シーン2
わりと悩んだ回ですが、なんか納得行ってないかも。かきなおすかも
なんで雨降ってきてんだよ……。そうつぶやいた祐樹は昇降口のところ、まだ屋根のある場所で立ち尽くしていた。
出かけに天気予報を見ておくべきだったと、いまさらながらに後悔するも、当然もう遅い。傘を持っていない祐樹は帰るために、この雨の中歩いてくしかなく、そうすれば当然のこと、体は濡れるだろうし、バッグの中に入ってる参考書の類も。それだけならいいけど、バインダーが水浸しは絶対に嫌だった。
どれだけ僕が、これをまとめるのに時間を費やしたと思ってるんだ。もう高三。受験まで時間がないんだ。今から書き直すなんて時間の無駄はできない。濡らすわけにはいかないんだ。
たぶん、僕は受験生というファッションで身を包んでいただけだった。親に言われて。学校に言われて、の。少し考えればわかったはずだ。今日一日くらいは放っておいても大丈夫なんだ。他のことをやればいいだけ。そっちのほうが自分のためにもなっただろう。
だけど、僕にはそれができなかった。ちっぽけなプライド。僕は受験生です。一日たりとも休むことができないのです。
だから僕はこの雨の中、走って帰ることにした。体でバッグをかばうようにして走ればなんとか、バインダーの中までは濡れずにすむかもしれない。
僕は雨に向かって走り出そうとして――
「祐樹?」
疑問形の。こちらをうかがうようなよく知った声に足を止めた。
橋本美樹が、こちらを見ていた。
肩の辺りまである髪が雨のしずくが混じった風に揺れて、佐上祐樹の幼なじみである彼女は思わず手をかざして風をよける。そうしながらも、彼女は祐樹の近くに寄ってきた。身長の差で、美樹は見上げるようになってしまうけど、彼女にとっては自然な距離だ。
「一緒に帰る?」
傘を差し出しながら、美樹は言った。
わかってるさ。僕はなんにも考えてなかったんだ。だから、その傘の下に入ったんだ。