第2話 ボスの茶会
「わたしのことはヘルでいいですよ」
「じゃあ俺のことはバスキアスで」
俺とヘルはお茶会をしていた。俺がこの九十九階層のボス部屋に入ったらこのそうの庭園の隅にあるベンチに座るよう言われた。ヘルは俺と話がしたいと。
「まさかこのダンジョンのラスボスが昇ってくるとは思ってもみませんでした」
だろうな。そもそもボスモンスターはボス部屋とボス部屋にある玉座に呪いで縛り付けられている。ボス部屋から出るのは基本不可能なのだ。
「どうやって下から昇って来たんですか? それにボス部屋の呪いはどうしたんですか?」
「歩いて昇ってきた。呪いは破壊したよ」
「びっくりしました。呪いって破壊できるんですね」
俺はハーブティを飲みながらあたりを見渡した。この層のボス部屋は植物園のような景色をしている。様々な植物が茂っていてあまり歩くスペースがない。どうやってこの狭い空間で戦うつもりだったのだろうか。聞いてみよう。
「俺もボス部屋が植物園みたいになっていてびっくりしたよ。冒険者が攻略しに来たら動きにくいんじゃないか? ちゃんと戦えるのか?」
「ちゃんと戦えますよ、この通り」
ヘルが手を振ると植物たちが動き出し一つの大きな道を作り始めた。しばらくしてボス部屋の中央にぽっかり空いた広い空間ができた。なるほど、どうやらここにある植物たちはヘルの意のままに操れるらしい。
「暇だったので植物の種を集めては栽培を繰り返してました」
そうだよな。俺も暇だったし。
「ということはこの層に辿り着いた人間は……」
「あなたの予想通り、一人もいませんよ」
「そうか」
どこから植物の種を集めたのか。
「この植物たちの種はどこから持ってきたんだ?」
「これです」
椅子の下にネズミが何匹かいた。
「この子たちに他の階層に移動して取ってきて貰ってたりしていたんです」
「え、ダンジョンの植物だけでこんな綺麗な庭園ができるのか」
「ええ、わたしも最初はびっくりしました。褒めてくれて嬉しいです」
俺はヘルに提案してみることにする。
「ヘルって呪いを解いて欲しいか? ダンジョンの外の世界に興味ある?」
俺は玉座の呪いを破壊できる。もちろん他の階層のボスたちの呪いも破壊できる。もしヘルを始めとした他の階層のボスたちが解放を望んでいてら手伝おうと思っていた。
「そうですね。お願いしてもいいですか? わたし思っていたんですけど、たぶんこの階層にまで到達する人間はいないんじゃないかと。もしいたとしてもダンジョンに興味を持ったりはしないんじゃないかと思っていたんです」
「だよなあ~。俺もなんでダンジョンを攻略する必要があるのか反対側の立場になって考えたことがあるけどわからなかったわ」
ダンジョンを作った目的とシステムは復活したときに知識として脳に埋め込まれたからわかる。だけどこのダンジョンのシステムが必要かどうかはまだ理由がわからなかった。俺は立ち上あがりヘルが普段座っているであろう玉座に近づき剣を抜いた。俺は一振りし玉座の呪いを破壊する。
「おー、本当に呪いが解けましたね。すごいです」
「そりゃどーも。俺はこれから上に昇って他のボスにも同じことを提案するつもりだ」
「そうなんですか。そうですね……わたしもついて行ってもいいですか?」
「いいよ」
「ありがとうございます。じゃあさっそくですけど、ダンジョンの外に一度出てみますか?」
え、そんなことができるの? 俺はいきなり外に出られると聞いて驚いた。
「わたし魔法使いですし、転移魔法が使えるんです。だから外に転移すれば」
「なるほど」
しかしどうしよ。他のボスたちのことが気になる。
「ほかの層のことが気になりますか?」
「そうだな、気になる」
「じゃあ地道に歩いて攻略していきますか。なんなら全員で地上に出ましょう」
そうだな、うん。そうしよう。俺は協力者ができてうれしかった。ダンジョンを下から攻略していく仲間にヘルが加わった。この植物たちを操る力と言い、転移魔法が使えるほどの魔法使いと言い、そこが分からないヘルだ。頼もしいことこの上ない。
「ヘルは外に出たら何をするか考えてるのか? 俺はずっと外に出たら何をするか考えてて、答えが出なかったんだよな」
「そうですね。わたしも特にやることがないですね。どうしましょう」
俺たちはどれぐらい強いんだろう。今の外の世界の人間の強さがどれぐらいなのかもわからないため、今の俺の実力がどれぐらいなのかがわからない。
「そういえば、ダンジョンが人間たちになんと呼ばれているか知っていますか?」
「知らないな」
「人間たちの間では、ここは憤怒の龍の奈落と呼ばれているらしいですよ」
「そうなのか」
初耳だ。
「このダンジョンのコンセプトみたいなものなんでしょうね。ちなみに外の世界にはダンジョンがあと六つあるらしいですよ」
あと六つか。まるで七つの大罪だな。このダンジョンを含めて七つの大罪にののしって作ったのか。誰がこんなダンジョンを作ったのかわからないがなんだろう。ちょっとだけ腹が立つ。何の説明もなしにこのダンジョンに閉じこめられたのだ。しかしそれがなければヘルと出会えなかったからまあ良しとする。
「じゃあ歩いてサクサク攻略していきますか」
「そうですね、頑張りましょう」
俺たちは上の階に繋がる扉を開き歩き出した。




