第二部
第二部:越境者編
第一話「ここテストに出る世界」
■ 世界の狭間、再び
落下する感覚は、もう恐怖ではなかった。
佐伯は、世界と世界の隙間を抜けながら、ふと思う。
(……慣れって、怖いな)
未完成の魔法。
制御不能。
理論的には、今この瞬間に消滅してもおかしくない。
だが、彼の心は奇妙なほど落ち着いていた。
「ま、最悪死ぬか」
軽く言って、自分で苦笑する。
(元・塾講師が言うセリフじゃないな)
■ 再会
次に足が地面に着いたとき、
佐伯はまず「空」を見た。
――青すぎる。
魔法世界でも、宇宙でもない。
文明レベルは高いが、魔法と機械が混在している。
そのとき。
「……佐伯?」
聞き覚えのある声。
振り向いた瞬間、彼の時間が止まった。
「……リィネ」
そこにいたのは、確かに彼女だった。
少し大人びた表情。
だが、間違いない。
「生きてたんだな……」
その一言が、地雷だった。
「第一声がそれ!?」
リィネは怒鳴り、次の瞬間には――
佐伯の胸を、思いきり殴っていた。
「ばか!」
「どれだけ心配したと思って……!」
痛みよりも、安堵が勝った。
「あー……」
「ここ、テストに出るよ」
「出ない!!」
怒鳴りながらも、リィネは離れなかった。
離れられなかった。
「……あなた」
「前より、変わった」
「そう?」
「前は、世界しか見てなかった」
「今は……ちゃんと、人を見てる」
佐伯は、少しだけ視線を逸らす。
「失って、分かった」
「それ、テストに出る」
「だから出ないって!」
だが、彼女は笑っていた。
距離は、驚くほど近かった。




