ要素の一つでもあったのだけど(まるで毎日肉を食っている人が、自分は菜食主義者だと言っているようなもんだ)、敢えてそれを認めるとするのなら、共産主義の理想は「能力におうじてはたらき、必要におうじてうけとる」だから、彼に全く能力がない前提で考えるのなら、一致しているような気がしないでもない(自分で言うなって感じではあるけど)。

 ただこれ、世間的には、共産主義への反感を更に高めそうだ。


 辛い時代では、何かしら人々は攻撃の対象を求めるもの。今という過酷な時代では、その一つが生活保護受給者になってしまっている点は否定できない。これは危険な風潮で、だから安易に煽動すべきではないとは思う。

 それに、生活保護制度がデフレスパイラル防止になっている点を考慮するのなら、需要不足の今は、働いている人達にもこの制度はメリットがあるんだ。それは経済の悪化を抑えてくれている。

 ただし、それでも敢えて僕は、生活保護制度には大きな問題点があると指摘したい。そして、その一番の被害者は、もしかしたら、他の誰でもない、生活保護受給者本人達かもしれない、とも思う。

 税金で暮らせるという恵まれた立場。そういう恵まれた立場は、人を駄目にする。彼らが自分の能力を錆びつかせれば、それは生きる能力を奪うに等しい。恐らく僕だってそんな立場になれば、駄目になってしまう。共産主義の理想を持ち出すのなら“能力におうじてはたらき”の、その能力を駄目にしてしまうのだ。共産主義者は、生活保護制度を擁護する場合が多いけど、この問題点ばかりは否定できないはずだ。

 “小人閑居して不善をなす”

 この言葉の本来の意味は、“暇になると小人物は悪い事をする”、ではなく、“小人物は誰も見ていない所で悪い事をする”といったようなものなのだそうだ。しかし、勘違いされて使われる意味の方も、真実の一面を突いているのじゃないかと思う。

 生活保護制度で、若い人には、職業訓練校に通う義務付けがされたりしたらしいけど、それだけじゃ足らないだろう。

 研修という名目で、農業、介護、資源リサイクルといった労働力が必要な現場で働いてもらう事まで考えるべきだと思う。そうすれば、労働負担という意味でも、他の人々が助かるのだし。

本文中にも書きましたが、辛い時代には憤懣のはけ口が求められるもので、その一つが生活保護受給者である点は否めませんが、それでも規模の大きさと本人達の能力を考えるに、放置して良い問題ではありません。


因みに、金属の資源リサイクルや生ごみの堆肥リサイクルを受給者達にやってもらえれば、自国で資源を調達できる割合が増えます。

現在(2012年9月)、中国との政治問題が起きていますが、多くの資源を日本は中国に頼っているので、非常にまずい。

が、これをやればそれが緩和できます。

(因みに、当然、GDPも増えます)

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