第3話 絶望の始まり
俺とヘルはモンスターを倒しながらダンジョンの中を進んでいた。俺は瞬足を生かしモンスターに瞬時に近づき斬り倒す。ヘラは炎や氷の槍を魔法で作りそれを生成&射出しながらモンスターを貫いていく。俺とヘルの実力はそこまで違いがないように思えた。
「すごいですねあなたの身体能力は」
「そうか? ヘルの魔法の精度のほうがすごいと思うけど」
俺も魔法の知識があるからわかる。鑑定のスキルでヘルの魔法を見る限り完璧な構成で魔法を作っている。どこにも矛盾がなくスムーズな構成となっておりシンプルで強い。俺もヘルの魔法から学んで魔法を使って行こうと思う。
「バスキアスって少し長いのでキアスって呼んでいいですか?」
「いいよ、好きに呼んでくれ」
「じゃあキアスさん、百階層から九十九階層の間にいたモンスターたちは強かったですか?」
どうだろう。俺は余裕で瞬殺で来たけどあのモンスターたちは強いのかもしれない。
「俺は大丈夫だったけど、他の奴が戦ったらモンスターたちのスキルに苦戦したんじゃないか?」
「どんな能力です?」
「コピー能力とか洗脳能力とかそう言うのばかりだよ」
「なるほど、それは手こずりそうですね」
身体能力のごり押しで倒してきたから俺は楽勝だったがヘルならどうだろう。純粋な魔法使いならモンスターのコピー能力あたりに苦戦するだろうか。
「ここら辺のモンスターたちも似たような能力を持っているみたいですね」
倒したモンスターたちから愛剣が獲得した能力を確認するとここの階層もなかなかいい性格のスキルを持っているようだった。下の階のモンスターと同じコピー能力や洗脳能力を始めとして思考をかく乱する魔法や魔法の方向性を乱す能力などまるでヘル相手の対策をしているかのような魔法耐性の強いモンスターたちばかりだった。
「魔法耐性が強いモンスターのはずだけど、ヘルは余裕そうだな」
「そうですね。魔法耐性が強いといってもわたしの魔法は空間に直接ひずみを生み出すことでさらに強化されてますから」
「ああそういうこと、並みの耐性じゃ空間ごとねじ斬られて終わってしまうのか」
「そういうことです」
恐ろしい強さ。そして頼もしい。俺は強力な味方ができて嬉しかった。
【第98階層ボス部屋前・とある冒険者エリカ視点】
わたしは今冒険者仲間のザストとカエル、リリとの四人で七大迷宮の一つである憤怒の龍の奈落へ挑戦している。わたしはどうしてもこのダンジョンを急いで攻略する必要があった。なぜなら国王であるユグニステンド・ラー・マエルからの預言で世界の大戦の予兆を見たと侍女の一人から聞いたから。大戦の主な勢力は人間と悪魔と天使の三大勢力。人間は悪魔と天使の争いに巻き込まれる形で徐々に人口を減らしていっている。わたしはこの戦争から人類を救う手段を探していた。
「エリカさま、本当にボスに挑むんですか?」
心配そうにザストが聞いてくる。その心配はわかる。なぜなら人類はこの迷宮の第九十七階層までは攻略が済んでいるがそれから先に進めていない。第九十八階層のボスに挑み続けて百五十年が経過している。人類は焦っていた早く目的であるダンジョンのラスボスを倒さなければ人類に未来はないからだ。
「あのわたし、やっぱりやめたほうがいいと思うんですけど」
リリも心配そうに聞いてくる。隣のにいるカエルも同じ顔だ。わたしは後ろにいる第一級冒険者たち計五十人の顔を見渡した。どの冒険者もやる気に満ち溢れた顔はしていなかった。
「もうこの階層を攻略できずに死んでいったやつは千人を超えるんだぞ。俺達まで死んだら国王はどんな顔をするか」
カエルの心配はもっともだ。ここには冒険者ギルドの中でも精鋭中の精鋭を集めた第一級冒険者がたくさんいる。この人たちまで死んだら一気にわたしたちの国の戦力がガタ落ちするのだ。失敗は許されない。
「S級クラスの冒険者が一人も参戦していないのはやっぱまずいって」
カエルは一番乗り気じゃなさそうだ。カエルはこのダンジョンのボスの強さをまじかで見たうえで生き残った数少ない人間だ。彼の意見は大事だ。S級クラスの冒険者が協力してくれればここのボスも攻略できただろうにわたしの国にいるS級冒険者の七人中七人が協力を拒否したことをギルドの受付嬢から聞いた。ダンジョンには興味ないと。
「だめ、知ってるでしょ。七つのダンジョンすべてを攻略したらどんな願いでも好きなだけ叶えて貰えるって」
わたしはお父様からそう聞いた。お父様は天から直接その情報を貰った。天からの情報は確実だ。だったら人類が生き残るためにもわたしたちはすぐに七つのダンジョンを攻略する必要がある。
「わかった。全員覚悟はできてるな!」
冒険者たちは声をあげて応えた。わたしたちの攻略が始まった。わたしは第一陣を先頭に立って進みボス部屋の扉を開いた。




