エピローグ 煙の消えたあと
大内の死後、子供達は叔父である大内の弟に引き取られた。
大内の弟は大学時代に起業し現在も薄利ではあるが事業は続いている。
大内の子供達を見ると昔の自分と大内のように思えて目が細くなってしまう。
大内の次男はゲーム好きが昂じてなんとeスポーツ大会で結果と名前を残し始めたのだ。
大内の弟が「自分にできなかったこと」を子ども達に託す決意をして背中を押してくれる頼もしい存在でもあり、唯一帰れる場所になっていた。
長男の賢さは大内譲りなのだろう。
兄弟2人で転戦を繰り広げ、飲み込みの早い兄のお陰で弟はゲームにだけ集中出来る環境が整った。
亡き父の名前が彼らの胸の中で、静かに燃え続けている。
篠田の妻は、双子を抱えながらパート勤めを始めた。
篠田が逮捕された直後は泣き崩れ途方に暮れていた。
「お母さんのアンタがしっかりしないで、どうすんの!」
「今、子供を守れるのはアンタだけなんだよ!」
妻の実家の協力もあり日常に戻りつつあり
面会に行く日には、鏡の前で念入りに髪を整えるようになった。
篠田の出所を信じて待つと決めたのだ。
またいつか親子4人で暮らせる日まで。
静香は村瀬と離婚をした。
独身に戻って少し経ったころ静香はゆきと会った。
落ち込んだりやつれたりしているのかと気にしていたが実際の静香は清々しいほど肌艶が光っていた。
「実はね、昔からゆき、あなたのことが憎かったの」
「同じゼミの男子はこぞってゆきの噂をしていたわ。それが気に入らなかったの」
「ゆきが私より優れているのが許せなかった」
「常にあなたより優位に経ちたかったの」
「あなたと村瀬が付き合っていた事を偶然知ったの。街で見かけて。奪いたくなったの。村瀬の事なんて、これっぽっちも愛していなかった」
「あなたを傷付けること、あなたより優位に立ちたかっただけのことだったの」
「許してなんて言わない。ただ、いつか本音を直接の言いたいと思っていたの」
今更、静香に打ち明けられても何も響かない。
「静香、あんたって可哀想な人ね。でも感謝しているわ。犯罪者の家族に1秒たりとも成らずに済んだもの」
「もう友人でいることは辞めましょう」
「どこかで私を見かけても気付かない振りをして」
ゆきは無遠慮に静香にトドメを刺し、振り向きもせず店を後にした。
「さよなら静香。なれるものなら幸せになってごらんなさいよ」
派遣会社から来ていたスタッフの多くは契約満了を迎え、それぞれの道へと散っていった。
ゆきと唯奈には、会社側から契約社員としての登用が打診された。
昼休み。
喫煙所でタバコを吸いながら唯奈がゆきを待っていた。
「ゆきさーん、お昼どこ行きます?」
「遅れちゃった、ごめんね」
ゆきの胸元で揺れるストラップは、緑色に変わっていた。
唯奈も、同じ色だった。
強さとは、優しさとは、正義とは。
多様化が謳われている昨今。
そう言う考えもあるよね。
そう言う見かたも出来るよね。
認める事で
何が正しいのかが見えなくなる時がある。
それでも昔から
人として正しくある道筋は変わらずにある。
初めての作品です。
拙い文章でしたが
最後までお付き合いくださいまして
有難うございました。
皆様の目に留まっていただけて嬉しく思います。




