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「なぁなぁ達哉」
「おーどうしたんだ?」
「もし10億円貰えるとしたらどうする?」
「ハハッ……?有り難くいただきますかな」
「まぁ普通そうだよな………でも、こういうのはどうだ?『10億円を受けとるなら貴方は明日中に死んでしまいます』………これでもお前は10億円を貰うのか?」
「なんだよそれ、結局10億円貰っても明日死ぬんじゃ意味ないだろ」
「だよな、つまり……明日には10億円以上の価値があるって事だ」
「ハハッ……お前、リール動画の見過ぎだわ。でもまぁ確かにそうだよなー……」
この何気ない会話が、もう今から2年前の事だなんて、時が過ぎていくのが怖いくらいだ。
このよくある質問はお金と寿命を天秤にかけ、お金よりも何気ない毎日の方が価値があるよ的なことを分からせてくれるとても為になるものだ。
かくいう僕もそういう価値観だった。
でも僕が高校3年生になった今ならアイツに返す台詞も大分違ってくる。
きっと……また、同じ質問をされたら俺はこう答えると思う。
『まじで!死ねるのに10億円貰えるの!最高じゃん』
と。