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今日という日を

作者: 執行 太樹

誰かと、1つの共通するものがあるということだけで、何気ない毎日が素晴らしい日々になることがあります。




 バスケットボールが好きだった。ただそれだけだった。


 私は、自分の部屋のベッドに寝転びながら、思い出を振り返っていた。部活動のみんなと出会って、ちょうど1年くらい。今思えば、色々あった。面白くて、つらくて、大変で、そして楽しい1年だった・・・・・・。


 1年前、私は高校に入学した。通信制の学校だった。体調を崩しやすい私にとって、毎日学校に通う必要のない通信制は、ちょうど良かった。対人関係で深く考え込んでしまう私にとって、人との関わりが程々で済む通信制は、ちょうど良かった。

 入学式の後、担任の先生からホームルームがあった。優しそうな先生だった。自分のペースで頑張りましょう、と先生は言った。ホームルームが終わり、私は学校から帰ろうと体育館の前を通った。バスケットボールを床につく音が、体育館から響いてきた。その音が、私をワクワクさせた。ちょっと興味本位で、体育館を覗いた。ただの気まぐれだった。そこには、バスケットボール部のみんなが楽しそうに練習している姿があった。私は、勇気を出して声をかけた。みんなは、ようこそバスケットボール部へと言って、私を歓迎してくれた。全てはそこから始まった。

 みんな、バスケットボールを楽しんでいた。バスケットボールが好きだった。そして、みんな優しかった。みんな、すぐに私を受け入れてくれた。私は、すぐにみんなと仲良くなれた。その日から、私のバスケットボール部の日々が始まった。


 はじめは、練習に来るメンバーは少なかった。練習も、あまり多くのことは出来なかった。それでも、私達は練習に励んだ。今できることを、一生懸命した。時間が経ち、少しずつメンバーが増えていった。部活動も、楽しくなっていった。

 どうすれば上手になるか、みんなで話し合った。バスケットボールについて勉強した。たまに、メンバーと気持ちがぶつかることもあった。でも、ぶつかった分だけメンバーのことを知ることができた。受け入れることができた。私達は、どんどんバスケットボールに夢中になった。

 練習試合もした。みんなの力を合わせて挑んだ。体調が悪くても頑張った。気分が落ち込んでいても、そんな自分を奮い立たせた。でも、現実は、そう思い通りにはならなかった。今の自分達には何が課題なのかを、みんなで真剣に考えた。

 部活動が終わったら、よくみんなでご飯を食べに行ったり、遊びに行ったりした。たまに練習をサボったりもした。そして、みんなと色んなことを語り合った。勉強のことやアルバイトのこと、友達のことや恋愛のこと、色んなことを語り合った。スマートフォンには、みんなとの思い出がいっぱい詰まっていた。毎日毎日が、輝いていた。本当に楽しかった。


 そして今日、部活動の最中に、1人の生徒が外から体育館を覗いていた。大人しそうな子だった。私達は、その子に歩み寄り、そして声をかけた。ようこそ、バスケットボール部へ!


 みんな、たまたまバスケットボールが好きで、たまたまこの学校に入学して、たまたまバスケットボール部に入った。そうして同じ時に集まった仲間と、こんなにも楽しい日々が送れることが、嬉しくてたまらなかった。


 バスケットボール部に入って良かった。このチームの一員になれて良かった。私は、良い仲間に巡り会えた。バスケットボールを通じてみんなと過ごした日々は、私にとってかけがえのないものになった。そして、これからの日々も・・・・・・。

 私は今、「私」という人生のアルバムを1ページずつ描いている、そう思った。


 ふと私は、部屋の壁に掛けられたカレンダーに目をやった。明日の日付に、赤い丸がつけられていた。明日は、いよいよ全国大会の大阪予選である。

 大丈夫。私には、今まで練習した日々がある。そして、みんながいる・・・・・・。


 バスケットボールが好きだった。ただそれだけだった。

 




この物語はフィクションです。実在の人物や場所、団体などとは関係ありません。





お読みくださり、ありがとうございました。


感想等ございましたら、ぜひお願いいたします。

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