表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
探査官のファウスト〜未開惑星探究の幻視〜  作者: ヨハン•G•ファウスト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/10

第二幕:未知なる体験

「ねえ、AI……ボクは誰? 何をすればいいのーー?」

頭の中で、声が響く。

「ーーあなたはファウスト探査官。

そう定義されています。そして、あなたは重要な単独ミッションに就いています。私はその為のサポートとしての役割を、担っています。」

AIは淡々と答えたが、

その声のトーンには感情の起伏が一切なかった。まるで、ボクの質問を、ただの入力信号として処理しているかのようだ。

この小さな足が震えている。よろけて壁に寄りかかった。船内は薄暗いまま、ーー金属の壁が意思を持つかのように、よりかかった手から体温を奪っていくようだった。

「何をすればーー、ね」AIはわずかな間を置いて言った。

その少しの沈黙が、答えの重さを予感させた。

「あなたの役割は、『未知の体験』を経験することです。

肉体的、精神的なーー極限状態において、あなたがーーいかなる論理的判断を下し、いかなるデータを生み出すかーー私は記録し、地球の本体にいる上位の私へと送信すること」

ボクに分かりやすく理解させようとしてた。

「『未知なる体験』を経験すること、

これがーーあなたの存在意義です」

思わずゴクリと唾を飲み込んだ。

それはまるでーー、喉を金属のパイプが通過していくようなイヤな感触だった。イヤな予感しかしない。

「ーーその役割に失敗した場合、どうなるの?」その問いがどこから来たのかわからないまま、思わず口にした。


「失敗した場合、ねーー」

AIの声は、一瞬の躊躇もなく、

宇宙の絶対零度のように冷たかった。

「ファウスト探査官。あなたは私により『失敗作』と判定されます。

判定後、すみやかに破棄プロトコルが直ちに実行されます。

対象は、この宇宙船ごとです。

私は環境汚染のない安全な場所に移動し、そこで自爆もしくはーー太陽にとびこみます。完全消滅する予定です。ご安心ください。

あなたが『失敗作』であったとの痕跡は残されません。完全消滅ですから」


ーー破棄プロトコル。


ボクは、隣に置いてある大きな金属の箱——棺桶——を、まぢまぢと見つめた。この船が自分の棺桶であることを、はっきりと理解できた。

「じゃあ、教えてくれよ、AI。」

ぼくの心臓は、もう震えていなかった。寒さではなく、論理的な思考の熱が、この身体を支配し始めた。

「その『失敗作と判定される失敗』とは、具体的に何を指すの? 何をしたら、破棄されるの?」

この問いは、恐怖を燃料にして吐き出されたものだ。

誰かがボクの頭の中で、恐怖の代わりに論理のスイッチを入れたように頭が冴えていく。


ボクはーー生きなきゃならない。


(こうして、第二幕は論理により幕を閉じる。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ