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名前を書く前に考えさせてくる異世界教師―越境者ワールド・トレーサー―  作者: 甘藍


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死んでない!

「死ななかった」


時間が、進んだ。


三ヶ月を、越えた。


――死は、来なかった。


異端審問官が叫ぶ。


「なぜ消えない!?」

「異端は、世界に留まれないはずだ!」


佐伯は、立ち上がった。


「それは」

「世界に意味を与えられなかった異端の話だ」


彼は言う。


「俺はもう」

「“意味を探す存在”として定義した」


世界は、沈黙した。


初めて――

佐伯は、世界に拒絶されなかった。


再び、管理局


崩壊する結界の向こう。

白い空間に、エドガー・クロウリーが立っていた。


「……やってくれたな」


だが、声はどこか誇らしげだった。


「三ヶ月制限は」

「世界が“異常を自然排出するための安全装置”だ」


「君はそれを」

「魔法で論破した」


佐伯は問う。


「俺は、もう転生しないのか?」


エドガーは首を横に振る。


「分からない」

「だが一つ確かなのは――」


「君は初めて」

「一つの世界に“滞在”した」


自由は得た。

だが、リィネはいない。


佐伯は、空になった部屋で一人呟く。


「……俺は、正しかったのか」


答えはない。


だが、彼は理解していた。


アイデンティティとは、

証明するものではなく、関係の中で生まれるものだと。


彼は初めて、後悔を覚えた。


そして、それこそが――

彼が“人間であり続けた証”だった。

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