天才発明家
「ねーねー!」
「その二人、夫婦?」
場違いな声が割り込む。
振り向くと、そこにいたのは――
小柄な少女。
年の頃は、小学六年生くらい。
ゴーグル。
作業着。
背中には、見たこともない機械。
「違います!」
リィネが即答する。
少女はニヤッと笑った。
「へー」
「でもさっきの空間跳躍、君がやったでしょ?」
佐伯の背筋が凍る。
「……見てたのか」
「うん」
「理論、めちゃくちゃだけど」
少女は胸を張った。
「でも、動いてた」
「だから面白い」
名を名乗る。
ナギ・ミズハ
職業:発明家
年齢:12歳
肩書き:自称・天才(※実際に天才)
「魔法? 因果? 世界?」
「よく分かんないけどさ」
ナギは佐伯を指差す。
「お兄さん、
“本来存在しない機能”を実装してるよね?」
リィネが小声で言う。
「……この子、危険」
「でしょ?」
「私もそう思う!」
ナギは、佐伯にやたら懐いた。
「ねーねー先生」
「さっきの理論、もう一回説明して」
「先生じゃない」
「でも説明する」
佐伯が話し始めると、つい出る。
「ここ、テストに出るよ」
ナギは目を輝かせる。
「出るんだ!」
「じゃあ覚える!」
リィネは、少しだけむっとする。
「……ねえ」
「その口癖、誰にでも言うの?」
「いや」
「元生徒限定」
「私は!?」
「……特別講座」
沈黙。
「……ばか」
距離は、さらに縮んだ。
■ 迫る影
だが、穏やかな時間は長く続かない。
ナギが、空を見上げて言った。
「あー」
「来たね」
「何が?」
「魔法国家の人たち」
「世界を越える技術、もう半分再現してる」
佐伯は、拳を握る。
未完成の戦う魔法。
まだ、使いこなせない。
守りたいものが、増えた。
リィネ。
ナギ。
そして――この世界。
「……逃げる?」
リィネが聞く。
佐伯は、首を振った。
「今回は」
「教える側だ」
「何を?」
佐伯は笑う。
少しだけ、元の明るさを取り戻して。
「“存在は、定義できなくても守れる”ってこと」
「ここ、絶対テストに出る」
第二部は、ここから加速する。




