シーン1
のんびりと、気が向いたときに書こう。
朝の五時。坂上祐樹は悩んでいた。外もまだどこか薄暗く、当然と言うべきか、両親も起きていない。その時間に悩まなければいけないことが祐樹にはあった。
ただの悩みじゃない。深刻な、それこそ人生を左右するような悩みだ。
悩むというのはつらいことだ。悩んでいる間は一時たりとも心安まる時間がない。ゆえに祐樹はこれまでの人生で悩むことを半ば無意識的に避けてきたのだが、しかし、今回ばかりは逃げることはできなかった。
頭を掻きむしる。ボサボサの頭。ろくに手入れなんかしてない。癖が強いから下手するとパーマどころかアフロになる。気になって、わざわざ洗面所まで行って鏡を見た。やっぱりボサボサ。直さなくちゃ、えっと、櫛は……母親の使ってるやつでいいだろう。
うん、見れるようになった。ほっと息をつく。今まで髪なんか気にしたことないだけに今の髪型がいいかなんてわかりやしないけど、さっきよりはマシ、なはず。
大丈夫。変な風には見られないはず。そうさ、ほら意外にイケメンに見えないか? 僕って。ほらここのほくろをとって、輪郭を変えればって、そこまで変えるともう僕じゃないだろ。
僕は鏡の前で深くため息をついた。