第5話 戦闘と現出
ボス部屋に剣風が巻き起こる。名も知らない黒い騎士が上段から剣を振り下ろしてきて俺は下段から剣の腹を払うように剣を振る。最初は様子見のつもりで相手の剣戟に合わせて剣を添えるように払っていく。上、下、斜め、上、さらに横。と何重にも重なる剣戟を繰り返していき、少しスピードが上がった。
「もう少し、速度を上げてもいいか?」
聞かれたので軽くうなずいた。さらに剣速があがり俺が払った剣の衝撃が床や天井、壁に伝わりひびが入っていく。
「えっと、君の名前を教えてくれないか?」
「──カールだ。覚える必要はない」
「いや、覚えておくよ」
次の瞬間、カールの剣が五重にぶれて見え、同時に剣があらゆる方向から迫ってくる。俺は同じことをし返してそれを防いだ。これに驚くカールの気配があった。カールは黒い覇気を纏うとそれを黒いエネルギーとして枝分かれし、物質化した攻撃をあらゆる方向から仕掛けてきた。俺は一度大きく剣を払い距離を取る。カールの黒い覇気を伴なった剣戟を躱して躱して躱しまくる。枝分かれして迫ってきた黒い線光は俺の柔術を応用した剣技で斬りはらっていく。
「ここまでできるとはな」
初めて感情を伴なった声をカールから聞いた気がした。一瞬周りの人間が気になり目を逸らすと、ヘルが人間たちに球上の結界を張り守っていた。これなら大丈夫だろうとカールの相手に集中することにする。カールは黒い覇気を一点に凝縮しはじめ、それを五重の巨大な剣にして俺に撃ち込んできた。それを俺は俺流剣術ヤツハシで一瞬で斬り刻み残りの三撃でカールの鎧ごと斬り倒した。
「見事」
剣の衝撃と砂埃が収まった向こうには鎧を破壊されながらも悠然と立つカールの姿があった。俺はこのぐらいでいいだろうと剣を鞘に納める。これを見てカールも剣を納めた。そして兜を脱ぎ鎧を捨てさったカールの中身は女性だった。低い声をしていてカールと男らしい名前をしているから男だと思ってた。
「カールって呼んでいいかな?」
「いいだろう。わたしもあなたをバラキアスと呼ぼう」
俺はカールに俺とヘルがダンジョンを昇り地上に出ようとしていることを伝えた。そして玉座の呪いを解き、カールも外に出る気があるか確認した。
「そうだな……わたしもあなたたちについて行こう。ここはわたしには狭すぎる」
「そうか。じゃあ呪いは壊すぞ」
俺はカールの玉座に近づき破壊した。カールの呪いが解け、解放されたカールは身体を動かして感触を確かめていた。俺は残りの人間たちをどうするか考えた。
「人間たちだけど、このまま放置してもいいのかな」
「わたしはどうでもいい」
カールは人間に対して冷たかった。ヘルにも確認しよう。
「ヘル、人間たちをどうする?」
「放っておいていいんじゃないですか。最低限生き残った人間は障壁で守ってあげましたし」
俺は一番近くにいた冒険者の一人に話した。俺たちはここから昇り地上に出る。あとは好きにしろと。
「それは困ります」
一人の女性冒険者が声をあげた。
「えっと君は?」
「わたしはエリカです。わたしたちはどうしてもこのダンジョンを攻略しないといけないんです」
「理由を聞いても?」
なんでも天使と悪魔の争いに巻き込まれた人間たちは人口を減らし続けなにか救いになるものを探していたと。そこで国王が七つのダンジョンを全て攻略すればどんな願いでもいくらでも叶うと予言を視たそうだ。だから人類は急いでダンジョンの攻略を急いでいると。
「なるほどな。悪いんだけどこの通り、このダンジョンのラスボスの俺は呪いから開放されて自由の身だ。ダンジョンとしての機能の一つが失われた今、このダンジョンは攻略不能になってると思うよ」
俺はそれを説明するとエリカを始めとした人間たちは嫌な顔を浮かべ、何人か舌打ちした。俺は仕方がないことだと受け入れてもらうしかなかった。
「じゃあ俺たちはいくから」
俺はヘルとカールを集め俺の手を肩に手を添えるように言った。俺は指笛を鳴らし相棒を召喚した。空間に巨大な穴が開きそこから巨大な白と青のいろに包まれた龍が現れ、俺は龍であるキョウの右前足に乗った。そのままダンジョンを破壊しながらキョウとともに昇り上げ空高く天に、そして地上に俺たちは現出した。
【ダンジョンに残された冒険者たち・エリカ視点】
わたしたちは非現実的な圧倒的な戦いを黒い騎士と突然現れた細身の人間に見せつけられた。その戦いは凄まじい剣風と砂埃を発生させ剣速は目で追うのに苦労しほとんど見えなかった。もうひとり、わたしと同じメイジらしき女性の魔法による結界に守られながら受け入れたくない現実を突きつけられた。わたしたちは黒騎士が言う通り弱いのだと。
「そんな──」
そのうえダンジョンは攻略不能になったと聞かされ絶望するわたしたちの前で彼らは巨大な龍を伴ない飛び去っていった。わたしは今日のことを人生で一番衝撃的なこととして認識し、忘れないだろうと思った。今頃、彼らの覇気や気配のに気付いた父上はどんな預言を見ているのだろうか。それが人間の希望になることを祈りながら。これ以上悩みの種が増えないことを願いながらわたしはその場にへたり込んだ。




